シン・プロビジョニングで新機能

「脂肪吸引」に挑戦? ストレージの3PAR

2009/11/24

 3PARは11月20日、同社ストレージのための、シン・プロビジョニング関連の新たなソフトウェア製品4種を国内出荷開始したと発表した。

 シン・プロビジョニングとは、OSやアプリケーションに対し、ストレージ領域を実際よりも多く見せかけられるという機能。アプリケーションを導入する際、将来のデータ量増大を見越したストレージ容量をはじめのうちに用意するのが普通だ。これに対し、シン・プロビジョニングでは仮想的に大きなボリュームを設定するものの、実際にデータの保存のため必要な分しかストレージ領域の割り当てを行わない。この仕組みによって、ストレージに対する初期投資を抑えることができる。ストレージ投資を先送りできるとともに、ディスクドライブの単位容量当たり価格の低下の恩恵を受けることができる。

 3PARは、シン・プロビジョニングを最も早く製品に実装したストレージベンダの1社だ。現在でも、これは同社の製品の大きな特徴の1つとなっている。米3PAR マーケティング担当副社長 クレイグ・ヌネス(Graig Nunes)氏が「脂肪吸引」と形容した新ソフトウェア機能の1つ「Thin Persistence」は、リバウンドした体重を改めてスリム化することにも例えられる。

3par01.jpg これまでの3PARによるシン・プロビジョニングと、新機能のThin Persistenceで、ストレージ投資の70%を先送りすることも可能という

 通常のシン・プロビジョニングでは、一度割り当ててしまった容量を取り戻すことはできない。例えばある日、100Gbytesの動画ファイルをストレージに保存し、次の日にこれを削除したとする。シン・プロビジョニングでは、このファイルが保存された時点で、ストレージ領域を100Gbytesだけ拡大する。次の日にこのファイルが削除されたとしても、ストレージ領域は割り当てられたままだ。これにより、せっかくシン・プロビジョニングを利用しているのに、実際に消費しているストレージ容量と、割り当てられている容量がかい離してきてしまう。Thin Persistenceでは、データが削除された部分の容量を解放することができる。

 3PARは、これと同じ機能をシマンテックのVeritas Storage FoundationのVxFSサーバ用に実現する「Thin Reclamation for Veritas」も同時に発表した。シマンテックと3PARは、ファイルシステムと3PARのシン・プロビジョニング・エンジンを連携させるためのAPIを共同開発し、最初の製品としてThin Reclamation for Veritasを製品化したのだという。3PARはこのAPIを、シマンテック以外の製品との連携にも適用していく考えだ。

 3PARはそのほかの新機能として、「Thin Conversion」「Thin Copy Reclamation」を発表した。Thin Conversionは、従来型ストレージから3PARのストレージに移行する際に、一般のブロックコピーツールを使って転送されてきたデータからその場で未使用ブロック部分をカットし、シン・プロビジョニングされた状態にする機能だ。また、Thin Copy Reclamationは、3PARのストレージでスナップショットあるいはリモートコピーに利用している領域から、削除で発生した未使用部分を解放する機能。

 Thin Copy Reclamationは3PARストレージのOSである「InForm Operating System Version 2.3.3」に搭載され、無償で利用できる。ほかの機能はオプションとして販売。Thin PersistenceとThin Reclamation for Veritasは1つの製品として統合的に提供される。

 ヌネス氏は、これらの機能により、「(リース切れなどによる)ストレージ装置の切り替え時にかかるコストを最大60%節約できる。不況のため、新しいストレージ装置に移行したくてもできない企業が多いが、当社はこれを可能にできる唯一の企業だ」と主張する。

シン・プロビジョニングは陳腐化したのか

 シン・プロビジョニング機能は、ストレージ製品の間で急速に広がってきている。すなわち、シン・プロビジョニング機能を搭載していることだけでは差別化につながらない時代になってきた。しかしヌネス氏は、NASの世界におけるこれまでの動きを例に、3PARは勝ち残れると主張する。「もし、すべてのNAS製品が同じだったら、Auspexという会社はいまや大きくなっていただろう。しかしAuspexは消えた。なぜなら、同社の製品はネットアップの製品ほど優れていなかったからだ」。

 1つのポイントは、専用メモリを搭載したASICによるシン・プロビジョニングの実行だ。今回発表のThin Persistence、Thin Reclamation for Veritas、Thin Conversionも、このASICを搭載してインラインで実行される。コントローラのCPUやメモリを使わず、データのコピーや転送のパフォーマンスを劣化させることはないという。

 「(シン・プロビジョニングにおける3PARの)技術上の優位は明らかだ。今回発表の新たな機能により、当社は新しいデータのシン・プロビジョニングだけでなく、既存のデータについてもスリムな状態を保てるようになった。ほかのどのベンダも、既存のデータにシン・プロビジョニングを適用する手段を持っていない。ROIの点でこれは大きな違いをもたらす」。

 同社のシン・プロビジョニングはまた、自動的な実行、領域を振り出すための予約領域が不要、16Kbytesというきめ細かな単位での領域の割り当てが可能など、基本的な点でも他社に比べて優れているとヌネス氏は主張した。

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(三木泉)

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