既存書籍を使い、受験料安く

PHP試験が秋に開始、オライリー本が教科書

2010/07/26

 Web制作の現場で広く使われているプログラミング言語「PHP」の技術者認定試験が今秋に始まる。オライリー・ジャパン、PHP・OSS関連の技術者、ライターなど業界人らが集まり、10月にも“ベータ試験”を開始するとともに運営母体となる組織を立ち上げる。試験開始から3年間で5000人の合格者輩出を目指す。

photo01.jpg PHP技術者認定機構の理事長に就任予定のオライリー・ジャパン編集長の伊藤篤氏。初級・上級に対応する2冊を試験の主教材として利用する

 発起人となる役員候補らは2010年7月26日、東京のオライリー・ジャパンで会見を開き、「市場の要求に耳を傾けながら、PHPを必要とする企業・団体と技術者を結びつけていきたい」と主旨を説明。PHPはLAMPスタックとして技術的には確立されているものの、業務の中での取り込みが遅れているのが現状だという。

 2010年5月の経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」によれば、国内の情報処理サービス技術者は推定101万人。このうちPHP技術取得者率は12.6%、取得希望者率は25.9%とPHPを習得したいと考える技術者は多い。Javaなど多くの求人倍率が落ちる中、PHPだけは約7.8倍という高い求人倍率を誇るほどニーズが高いという。

slide01.png PHP技術者の求人倍率は高まっているという

市販本を主教材とする初めてのモデル

 試験は初級・上級の2種で、受験料はそれぞれ1万2000円、1万5000円。設問数と試験時間は初級40問(1時間)、上級60問(1時間30分)。出題は選択式で、7割を合格ラインとする。当初は紙ベースの試験だが、時期を見てコンピュータベースの試験も開始する。

目次 出題割合
1章 オリエンテーションと始めの一歩 0.06
2章 テキストと数の操作 0.08
3章 判定と繰り返しについて 0.08
4章 配列の操作 0.08
5章 関数 0.08
6章 Webフォームの作成 0.08
7章 データベースに情報を保存 0.08
8章 クッキーとセッションでユーザーを記憶 0.06
9章 日付と時刻の取り扱い 0.06
10章 ファイルの操作 0.08
11章 XMLのパースと生成 0.02
12章 デバッギング 0.04
13.8 クラスとオブジェクト(クラス定数も含む) 0.02
14章 日本語処理 0.06
付録B 正規表現の基本 0.04
付録D PHP5.1とPDO 0.02
追加1 セキュリティ(各章からのポイントの集約) 0.02
追加2 出力バッファ(エラー処理。各章からのポイントも含む) 0.02
追加3 定数・予約語 0.02

PHP5技術者認定試験初級の出題範囲案

photo02.jpg 副理事長に就任予定の吉政忠志氏

 ユニークなのは、すでに市販されている書籍を「主教材」とし、これに基づいて試験を行う点だ。副理事長に就任予定の吉政忠志氏は、「市販本でローコストオペレーションが可能になる」と話す。「ざっと見渡したとき、すでに書籍がたくさんある。独自の教材を作る作るコストがもったいない」(吉政氏)。主教材は市場で評価の高いオライリーのものとしているが、既存のeラーニングや書籍も申請手続きを経ることで副教材として「認定」のお墨付きが得られる。また、すでに全国に38校あると見られるPHPを教えるスクールについても、認定スクール、認定コース、認定インストラクターとして登録できる制度を整える。

 受験料を抑えるビジネスモデルを採用したのは、個々のエンジニアが自主的に学習してスキルアップできる環境を日本でも整えたい、という思いがあるからだという。ベンダが主体となって運営する資格試験や、企業がエンジニアに取得を推奨したり、義務付けるような試験ではなく、「自分のお金で自分のスキルを獲得できる、もっと自由な試験があってもいい」(吉政氏)。PHPの知識や経験に自信があれば、教材やコース受講を飛ばして受験も可能だ。

優れたCMSなどで、世界的に進むPHPの受容

 テクニカルマーケティングの責任者となる永原篤氏(オープンソースワークショップ代表取締役)は、PHPの特徴として「世界的に使われている」「プログラミングがしやすく、高くない参入障壁」の2点を指摘。「いろいろな企業が参入することで、まだ高いポテンシャルがある」と説明する。

 PHPの世界では、WordPressやXOOPSなど幅広い利用実績のあるCMS実装が多い。こうした既存のシステムをベースにして機能を拡張することも増えている。その背景として、「昔は受託開発で言語指定というケースもあったが、最近は言語はどれでもいいという顧客が増えている。サービスが実現する効果は何なのかという部分に目が向いているのではないか」(桑村氏)という。

 ヨーロッパでは政府系のWebサイトで、「Ez Publish」や「Typo3」といったPHPベースのオープンソース実装が積極的に利用されているという。PHP技術者認定機構では、技術者認定という指標を提供することで、こうした動きを日本国内の企業や団体にも広げていきたい考えだ。

(@IT 西村賢)

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