仮想デスクトップ市場にも進出

KVMベースの仮想化製品群、レッドハットが詳細を明らかに

2009/03/12

redhat01.jpg レッドハット 代表取締役社長 廣川裕司氏

 レッドハットは3月12日、Linuxカーネルに統合された仮想化ソフトウェアスタック「KVM」を中心に据えた仮想化戦略について説明会を開いた。同社は米国で2月23日(日本では2月24日)に新戦略を発表していて、関連製品を今後3〜18カ月の間に出荷するとしている。

 新戦略は、仮想化に必要なソフトウェアスタックを一気に展開する全方位的なものだ。独立した単体のハイパーバイザ製品、OSインスタンスの管理コンソール、仮想デスクトップ・ソリューションのためのインフラ製品と、VMwareやシトリックスのソリューション群に対抗するラインナップをそろえている。

 KVMは比較的新しいハイパーバイザで、先行するVMware ESXiやXenに比べると知名度が低い。しかし、Linuxカーネルに統合されていることから開発速度が速く、また技術的メリットもあることから今後の動向が大いに注目されている(参考記事:Linux標準の仮想化技術「KVM」の仕組み)。

Xenとの関係は?

 新戦略は2008年9月に1億700万ドルで買収したベンチャー企業、Qumranet(クムラネット)の製品を取り込んだもの。QumranetはKVM開発コミュニティで中心的役割を果たしていて、今回の製品群もKVMをベースにしている。

 KVMを中心に据えることで、これまで提供してきた仮想化技術製品、Xenとの関係が気になるが、この点について2008年9月の会見で米レッドハット プラットフォームビジネスユニットのバイス・プレジデント スコット・クレンショー氏は「レッドハットはXenとKVMの両方にコミットし、サポートしていく。明らかにKVMが仮想化の未来で、だからこそQumranetを買収したわけだが、どんなIT技術にも成熟度や性能、安定性などサイクルがある。(先行している)XenはKVMよりも成熟していて顧客が選択する理由がある。KVMとXenの双方をサポートしていくことは、われわれにとって何の矛盾でもない」と答えている

仮想化インフラはOS、ハイパーバイザの2本立て

 仮想化OSをホスティングする環境は2製品。1つはLinuxのサーバOSとして、もう1つはハイパーバイザとして提供する。次期バージョンのRed Hat Enterprise Linux(RHEL)上は、従来通りXenを提供するほか、KVMも提供する。また新たに、Red Hat Enterprise LinuxとKVMをベースに、不要なモジュールやAPIを削ったものをスタンドアローンのハイパーバイザ製品として出荷する。「Red Hat Enterprise Virtulization Hypervisor」と名付けられたこの製品は64MBと小さいフットプリントではあるものの、ネイティブアプリケーションの稼働以外の、Linuxカーネルが提供する機能やスケーラビリティを提供する。具体的には、ホスト側で最大64コア、1TBまでのメモリ、ゲスト側で16仮想CPU、64GBのメモリまでサポートするほか、SELinux相当のセキュリティが享受できるという。また、仮想環境でボトルネックが発生しやすいI/O関連のドライバについては、ハイパーバイザに最適化したドライバ向けAPI「VirtIO」に対応したドライバを含むという。

 RHELとハイパーバイザには、それぞれメリット、デメリットがある。RHEL利用ではネイティブアプリケーションとのハイブリッド運用が可能で、データベースはネイティブ環境で、Webサーバは仮想環境でといった運用が可能になるという。一方、ハイパーバイザでは比較的少ないリソースで運用ができるほか、無駄なAPIが削られている分、安定性やセキュリティでメリットがある。

管理ツールはサーバ向けとデスクトップ向けの2つ

 OSインスタンスの管理ツールとしては、サーバ向けとデスクトップ向けで2製品を提供する。サーバ向けの「Red Hat Enterprise Virtualization Manager for Servers」はライブマイグレーション機能やHA関連の機能、システムスケジューラ、スナップショットのほか、シンプロビジョニング機能をGUIで提供する。

 一方、仮想デスクトップ向け「Red Hat Enterprise Virtualization Manager for Desktop」は、VDI(仮想デスクトップインフラストラクチャ)を提供する製品だ。Qumranetが持っていた「Solid ICE VDI」に相当する製品で、独自プロトコル「SPICE」により、物理PCに近いリモートデスクトップ環境を提供するという。具体的には30fps以上の動画コンテンツやビデオ会議の利用、4台までのマルチモニタの利用、USB 1.1/2.0のサポートなどだ。

 RHEV Manager for Desktopは、クラスタ環境で稼働してホストOSへリソースを割り当てる「VDS」(Virtual Desktop Server)と、VDS上で稼働するOSインスタンスを管理する「VDC」(Virtual Desktop Controller)の2つからなる。VDSはKVMベースで、ゲストOSとしてWindows XP/2000をサポート(Linuxは対応予定)。ライブマイグレーション機能や高可用性を提供する。VDCは仮想デスクトップの負荷分散やイメージ管理、SSO環境を提供するためのコネクションブローカー、システム全体の監査性を向上させるイベントマネージャなどを提供する。

redhat02.png Red Hat Enterprise Virtualization Manager for Desktop(Solid ICE VDI)の概念図(出典:Qumranet)

 今回の仮想化関連製品の社内的な位置付けについて、日本法人代表取締役社長の廣川裕司氏は、同社が1年前からスタートした3カ年計画の中でも「最大のツール、ソリューションの1つ」とし、JBOSSなどミドルウェア製品と同様に戦略的位置付けにある製品群であることを強調する。経済環境が悪化する中、数年スパンの成長を織り込んだIT投資ができない企業にとって、仮想化関連製品は「コスト削減が可能な最大のツール。同時に、多様性や性能、高可用性などの機能も付加していく」(廣川氏)ものだと話す。

(@IT 西村賢)

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