スケールアウト型で新たな市場を開拓
日本HPが新iSCSIストレージ、EqualLogicとの違いは
2009/07/27
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が国内市場への投入を7月23日に発表した「LeftHand P4000 SANソリューション」は、「スケールアウト・ストレージ」とも呼べるiSCSIストレージシステムだ。
HPはLeftHand P4000 SANをMSAシリーズとEVAシリーズの中間に位置付け、中堅・中小企業をターゲットに据えている。だが、同社エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 ストレージワークスビジネス本部 本部長 富岡徹郎氏は新製品を「新コンセプトのストレージ」と表現し、「当初は中堅の上からエンタープライズの下のレベル」の企業およびクラウドサービス事業者に導入されるだろうと話している。
LeftHand P4000 SANは米HPが2008年に買収した米Lefthand Networksの製品。ストレージコントローラとハードディスクドライブで構成される「ノード」を1つの単位とし、これを追加していくことで容量とパフォーマンスを同時に向上することができる。
利用しているノードの容量が不足しそうになったら、既存ノードを停止することなく、新たなノードをネットワークに接続し、新規ノードを既存ノードの拡張として利用するとともに既存ボリュームを新規ノードに拡張するという設定を行えばいい。すると既存ノード上の既存データの一部が、新規ノードに移動することで、データが平準化される。これ以降のデータの読み書きは、新規ノードを含めて分散的に行えるようになるため、パフォーマンスが向上する。
「従来型のストレージは、容量を追加する場合にその稼働を止めなければならない。また、容量を追加してもコントローラの数が増えないかぎりパフォーマンスが向上できない。この点が大きく異なる」と米HP エンタープライズ ストレージ・サーバ ストレージワークス ディビジョン HP LeftHandグローバルエバンジェリストのジョン・スパイアーズ(John Spiers)氏は説明している。
LeftHand P4000 SANは、同社が「ストレージクラスタリング」と呼ぶ上記の機能のほかに、「ネットワークRAID」、シンプロビジョニング、スナップショット、リモートコピー(同期/非同期)の機能を標準で搭載している。
ネットワークRAIDは新製品の最大の特徴。この製品は一般的なストレージと同様、各ノードでハードウェアRAIDを設定できるが、それに加え、上記の場合のように複数ノードにまたがって設定したボリュームを単位として、RAIDを構成することができる。この機能により、あるノード全体に障害が発生した場合でも、ほかのノードが肩代わりして運用を継続できる。
ネットワークRAIDは、筐(きょう)体レベルのRAIDを設定したうえでソフトウェア的に動かすものであるため、パフォーマンスがある程度犠牲になることは避けられない。しかし、可用性を最優先するアプリケーションには適しているという。
また、新製品のシンプロビジョニングおよびスナップショットの機能は、事前に専用領域を確保する必要がないという点で、一般的な製品よりも優れているという。
LeftHand P4000 SANのコンセプトは、現在デルが販売しているEqualLogicストレージシリーズに近い。双方ともストレージネットワーキング・プロトコルとしてのiSCSIの柔軟性を生かしたスケールアウト型のストレージで、管理の自動化を推し進めている。機能がすべて標準搭載で、追加ライセンス料を払う必要がないという点、各ノードは、ハードディスクドライブをフルに搭載した形で販売している点も同一だ。
ではEqualLogicとLeftHand P4000 SANの違いは何か。スパイアーズ氏は、まずLeftHand P4000 SANがx86 CPUベースであることを挙げる。「LeftHandは業界標準のサーバ技術を使っている。このため最新のCPU、バス、ネットワークの技術をEqualLogicより早く活用できる。良い例が10Gbps対応で、LeftHandは10Gbps接続をオプションとしてすでに提供しているが、EqualLogicはまだ対応作業中だ」。ネットワークRAIDもLeftHandにしかない機能であり、EqualLogicに比べ、高い可用性とデータ保護性能を提供できるという。
また、「一般的なiSCSIの実装では、I/Oはまずいずれかのノードに行ってI/Oの物理的な場所を確認し、そこから正しいI/Oを持つノードに向かうことになる。当社は特許技術を持っていて、直接正しいノードに到達することができる」。このため、パフォーマンスに優れているとスパイアーズ氏は話している。
LeftHand P4000 SANの国内出荷開始は8月上旬。製品としては2ノードで構成されるベースモデルに、拡張ノードを組み合わせていくことになる。
ベースモデルは「HP LeftHand P4300 SATA Starter SAN」(SATAドライブ12TB搭載)が483万円、「HP LeftHand P4300 SAS Starter SAN」(SASドライブ4.8TB)が504万円。「HP LeftHand P4500 Virtualization SAN」(SASドライブ10.8TB)が997万5000円、「HP LeftHand P4500 Multi Site SAN」(SAS 21.6TB、これのみ4ノード)が1890万円。これらのモデル間の違いはドライブタイプと容量、ノード数の違いのみで、機能に違いはない。最大で32ノードの構成が可能という。
日本HPは「HP LeftHand P4000 Virtual SAN Appliance」も8月上旬に提供開始する。これはVMware環境で利用できる仮想アプライアンス。現在のところ唯一のストレージ・アプライアンスだという。これは例えばVMware ESXによって仮想化したブレードサーバ上でこれを動かすと、各ブレードに搭載しているハードディスクドライブをまとめ上げ、単一のストレージとして全仮想マシンからiSCSI経由でアクセスできるようになる。小規模なサーバ仮想化環境を、ストレージコストの心配なく始められることにメリットがある。ただしすべての仮想マシンがネットワークインターフェイス経由でこのストレージ・アプライアンスにアクセスするため、内部のトラフィックが非常に大きくなることには注意が必要だ。同製品の価格は81万9000円。
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