「SAP Business Suite 7」が切り開く“脱アップグレード”の世界製品のバージョン番号を統一

» 2009年02月24日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 SAPジャパンは2月24日、ERPを含む業務アプリケーションのスイート製品の新版「SAP Business Suite 7」を発表した。複数の業務アプリケーションで構成する製品で、ユーザーは個別製品を導入することができると同時に、一括導入することで効率的なアプリケーションプラットフォームを構築し、SAP以外のアプリケーションとの連携性も高めることができる。

 同社の代表取締役社長兼CEOのギャレット・イルグ氏はBusiness Suite 7について、仕事の無駄をなくす「効率性」と、開発コストの低減につながる「柔軟性」、ビジネスの勝機、勝機をつかむ「洞察力」を企業に提供すると説明。「厳しい経営環境下で、企業に生き残るためのチャンスを提供する」と話した。特に洞察力については買収した「BusinessObjects」のポートフォリオ分析機能を組み込んでいて、日々の業務の中でユーザーに分析情報を提供できるようにしてある。

SAPジャパンの代表取締役社長兼CEOのギャレット・イルグ氏

 Business Suite 7の最大の特徴はその機能ではなく、アップグレードをやめるということだ。Business Suite 7にはSAP ERPのほかにCRMやSupply Chain Management、Product Lifecycle Managementなどの業務アプリケーションと、業界別のアプリケーションが含まれる。これまでのSAPはこれらの業務アプリケーションを個別にアップグレードしてきた。しかし、アプリケーションをカスタマイズして使うことが多い企業にとってはアップグレード作業はかなり大変で、コストがかかる作業だった。

 Business Suite 7ではその苦痛を生むアップグレード作業をやめて、代わりに「enhancement package」と呼ぶ拡張パッケージを提供することで機能を追加できるようにした。ユーザーはenhancement packageの中から自社に必要な機能だけを選んでアプリケーションに適用可能で、従来のアップグレード作業と比べて小さな負荷で新機能を使えるという。

 enhancement packageはアプリケーションごとにバラバラに提供されるのではなく、同じタイミングで一括して提供されるため、IT投資や開発の計画が立てやすくなるというメリットがある。同じサイクルでの機能追加を実現するために「各アプリケーションは“面ぞろえ”をしてバージョン番号を同じにした。これによってすべてが1つの固まりとして提供できる」(同社 カスタマーイノベーションセンター本部長 バイスプレジデント 田村元氏)。

「SAP Business Suite 7」の構成と特徴

 アップグレードの代わりにenhancement packageで機能追加をする考えは、SAP ERPに先行して適用されている。SAP ERPにはすでに3本のenhancement packageが提供されていて、世界で1000社以上が導入済み、ダウンロードは1800件になるという。Business Suite 7の提供に併せてSAP ERPには4本目のenhancement packageが提供される。ただ、SAP ERPのみ、バージョン番号を7.0にはしておらず、6.0のまま。

 SAPジャパンはBusiness Suite 7を使うことで機能追加が楽になり、SOA基盤への対応強化でシステムの柔軟性が高まり、カスタマアプリケーションや他社アプリケーションとの連携もしやすくなると訴える。「一度、Business Suite 7の世界に入ると楽になる」(同社 ソリューションレディネス部 部長 松村浩史氏)のだ。

 しかし、問題はSAP ERP 6.0、またはそのほかのアプリケーションであれば7.0以前の製品を使っているユーザーだ。このユーザーはアップグレードしないと当然ながらBusiness Suite 7のメリットを享受できない。そしてアップグレードにはやはり「相応の手間がかかる」(松村氏)。もっともバージョン4.6や4.7であれば「ERPとしての完成度は高く、コア部分は枯れてきている。かつてのような技術的な困難は少なくなってきている」(松村氏)とも説明している。

 SAPジャパンによると、国内ではすでに40%のユーザーがSAP ERP 6.0にアップグレード済み。また、アップグレードを計画しているユーザーを合わせると90%に及ぶという。

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