ソーシャルメディア機能を盛り込んだ新製品 FatWireコンテンツ管理はユーザー視点で

» 2010年07月21日 00時00分 公開
[伏見学,@IT]

 企業にまつわるコンテンツは年々増加の一途をたどっている。そうしたさまざまな情報を適切に管理するために有効なのがCMS(コンテンツマネジメントシステム)である。昨今ではWebアプリケーションの普及によって、変更管理など内部統制の面でもCMSが求められている。

 CMSとは、Webサイトで使用されるテキストや画像などのデータを一元的に編集、管理、保存できる製品で、用途や導入規模に応じて幅広いラインナップが用意されている。そうした中、エンタープライズ市場向けCMSを開発するのがファットワイヤ(FatWire)である。

 これまでほとんどの企業は、製品やサービス情報など自社で作成したコンテンツを一方的に消費者に配信してきた。しかし、ブログやSNSといったソーシャルメディアの発達により消費者同士でのコミュニケーションが活発となり、もはや企業から配信されるコンテンツが唯一の絶対的な情報ではなくなった。企業においても、こうしたソーシャルメディアの波は不可避になりつつある。ファットワイヤは、従来のように単にWebコンテンツを管理(WCM:Web Content Management)するのではなく、ソーシャルメディアやマッシュアップ技術、モバイルなどユーザーが経験したWebサービスを企業で管理していく「Web Experience Management(WEM)」が求められていると提唱する。

WEMのコンセプト図 WEMのコンセプト図

 その一環として、このたび同社が発表した製品が「FatWire Community Server」および「FatWire Gadget Server」である。Community Serverはユーザー生成コンテンツ(UGC:User Generated Content)を生かしたWebサイト運用を実現するもので、コメント、レーティング、レビュー、ブログなどのUGC機能を既存のWebサイトにシームレスに追加できる。加えて、ユーザーのホワイトリストおよびブラックリスト作成、不適切な言葉のフィルタリング、スパム対策などの機能を持つため、リスクマネジメントがシステム的に実現でき、大企業規模でのUGC管理も可能となる。

ユーザーは欲しい情報だけ手に入れる

 Gadget Serverは、さまざまなガジェットをWebサイトに容易に組み込むことができるツールだ。Webサイトのコンテンツ管理者は利用可能なガジェットリストを独自のガジェットやサードパーティのガジェットから生成し、ユーザーは各ガジェットのコンテンツをWebサイト上でパーソナライズして表示できる。ニュースや写真、天気などWeb上のさまざまなコンテンツをまとめて個人ページに追加できる「iGoogle」や、英国の公共放送局である「BBC」のWebサイトをイメージしてもらうとよいだろう。

 同社で技術戦略 副社長を務めるノエル・ジェフリー氏は「(企業などの)情報の量や質は、今まで発信者側に依存していたが、ガジェットを通じてユーザー自身が欲しい情報だけをカスタマイズして引き出せるようになった」とメリットを強調する。

 Webサイト運営側にも利点がある。Gadget Serverは、複数のWebサイト間で使用可能なソーシャルアプリケーションの共通API「OpenSocial」の基準にのっとっていればどのようなサイトでも利用できるため、自らガジェットを作ってサードパーティに提供するだけでなく、サードパーティ製品のガジェットを自らのWebサイトに登録して管理することも可能なのだ。「既に世の中で確立したAPI技術であるため、連携先の間口が広く、お互いのサイトのユーザーを取り込めるようになる」とジェフリー氏は述べる。

インターナショナル プレジデントのマーク・ブリジャー氏(左)と、技術戦略 副社長のノエル・ジェフリー氏 インターナショナル プレジデントのマーク・ブリジャー氏(左)と、技術戦略 副社長のノエル・ジェフリー氏

 自社サイトにソーシャルメディア機能を実装する取り組みは、日本はもとより欧米企業でも始まったばかりだが、既にいくつかの企業でGadget Serverを採用した例が見られる。サムスングループの欧州拠点である「サムスンヨーロッパ」では、自社サイトにガジェットを用いることでユーザーがドラッグ&ドロップで自由にプライベートスペースを作ることができ、結果的に他社サイトよりも利便性や価値が高まるという理由から導入を決定した。またスペインのある銀行では、まずはGadget Serverをイントラネット上で試験的に利用し、次の段階で本番環境のWebサイトに配信するという。

 こうした同社製品の強みについて、インターナショナル プレジデントのマーク・ブリジャー氏は「システム統合の簡便さ」をキーワードに説明する。多くの他社製品はCMSの中にソーシャルメディア機能をビルドアップし、さまざまなコンポーネントを密結合させている。それに対して同社の製品は、CMS、Community Server、Gadget Serverといったコンポーネントに独立性を持たせて、緩やかな疎結合状態にしている。これによってコンポーネントの内部構造に手を加えることなくシステム間の連携を実現できるため、既存システムを生かしながらコンテンツを一元管理することが可能だとしている。

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