日立がSAPの最上位パートナーに、海外事業を大幅強化へ海外売上を3倍に

» 2008年12月02日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 独SAP、SAPジャパンは12月2日、SAPのパートナー契約の最上位である「SAP グローバル サービスパートナー」契約を日立製作所と結んだと発表した。日立は契約締結を機にSAP事業のグローバル展開を加速させる考えで、海外進出する日系企業のサポートを強める。

 SAP グローバル サービス パートナーは顧客満足度や成功事例、業種特化型ソリューションの開発など厳しい要件があるパートナー契約で、SAPの世界のパートナーのうち、19社が選ばれている(SAPサイトのリスト)。日立は20社目。国内ではほかに富士通が2006年に契約(参考記事)。アクセンチュアやベリングポイント、IBM、ヒューレット・パッカードなどが契約している。独SAPのシニア・バイスプレジデント マンフレッド・ハイル(Manfred Heil)氏は日立について「サービス提供能力とハードウェアなど技術的な能力を組み合わせられることが他社との差別化になっている」と評価した。「IBMと似ている」とも述べた。

写真左から日立製作所の奥出聡氏、中島純三氏、独SAPのマンフレッド・ハイル氏、SAPジャパンのギャレット・イルグ氏

 日立はグループでこれまでに200サイト以上のSAPプロジェクトを手掛けるなど実績があるが、今後はグローバル展開を加速させる。これまで北米や欧州、中国で個別に行ってきた日系企業のサポートを統合的に行えるようにする。日本に「日立SAPグローバルセンタ」を設置し、北米、欧州でSAP事業を行うHitachi Consultingと、国内と中国、それ以外のアジア地域で事業を行う日立グループの事業を統括する。日立製作所の執行役常務 情報・通信グループ 副グループ長 兼 システムソリューション部門CEOの中島純三氏は「国内、海外のノウハウを結集してベストプラクティスを作る」と話した。また、産業・流通システム産業部 副事業部長の奥出聡氏は「顧客のグローバルビジネスに寄与したい」と述べた。

 日立は同社が強みを持つ化学、ハイテク、医薬の各業種をターゲットにSAP事業のグローバル展開を目指す。加えて電力、交通、プラントなど日立が海外で手掛けてきた社会インフラ系の業種にもアプローチする考え。グローバル展開の加速で、2008年に380億円だった同社SAP事業(システム構築、ハードウェア、ミドルウェア、SAPライセンスなどを含む)を、2011年には600億円規模に拡大する計画。SAP事業の海外売上は2011年には2008年の3倍規模にする計画で、海外と国内の売上比率を1対3にするという。SAP認定資格取得者数も現在の1600人から2011年には2080人に増やす計算だ。

値上げした「Enterprise Support」を説明

 また、同日の会見ではSAPジャパンの代表取締役社長兼CEO ギャレット・イルグ(Garrett Ilg)氏は、SAPが7月に発表した「SAP Enterprise Support」について説明した。SAPはこれまで提供してきた「SAP Standard Support」「SAP Premium Support」の両サポートサービスを、Enterprise Supportに一本化する方針。その際、Standard Supportのユーザーはライセンス価格の17%という現在のサポート料金が、最終的には22%に値上げされる。そのためユーザーの間で不満の声が上がっているのだ。

 イルグ氏は「Enterprise Supportについてはグローバルレベルでもっとよいコミュニケーションができたはずだと私は思っている。また、Enterprise Supportの内容をお伝えする際にもきちんと正確な言葉でお伝えできなかったために余計なストレスを顧客に与えてしまった」と釈明した。ただ、発表後に東京、大阪でセミナーを開催し、「その中で明確に説明し、SAPがEnterprise Supportによってどういう価値を提供するのかも話した。今後もSAPジャパンとしてはEnterprise Supportの導入で、どういう価値を提供できるのかを説明し続けないといけない」として、理解を求めた。

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