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2001年以来、8年ぶりの来日

Linux開発モデルは「ありふれたもの」、リーナス氏が会見

2009/10/21

 Linuxカーネルの生みの親で現在も開発をリードするリーナス・トーバルス氏が東京で開催されるKernel SummitとJapan Linux Symposiumに参加するために8年ぶりに来日中だ。2009年10月21日に記者会見を開き、Linuxの開発モデルや日本からの貢献について考えを述べた。

 ソースコードが1000万行を超えるLinuxカーネルは、現在知られているソフトウェア開発プロジェクトとしては最大規模のものの1つだ。リーナス・トーバルス氏がまだ学生だった1991年、1人で開始したUnixクローンOSの開発という趣味的な取り組みは、18年が経過した2009年現在、数千人が開発に携わる巨大プロジェクトとなり、数十億ドル規模の関連市場を生み出している。

Linux開発は生物の進化に似たモデル

 オープンソースの代名詞的存在となったGNU/Linuxは、利活用の面ばかりでなく、その開発モデルも注目されてきた。1990年代、まだソースコードを開示しないソフトウェアビジネスが一般的だった時代に、能力さえあれば誰でも参加が自由というLinuxカーネルのオープンな開発モデルは“バザールモデル”とも呼ばれ、その経済性も論じられてきた。地理的に隔たった開発者や、企業の壁を越えたコラボレーションなど、Linuxカーネル開発は、インターネットが可能とした新しい開発モデルと見るのが一般的だろう。

linus01.jpg Linuxカーネルの生みの親、リーナス・トーバルス(Linus Torvals)氏

 こうした見方に対して、トーバルス氏はLinuxの開発モデルは「特殊なものとは考えていない」という。

 「開発モデルに関しては、好んで使うアナロジーがあります。非常に多くの人が、異なるプレッシャーの下に参加するオープンな開発というのは、特に目新しいものではありません。それは、地球上でもっとも複雑なもの、私やあなたのような生物の体系のようなものです。私はカーネル開発を生物学や進化の観点で見るようにしています。これは、何か計画を立てて発展するというものではなく、“成長”するものです。非常に多くの人が異なる方向に進もうとする力が働きながら、自然な選択をしていくというモデルです。われわれが選択した開発モデルは生物の体系に似通っているのです。科学の進展も、これとまったく同様に行われていますし、ほかの分野にも適用可能だと思います。その意味で、Linuxカーネルの開発モデルは、ありふれた、一般的なモデルです。エンジニアリングに応用した、というのは目新しかったかもしれませんが」

 「Linuxのようなオープンな開発というのは、特別に安価なやり方というわけではありません。開発の正確な方向性や目的がハッキリと分かっているなら、Linuxのような開発スタイルは効率がいいとは思いません。目的地が分かってるのに、どちらの方向に進むべきかを100万人に聞いたりしませんよね。でも、誰もどこに向かうべきか分からないような場合には、このモデルがうまく行きます。Linuxをゼロから作り直すとすれば108億ドルかかるという試算がありましたが、そのコストを多くの企業に分散させることができます。他のやり方に比べて安価というわけではないですが、分散によってこうした巨大なプロジェクトが可能になるのです」

 数千人規模の開発プロジェクトとなると、その組織化や管理はどうするのか。困難さはどこにあるのか。トーバルス氏は、こう答える。

 「“困難さ”という言葉は使いたくないのですが、いちばん面白く感じているのはスパコンからケータイを製造している人たちまで、異なるモチベーションを持つ人々に満足して、使い続けてもらうようにするかということです。秘訣? それは私には分かりませんが、秘訣なんてないと思います。コミュニケーションを図り、どうやって人々が協力できるかを考えることです」

 では、これまでうまく行っていた開発モデルは、今後も引き続きうまくいくのか。

 「今後5年や10年でどのような問題が起こるのか分かりませんが、規模や複雑さの増大、より広い層への対応などのために開発のやり方を変えるのに成功してきました。そういう意味では心配していません」

組み込み開発とLinux開発の間にあるミスマッチ

 日本からのLinux開発に対する貢献については、組み込み関連でのLinux利用が、日本市場において先行している点を挙げる。

 「日本からは開発に対する様々なインプットがあります。欧米とは違ったやり方、違ったフォーカス、使用されていないデバイスなど、そうしたインプットは重要です」

 ケータイやデジタルテレビなど、日本におけるLinux利用では組み込みが先行している。これに関連して、トーバルス氏は開発モデルの“インピーダンス・ミスマッチ”を指摘する。

 「組み込みの開発では1度の開発で数百万台を売り、次に作るときはまた初めからというように継続性があまりありません。そうした開発モデルとLinuxカーネルのように継続性のある開発モデルの間には“インピーダンス・ミスマッチ”があって、これは両サイドから工夫を活発に行っています」。

 実際、Kernel Summitでは、組み込み系の開発者とカーネル開発者の間でパネルディスカッションを行ったばかりだという。

明日Windows 7発売?それは知りませんでした(笑)

 Windows 7の発売を翌日に控えたいま、軽量と言われるWindows 7やChrome OSなどについて、どう思うかと聞かれたトーバルス氏。原則としても、ポリシーとしても、LinuxをほかのOSと比べることはしないとして、こう答える。

 「WindowsやMac OS Xのことは、個人的にはどうでもいいんです。われわれはLinuxをできるだけ良いものにするのに取り組んでいるだけです。Linuxを売り込む立場の人たちは、そういう比較も必要かもしれませんが、Windows 7が明日発売されるということも知りませんでした(笑)」

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(@IT 西村賢)

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