ブランドと成長性を評価、ドコモがインド携帯事業者に出資インド最大の財閥タタグループ系

» 2008年11月12日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 NTTドコモは11月12日、インドの携帯電話事業者であるタタ・テレサービシズ・リミテッド(TTSL)の普通株式26%分を取得し、資本参加すると発表した。高い成長率を誇るインドの携帯電話市場に関与することで、収益の拡大を目指す。NTTドコモの代表取締役社長 山田隆持氏は「インドにおけるベストパートナー。社内にバックアップ体制を作って何としても成功させたい」と話した。

 取得金額は約1307億ルピー(約2640億円)。インド証券取引所の規則の則り、NTTドコモはTTSL関連会社のタタ・テレサービシズ・マハラシュトラ・リミテッド(TTML)の普通株式を、タタグループの持株会社タタ・サンズと共同で20%を上限に取得する。インドでは、出資比率が25%を超えると重要な決定事項に拒否権を行使できる。NTTドコモはTTSLに3人の役員を派遣することを検討している。

NTTドコモの代表取締役社長 山田隆持氏(右)とTTSLの社長 アニール・サルダナ氏

 NTTドコモがTTSLへの出資を決めた理由は、ブランドと成長性だ。財閥系のタタグループは140年の歴史があり、山田氏は「インド最大の財閥の子会社というブランド力がある」と指摘した。成長性では、TTSLが2005年の本格展開以来、インド通信市場の平均成長率を上回る87.3%のCAGR(年平均成長率)を挙げていることを評価した。TTSLは現在、加入者数が約3000万人でインドの携帯電話市場では6位にとどまっているが、ネットワーク品質の高さや最多の販売店を抱えることなどから「高い成長ポテンシャルがある」(山田氏)と見た。

 インドの携帯電話市場は2007年で加入者数が2億3600万人。普及率は20.9%だが、2012年には6億5200万人の加入者、普及率は54.2%に達すると予測されている。また、TTSLの社長 アニール・サルダナ(Anil Sardana)氏によると、収益に占めるデータ通信の割合は8%程度。「NTTドコモの協力を得ることで新しいサービスを展開できる」とデータ通信による収入増加への期待を示した。TTSLはこれまでCDMAの通信方式でサービスを展開してきたが、2009年1月にはGSMのサービスも開始する予定。

 NTTドコモは過去に米国や欧州の携帯電話事業者に出資してiモードの世界展開を狙ったが、軒並み失敗。苦汁をなめた経緯がある。山田氏は「当時はiモードを全世界でできないかとしてきたが、端末の問題がありいま一歩だった」と振り返った。当時の資本参加は経営に参画しないマイナー出資であることも失敗の原因と指摘された。今回のTTSLへの出資では役員3人を送るなど「積極的に関与したい」(山田氏)としていて、過去との違いを強調する。

 山田氏は「短期の財務リターンではなく、長期的なリターンを狙う。シナジーとしてW-CDMAの展開や法人営業、インドと日本のローミング、iモードなどの付加価値サービス、端末の共同調達などが期待できる」と話した。

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