SAP、CO2排出量管理技術ベンダの米Clear Standardsを買収今後、Sustainability Solutionを強化していく

» 2009年05月13日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 独SAPは5月12日(米国時間)、プライベートイベント「SAP SAPPHIRE 2009」を米国オーランドで開幕。同社が近年力を入れている環境への取り組みについて、米SAP Sustainability担当副社長のスコット・ボリック(Scott C. Bolick)氏に話を聞いた。SAPは、CO2排出量管理技術ベンダの米Clear Standards買収を発表したばかり。

ボリック氏写真 米SAP Sustainability担当副社長 スコット・ボリック氏

 ボリック氏は、企業が「環境維持への取り組み(Sustainability)」を強化するドライバーには「規制」「自然資源の減少」「消費者の気付き」の3点があると指摘した。例えば規制の面で考えると、欧州を中心に京都議定書を代表とする環境負荷軽減のための取り決めがワールドワイドで強化されており、遅れている米国もオバマ大統領が環境規制を強化する方針を示している。このような環境負荷を軽減するための規制強化の流れは今後確実に強まっていくとした。

 また、ボリック氏は世界人口が急増している点を指摘。「石油などの化石燃料が枯渇していくことはもちろんのこと。今後世界人口が90億人などに増加すれば、食料や水不足もかなり深刻になる。これを見越して環境維持に取り組まなくてはならない」とした。最後の消費者の気付きでは、消費者の環境意識が高まったことで、各企業の環境への取り組みに対して監視を強化していると指摘。企業のCO2排出量などに対してプレッシャーを与えるケースが増えてきているという。

 これらの点を踏まえてボリック氏は、「従来は善意や好意として環境への取り組みを行っていた企業も多いが、現在では取り組まないことがリスクとなりつつあり、自社のブランドを保護するためにも取り組まなければならない状況になっている」と分析した。

 このような状況下でSAPは、「社内での改善」と「社外に向けて何ができるか」という2つの側面から環境保護への取り組みを策定。社内での取り組みでは、2020年のCO2排出量の目標を、2008年の52万トンから50%減の25万トンにするとした。「この数値はかなりチャレンジングだ。25万トンは2000年当時と同じ数値だが、SAPは2000年と比較して事業規模が倍以上になっていることからも難しい数値だと考えている」(ボリック氏)という。この目標を実現するために、同社ではSharpと共同でソーラーパネルを導入し、電力消費を削減。また、HD画質のテレビ会議システムを導入し、出張回数も大幅に削減しているという。「実際にこの会議システムを導入したことで、本社への出張が年間8〜10回だったものが2〜3回に減った」(同氏)。

 一方で、社会的影響度が大きいのが「社外に向けて何ができるか」という点だ。同社の8万2000社のユーザーに対して有効な環境保護ソリューションを提供すれば、同社自身の取り組みよりもはるかに多くのCO2を削減できる。その点から、同社は環境保護ソリューションのロードマップを示した「Sustainability MAP」を提供。すでにCO2排出量を管理できる「SAP Environment,Health&Safety」(EHS Management)などを提供し、企業の環境保護活動をサポートしているとした。

 そして、EHS ManagementをサポートするのがSAPが買収を発表した米Clear Standardsだ。Clear Standardsは、温室効果ガス排出量の測定・最適化などの技術を開発・提供する非公開企業。CO2を代表とする温室効果ガスの排出や電力使用量などのデータから、その企業の環境負荷をWebベースで管理できるソリューションを提供している。ボリック氏は、「今後も、Business Suite 7を中心とした環境管理機能のエンハンストパッケージを提供していく。それに加えて、今回Clear Standardsを買収したことで、Clear Standards単独のCO2管理製品も提供し、環境ソリューションを強化していく形になるだろう」と説明した。

 同氏は、「SAP自身の環境保護活動でユニークなのは、とにかくステークホルダーと環境保護への取り組みを協議したうえで約束し、それを完全にクリアにしている点だ。CO2の排出量を地域別や社員単位で分かるようにしている。今後、プロセス改善によってさらに環境負荷を減らしていきたい。同様に社外ユーザーには、有益な環境保護ソリューションを提供することでユーザーの環境保護活動をサポートし、ユーザーのプロセス改善の手伝いをしていきたい」と語り、今後の方向性を説明した。

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