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公認会計士制度に関する懇談会が中間報告

最短で2014年試験から、「財務会計士」は競争力を持つか

2010/07/30

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 金融庁の公認会計士制度に関する懇談会は7月30日、公認会計士資格試験制度の見直しを提言する中間報告を公表した。最大の問題になっている試験合格者の浪人問題を解決するために、公認会計士になるまでの途中段階で資格を与えて就職しやすくする。また、受験生に実務経験を求めて、早い段階での就職を促すことが柱だ。新資格制度は早ければ2014年にも実施開始される見通しだ(金融庁の発表資料)。

 中間報告はこれまでの議論をまとめた内容。公認会計士になるために3段階の試験を設定する。1段階目の試験合格者は基本的にその後、3年程度の実務経験を積み、その後に2段階目の試験を受験する。2段階目の試験に合格すると「監査証明業務以外は行える会計のプロフェッショナル」(会計プロフェッショナル)になれる。中間報告ではこの会計プロフェッショナルを「財務会計士(仮称)」としている。

 財務会計士はこの後に実務補修を行ってから修了考査をパスすると監査証明業務を行える公認会計士になれる。修了考査の合格率は現状7割から引き下げる。実務補習はeラーニングなどを活用し、企業に就職した人が受けやすいようにする。

cpa01.jpg 新資格試験制度の概要(中間報告から、クリックで拡大します)

早期の就職を促す

 新資格試験の狙いは受験生をいかに早い段階で職に就けるかだ。2009年試験の合格者の就職内定率は約7割。約3割の合格者は仕事に就けておらず、有能な人材が社会で生かされていないとの指摘がある。

 新資格試験では、1段階目、2段階目とも試験合格者に合格順位を伝えることを検討している。合格者はその順位によって自らの位置付けを知ってもらう(一般企業に就職するか、もしくは監査法人を目指すか、などを判断する)。

 もう1つは実務経験の要求。現行の資格試験制度では論文試験合格後に求める実務経験を、2段階目の試験前に求める。実務経験の内容は財務、会計に関する内容とするが、現行のように監査法人や大企業(資本金5億円以上が要件)だけが対象ではなく、中堅企業の業務も実務経験として認める方向だ。

 ただ、実務経験は条件を設けて、1段階目の前、もしくは2段階目の合格後でも可能とし、多様な人材が受験できるようにする。例えば1段階目試験の合格から2年間は実務経験なしで2段階目の試験を受験できるようにすることを検討している。2段階目試験の合格に3年以上かかると、実務経験を積む必要が生じるなどの内容だ。また、科目別合格の有効年数も10年に延ばすことが検討されている。

パブリックコメントの結果を最終報告に反映

 それぞれの試験内容についてはすでに、たたき台が示されている。1つの案では1段階目の短答式では会計学のみを必須科目とし、経済学や経営学、時事、会社法、IT、英語、法人税法を選択科目とする。2段階目の論文式+短答式では会計学、監査論、企業法、租税法を必須科目とする。

 もう1つの案は1段階目の試験で会計学、企業法、法人税法を必須科目として、2段階目の論文式+短答式では会計学と監査論、租税法を必須科目として、加えて経済学、経営学、時事、IT、英語を選択科目とする。

 金融庁は中間報告公開後にパブリックコメントを求める。寄せられた意見と庁内の議論、外部有識者の意見をとりまとめて最終報告とする予定だ。最短の場合、2011年1月の通常国会に改正公認会計士法案を提出する見込み。前回の資格試験改訂では改正から実施まで3年の準備期間をおいた。そのため2011年に改正公認会計士法が成立すると、最短で2014年に実施開始となる。

 金融庁 副大臣の大塚耕平氏は「中間報告書としてリリースする。まだ詰めるべき点はあるが、財務会計士(仮称)という新しい資格が公認会計士試験のプロセスの中に設けられたのは非常に大きな改革」と述べた。

cpa02.jpg 懇談会座長を務めた金融庁 副大臣の大塚耕平氏

財務会計士は競争力を持つか

 9回にわたって議論してきた公認会計士資格試験制度の改正が一応の決着を見た。最短で2014年にも財務会計士を生み出す試験が始まる。ただ、国内、海外では会計を取り巻く状況が激変を続けている。

 まず、IFRSを国内で強制適用するかどうかが2012年に判断され、強制適用の場合は最短で2015年に開始される。財務会計士の誕生はその狭間であり、合格者の最大の就職先になるとみられる監査業界が今後の人材需要をどのように判断するか、見通しが立たない。大手監査法人が大規模な早期退職制度を設けるなど、監査法人が今後、大量の合格者を雇い入れることは望み薄だ。財務会計士が監査業界、産業界でどのように位置付けられるか、受験生の関心は高い。

 もう1つの激変は国際情勢だ。米国公認会計士試験の国内受験が2011年春にも始まる予定。すでに各受験スクールへの問い合わせが相次いでいるという。米国がIFRS受け入れを最終決定し、世界の会計基準がIFRSで統一される流れができると、米国公認会計士と財務会計士は競合関係になる可能性がある。公認会計士になるための通過資格としての財務会計士は高い競争力を持つと考えられるが、単独資格としてはどうだろうか。米国公認会計士との間で有能な人材の取り合いになる可能性がある。

関連リンク

(IFRSフォーラム 垣内郁栄)

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