【Top10】手段のためなら目的を選ばない人たち先週の人気記事トップ10

» 2009年05月25日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 先週の@IT NewsInsightのアクセスランキングの第1位はマイクロソフトが開発中の新OS「Windows 7」についての記事「ウィンドウを揺すって画面スッキリ、Windows 7の新UI」だった。マイクロソフト コマーシャルWindows本部 本部長の中川哲氏は説明会で「お客様が何をしたいかであって、マイクロソフトが何をしたいかではないのです」と語ったという。

NewsInsight Weekly Top 10
(2009年5月17日〜5月23日)
1位 ウィンドウを揺すって画面スッキリ、Windows 7の新UI
2位 Chrome 2.0正式版登場、グーグルは安全性も強調
3位 グーグル、大規模障害の原因はルーティングエラー
4位 “iモード2.0”はCookieやAjax、インライン動画に対応
5位 ドコモ、HTC製Android端末を6〜7月発売へ
6位 Linux.comがリニューアル、コミュニティポータルに
7位 日立、新ブレードPC製品でシンクライアントの第2段階へ
8位 Amazonクラウド、大規模データをHDD郵送で受け入れ
9位 サーバ用RAIDアダプタの現在
10位 Google Maps API、企業向けに有償版提供へ

 ランクインした記事を眺めていて、ぼんやりと「手段」と「目的」という言葉が浮かんだ。どのニュースも手段と目的に関係するように思えたのだ。よく聞くのは「目的と手段をはき違えるな!」という言葉。あることを達成するために、ある手段を選択したはずが、いつのまにかその手段自体が目的化することを憂慮した言葉だ。Windows 7に置き換えられるとみられるWindows Vistaは、ユーザーが望む目的と、マイクロソフトが提供できる手段がいつの間にか倒置してしまったのでないだろうか。

 しかし、だ。それはWindows OSの市場が成熟化したからともいえる。Windows Vistaが備えている高度なグラフィックスやセキュリティ機能は、10年前なら評価されたのかもしれない。現在はPCが一般化し、快適にPCを使いたいという目的の達成を最優先する人が大多数になった。しかし、過去のOS市場には「手段のためには目的を選ばない」人がたくさんいた。何に役立つかはさておき、先進技術はとりあえずは歓迎された。

 手段と目的のどちらが歓迎されるかはその技術や市場の成熟度に関わってくるようだ。携帯電話は普及スピードが速かっただけに、早い時期からその目的が重視されるようになった。iモードのAjax対応などは、ある程度の目的を達成したユーザーをさらなるレベルに押し上げるために、新しい手段を提供するといえる。ただ、iPhoneをはじめとするスマートフォンの世界はまだ、手段が歓迎されている。イノベーションが次々に起きるために、ユーザーの目的自体が変化を続けている。新しい手段が新しい目的を生み出す。

 Webブラウザは手段ではなく、目的が歓迎されていたが、Mozilla FirefoxやGoogle Chromeの出現であらためて手段が注目されている。特に“速さ”を追求するChromeはその手段が突き抜けている。速さを生かしてユーザーが何を行うのかは定義されていないが、ITの世界では速さは正義だ。速さは手段であり、目的でもある。

 その製品やサービスが属する市場の状態によって、目的の達成をアピールすべきか、手段の先進性を訴えるべきかは変わってくる。しかし、いずれにしても中途半端ではユーザーの支持を得るのは難しい。

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