ガートナーの最上級アナリストがアドバイス
Windows 7とOffice 2010、企業はいま移行すべきか
2010/05/06
Windows 7発売後半年が経ち、Office 2010も5月1日にボリュームライセンスの提供が開始された。企業はこれらへの移行をどう計画すればいいのか。そもそも新製品への移行は不可避なのだろうか。4月下旬に来日し、「ガートナー ITインフラストラクチャ&データセンター サミット 2010」で講演した米ガートナー リサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリスト マイケル・シルバー(Michael Silver)氏に聞いた。
ガートナーのマイケル・シルバー氏シルバー氏はまず、マイクロソフトの製品提供計画に対し、企業のとれる選択肢は限られているのではないかという言い方に異を唱える。
「マイクロソフトが企業にバージョンアップを強いているという考え方は、多少誇張が過ぎる。マイクロソフトは業界で最も長いサポート・タイムラインを提供している(メインストリームサポート5年、延長サポート5年)。Linuxベンダは最長でも7年しかサポートしない。アップルはサポート・タイムラインを提供してもいない。おそらく3〜4年だろう。製品を10年に1度しか買わなくていいというのは、私も車でやってみたいくらいだ。これは非常に長い期間だといえる」
このため、企業も急ぐ必要はない、検討にじっくりと時間を掛けるべきだとシルバー氏はいう。
ただし、OSのWindows 7への移行についてはすぐに準備を開始すべきというのが同氏の意見だ。
現在、企業におけるデスクトップOSの大部分を占めているWindows XPは、延長サポートの期限切れを2014年に迎える。まだ十分な時間が残されているように思えるが、マイクロソフト以外のソフトウェアのサポートはそれよりも前に終了する。2011年末になるとサポート不足が一般化するだろうという。
Windows 7は2010年中にSP1が出荷の見込みであるため、2010年中は社内アプリケーションの互換性チェックや修正などを進め、2011年からSP1の社内展開を進めるべきだとする。そうすれば3年間を掛けて自然移行をした場合、XPの延長サポート期限が切れる2014年までには移行作業が完了することになる。
ではOfficeについてはどうか。OSについては一般的な企業がマイクロソフト以外の選択肢を考えるのは現実に難しいとしても、OfficeならOpenOfficeやGoogle Docsなど、競合となる製品やサービスがある。
「多数の企業は、現在使っているOfficeをまだ数年使える。Office 2003でも、あと4年はサポートされる。だからあわてる必要はない。1、2年のうちに移行計画は進めるべきだと思う。もしオープンソースソフトウェアやサービスに移行するのなら、より多くの時間が掛かるかもしれないからだ。選択肢はたくさんある」
結局のところ、Office 2010に移行すべきか、それとも他社の製品やサービスに乗り換えるべきかは、Excelのマクロなどで、Officeでなければならない機能を使いこなしているかどうかに依存する。
「小企業でニーズが非常にベーシックなものであるなら、無料のOpenOfficeでもいいし、Google Docsでもいいはずだ。自社のドキュメントをどれだけカスタマイズしているかがポイントだ。かなりカスタマイズしているならマイクロソフト製品を買いたくなるだろう。だが10年に1度だけ買えばいいのだから、それほど悪くはない話だ」
「マイクロソフト製品特有の機能を使っていないのなら、OpenOfficeに移行することもそれほど難しくはない。問題は企業内にさまざまなタイプのユーザーがいるということだ。大多数のユーザーは基本的機能しか使わないので、例えば80%のユーザーはOpenOfficeでいいかもしれない。しかし残りの20%がマイクロソフト製品を必要としているとすると、どのように2つの製品を管理し、誰がどちらを使うかを決めればいいのか。あるユーザーが仕事を変えたら使う製品も変えなくてはならないのだろうか」
つまり、企業内ユーザー全員にOfficeを与える余裕がない企業は、複数の製品を社内で併用することに起因するコスト増とのバランスで、自社の方針を決めるべきだというのがシルバー氏の意見だ。
一方、マイクロソフトは、ユーザーがほかの製品に移りにくいようにOfficeの差別化を進めているともシルバー氏は指摘する。
Office 2007における大幅なユーザーインターフェイスの変更は不評だったものの、大多数のユーザーは慣れてしまったと同氏はいう。こうなってしまえば、「Office 2007とOffice 2010はOpenOfficeやStarOfficeと違う見栄えになっているため、組織としては乗り換えにくくなる」。さらにOffice 2010ではSharePointとの統合が特色の1つとなっている。「SharePointを戦略的に重要だと考える組織は、Officeをアップグレードしなければならなくなる。実際、Office 2010は、SharePointがなければすべての機能が活用できない初めてのリリースだ」
Windows 7およびOffice 2010への移行について、企業が考えるべき3つの最も重要なポイントは何かとの質問に対するシルバー氏の答えは、「互換性、互換性、そして互換性」だ。
Windows XPや古いInternet Explorer向けに開発された社内アプリケーションは、Windows 7やInternet Explorer 8で動作するかどうかを十分検証する必要がある。マイクロソフトはWindows 7で古いアプリケーションのために互換性設定を用意している。また、IE8では互換性モードが提供されている。さらに過去のアプリケーションを使えるようにするため、Windows XP Modeとこれを企業向けに管理しやすくしたMED-V(Microsoft Enterprise Desktop Virtualization)を提供している。ただし、MED-Vを使うにはMDOP(Microsoft Desktop Optimization Pack for Software Assurance)のライセンスが必要だ。シルバー氏はさらに、MED-Vを使っても管理が複雑化することに留意すべきだとしている。
マイクロソフトは企業も利用できるSaaS版Officeを将来提供すると明らかにしている。しかし、このサービスの提供を急ぐことはないだろうとシルバー氏は話す。「マイクロソフトはOfficeの非常に大きな売り上げを、サービス版Officeで共食いするようなリスクを冒したくはない。(OpenOfficeやGoogle Appsといった)競合はまだ大きなシェアを獲得しているわけではないが、マイクロソフトは偏執狂的な部分を持つ企業であり、競合の存在を感じて対応を進めてきているのだといえる」。
では、結局企業は、SaaS版のOfficeに期待することなく、ソフトウェア版のOfficeを導入すべきだということなのか。
「マイクロソフトの製品を次々に導入することがいいとはいっていない。組織は業務をサポートするためにどの製品が必要かを判断すればいい。判断の結果はマイクロソフトの製品をさらに買うことかもしれないし、すでに持っているマイクロソフト製品を使い続けることかもしれない。マイクロソフト製品を一部ユーザーに使わせ、ほかのユーザーには別の会社のサービスを使わせることかもしれない。たくさんの選択肢が出てきている。マイクロソフトがユニークなのは、すべての分野でこの会社が戦っていることだ。SaaS、ソフトウェア+サービス、永続的ライセンス、非永続的ライセンス、広告による無償のコンシューマ向けWeb版Officeもある(日本では提供予定なし)」。こうしたマイクロソフトの提供する選択肢、そしてマイクロソフト以外の選択肢を十分検討し、現実的で最適な解を見つけるべきだというのがシルバー氏の考えだ。
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