アプリ提供側のWeb系知識の不足が課題
SNSとゲーム業界が急接近、グリーCTOに聞く
2010/08/24
グリー 取締役執行役員CTO プラットフォーム開発本部の藤本真樹氏「スクウェア・エニックスさんが、うち(グリー)にゲームを提供している状況なんて、1、2年前には考えられませんでしたね」。こう話すのは、国内大手SNS、グリーの取締役執行役員CTOで、プラットフォーム開発本部の藤本真樹氏だ。
グリーは2006年秋にKDDIと提携して以来、モバイル向けSNSとして順調にユーザー数を伸ばしてきた。約3年前に提供を開始した「釣り★スタ」をはじめ、キャラクター育成ゲームの「クリノッペ」、探検ゲーム「探検ドリランド」など、自社製オリジナルゲームのヒットにより、2009年4月に1000万会員突破、2010年6月には2000万人を突破、そして同月東証一部上場と、競合のDeNAやmixiと並んで業績を伸ばす注目株だ。
ゲーム業界とのギャップ
グリーは、バックエンドのインフラには「ふつうのx86のサーバが並んでいます。数千台というところでしょうか」(藤本CTO)というWeb系ベンチャーだが、ここに来てモバイルSNS業界は、ゲーム業界と接近している。
「ここのところ、ゲーム業界と、SNS業界が近づいてると肌で感じています。ただ、ノウハウが結構違うんですね。リリースしたとたんに負荷でサービスが止まってしまったり、サーバをスケールさせるという点では、ぼくらが持っているものを共有できるのかなと思っています」(藤本CTO)
プラットフォーム開発本部リーダーを務める増山和幸氏グリーのプラットフォーム開発本部リーダーを務める増山和幸氏は、こう指摘する。
「ゲーム業界にいるエンジニアは、1台のハードウェアの性能を極限まで引き出すという能力に優れていますが、サーバを使ったことがある人自体が少ないんです。そういう概念に詳しくありません」(増山氏)
増山氏自身、PCや家庭用ゲーム機向けのゲーム会社を経てグリーに入社した経緯があり、2つの業界間のノウハウのギャップやスピード感の違いなどに敏感だ。
「もちろん、ゲーム業界のエンジニアでもMySQLぐらいは知っていますが、大規模にスケールさせる経験を持った人は少ない。そういう部分で壁にぶつかったりしているので、解決する手助けをしていきたいですね」(増山氏)
グリーのサーバ規模は数千台。データセンターも数カ所にまたがる。MySQLを大量に並べる構成は、ほかのSNS事業者とも似ているが、アプリサーバとDBサーバの間に自作のプロキシサーバを置き、ロードバランスやフェイルオーバーを行うなど、独自のシステム構築ノウハウもある。藤本CTO自身も、かつてはPHPのコミッタを務め、現在は社内でも活用しているKVS実装の「Flare」や、PHP向けのWebフレームワーク「Ethna」を開発するなど、技術志向が強い。
ノウハウ蓄積は、技術的なもの以外にもある。KDDIとの提携以前には、十分なサーバ投資ができず、アプリ側のチューニングに時間をかけたり、いざサービスをローンチするとサーバリソース不足で困ったという苦い経験も重ねてきた。これは今では教訓となっている、という。こうしたノウハウや教訓について、藤本CTOと増山氏は、8月31日から横浜で開催されるゲーム・エンターテイメント制作者向けイベント「CEDEC」で講演予定という。
もちろん、こうした活動は「GREE Platform」の本格普及へ向けた布石であり、グリーのオープン化の一環だ。
GREE Platformは、先行するmixiやDeNAと同様にOpenSocialに準拠したAPIを外部向けに提供している。モバイル向けOpenSocialは日本市場固有の仕様だが、「3社のAPIには細かな違いはありますが、そこまで大きく異ならないと思います」(藤本CTO)という。グリーではサーバ側にはApache Shindigを使い、アプリケーション提供者は、OAuth認証やRESTful APIを用いてソーシャルグラフなどを活用する。ただし、ゲーム利用者がアクセスするサーバについては、そのトラフィックの大部分をゲーム提供者側が準備しなくてはならないため、現在、ここにノウハウのギャップがある、というのが増山氏の指摘だ。
ゲーム1本当たりの製作コストが、ちょっとした映画並みと言われることもあるゲーム機用タイトルと、比較的少人数でヒット作を生み出せる可能性があるソーシャルアプリとでは発想やビジネスモデルも異なる。ゲーム業界がモバイルSNSにアプリケーション提供者として大きく乗り出すとしたら、こうしたギャップも埋めていかなければならないのかもしれない。
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