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簡素化・明確化が鮮明に

内部統制報告書から「重要な欠陥」が消える

2010/06/10

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 金融庁の企業会計審議会 内部統制部会は6月10日、財務報告に係る内部統制報告制度の見直しについて議論を行った。前回の議論に加えて、現行の内部統制監査を「レビュー化」するかどうかについて議論。委員からは異論が相次いだ。

 内部統制報告制度の見直しは、簡素化と明確化が柱(参考記事:金融庁が内部統制制度を見直し、より簡素・明確に)。内部統制監査のレビュー化については制度が策定された当時も「大激論となった」(部会長の八田進二氏、青山学院大学大学院教授)という。レビューは日本では四半期財務諸表で導入されている考えで、実証手続きを行う年度監査と比べて、分析的な手続きで財務数値や、財務数値と非財務数値との関係を検証する。欧州ではレビュー方式を採用するケースが多いという。

 委員の町田祥弘氏(青山学院大学大学院教授)は、「レビュー化するならその目的はコスト削減」と説明。そのうえで「内部統制の評価範囲の大幅な絞り込みを実施している日本の制度の場合、評価範囲の検証についてはレビューであっても現在と同様の手続きが必要」と指摘し、「監査人の関与を減らすことにはならず、コスト削減にならない」と話した(町田氏の公表資料、PDF)。

 ほかの委員もレビュー化については否定的で、手塚仙夫氏(日本公認会計士協会 常務理事)は、「内部統制報告制度によって企業で全社一丸の取り組みが行われ、全社の意識が変わった」と現行制度を評価したうえで、監査をレビュー化することで「緩和されたという印象を現場に与えるのは問題。全社一丸になってという緊張感にマイナスの効果がある」と指摘した。「現行の枠組みの中で効率化の議論をしてほしい」。ほかに「朝令暮改では日本の財務諸表についての対外的な信頼感を損なうリスクがある」との意見があった。レビュー化は今回も採用されない見通しだ。

「重要な欠陥」は変更へ

 「欠陥企業であるかのような誤解を生む」との指摘がある「重要な欠陥」という用語については、見直される方向だ。内部統制報告書、内部統制監査報告書に「重要な欠陥」と記載せず、「内部統制は有効でない」という意味の文言のみを記載することを検討する。用語を変更することも議論され、候補としては「重要な(または、著しい)不備、弱点、弱み、要改善事項」が挙げられた。

数値基準は残す方向

 前回の議論で挙げられたそれ以外の修正案については、事務局案として検討の方向性が出された(金融庁の公表資料を参照、PDF)。前回の見直し案(同、PDF)では中堅・中小の上場企業に対する緩和策が提案されているが、どのような企業や組織がその対象となるかは定義しない方針。制度導入2年目以降の企業が行うことができるとする評価対象範囲の絞り込みについては「売上高の3分の2」という数値基準は残すこととなった。金融庁はこの見直し案と今回の審議会での議論、公表した事務局案から公開草案を作成する見通しだ。

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(IFRSフォーラム 垣内郁栄)

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