ネットワークサービスの仮想アプライアンスやサーバの新製品発表

シスコのデータセンター戦略はシトリックスにも対応へ

2010/10/01

 シスコシステムズは国内で、データセンター関連の新製品を発表した。新製品は、仮想マシングループ間の通信分離を実現する仮想アプライアンス「Cisco Virtual Security Gateway(VSG)」、同じく仮想アプライアンス形式でWAN最適化を行う「Cisco virtual WAAS(vWAAS)」、これらの前提となる同社の分散仮想ソフトウェアスイッチの最新版「Nexus 1000Vリリースv1.4」、ポート密度を高めた「Cisco Nexus 5500」、そしてインテルの最新ハイエンドサーバCPUを搭載したブレードサーバ「Cisco UCS B230-M1」などだ。シスコは「Nexus 1000V」とvWAASについて、シトリックスのXenServerにも対応するとしており、これまで実質的にヴイエムウェア環境に偏っていたシスコのデータセンター関連機能が、マルチベンダ的な広がりを見せ始めたという点でも注目される。

 VSGとvWAASは、Nexus 1000Vリリースv1.4の「vPath」という新機能と連携して動作する。vPathは仮想マシンのポートに出入りするパケットを、事前に設定したポリシーに基づいて特定のサービス用仮想マシンにリダイレクトすることができる。リダイレクト先となるサービス用仮想マシンは、一般仮想マシンと同じ物理サーバ上に置かれる必要はない。単一のサービス用仮想マシンが、複数の物理サーバ上で動作する仮想マシンに対してサービスを提供できる。

 11月に販売開始のVSGは仮想マシンレベルのファイアウォールを実現するソフトウェア。仮想マシンとして動作し、複数物理サーバにまたがる仮想マシン群を複数の論理的なゾーンに分割して通信を分離、各ゾーンを対象にファイアウォール機能を提供できる。ネットワーク機器ベンダのシスコは、これまで仮想マシンとVLANのひも付けを実現してきたが、VSGではVLANと無関係に仮想マシンをゾーン分けして管理できる。これにより、「VLANを節約できる」(シスコ プロダクトマネージメント シニアマネージャのディーン・ホウアリ氏)。業務要求に基づいて、よりきめ細かなゾーン分けができるという。ネットワーク管理者でなく仮想化環境の管理者が、仮想サーバのゾーニングを制御することも想定していると考えられる。

cisco01.jpg VSGでは、VLANにまたがって仮想マシンのグループを構成し、グループ相互の通信を分離できる

 同じく11月に販売開始のvWAASは、シスコのWAN最適化製品「Cisco WAAS」を仮想アプライアンス化したもの。仮想アプライアンス化してサーバ仮想化環境と直接連係できるようにしたのがポイントだ。こちらもNexus 1000VのvPath機能と連動する。特定のWebサーバ搭載仮想マシン群をWAN最適化の対象としておき、処理能力向上のためにWebサーバ仮想マシンを追加した場合には、自動的に対象として加わるといった自動化が実現できる。

cisco02.jpg vWAASでは、Webサーバの追加に連動し、自動的に最適化の対象とすることができる

 ホウアリ氏はこれに関連して、Nexus 1000Vが現在のVMware ESXのみならず、シトリックスのXenServerにも対応することを明言した。また、今回発表の2製品でも、XenServer対応が進められていると話した。ヴイエムウェアもvShield Edgeなどのネットワーク関連製品を拡充してきているが、ホウアリ氏は複数の仮想化プラットフォームをサポートすることが、シスコの新製品の差別化ポイントの1つになると説明した。

 シスコの専務執行役員 データセンター事業統括の石本龍太郎氏によると、同社はこれらの製品を、「シスコ ユニファイドネットワークサービス」の一部として位置付けているという。ユニファイドネットワークサービスは、セキュリティやアプリケーション高速化、アプリケーション展開などの自動化やポリシー制御に向け、インフラをOS/アプリケーションと連動させる取り組みだ。シスコ ユニファイドネットワークサービスは、サーバ製品による「ユニファイドコンピューティング」、Nexusシリーズによる「ユニファイドファブリック」とともに、シスコのデータセンター戦略の3本柱として機能していく。なお、シスコはこれまでデータセンター戦略を「Data Center 3.0」と呼んでいたが、これを「Cisco Data Center Business Advantage」と改称。ビジネス的な価値をより強く打ち出そうとしている。

cisco03.jpg Cisco Data Center Business Advantageでは、ネットワーク、インフラのアプリ連動、サーバリソースの3要素を通じ、業務における価値の向上を目指す

 ユニファイドコンピューティングを支えるサーバ製品では、新たなサーバブレード「Cisco UCS B230-M1」が発表された(10月末に販売開始)。ハーフサイズのブレードに、Nehalem EX、具体的にはXeon 7500/6500を採用した2ソケットサーバ。DIMMスロットは32本で、メインメモリを最大512GB搭載できる。10GbpsのCNAを2ポート備え、ローカルストレージはオプションでSSDのみをサポートする。小サイズに大容量メモリを搭載する新製品は、データベースサーバのほか、デスクトップ仮想化にも適しているとする。

cisco04.jpg Cisco UCS B230-M1はNehalem EXを採用、大容量メモリでデスクトップ仮想化やデータベースサーバに適しているという

 シスコはデスクトップ仮想化を、Cisco UCSの重要な用途の1つととらえている。従来どおりVMware Viewを推進するが、一方米シスコは2010年9月、シトリックスともデスクトップ仮想化での協業を発表した。日本ではこの協業発表に先立って、近畿大学に対する導入などで2社が協力した実績があると石本氏は説明した。今後は、2社が検証済みのデスクトップ仮想化パッケージを販売していくという。300デスクトップ程度のスターターパッケージに加え、1000デスクトップまでの追加パッケージを提供するなどしていきたいという。

 シスコはNexus 5000シリーズで、「Nexus 5548」を発表した。9月末に販売開始の同製品は、1Uの高さに固定の10Gbpsイーサネットポート32ポートと拡張スロット1つを備える。これに16ポート10Gbpsイーサネットモジュールを挿せば、10Gbpsイーサネット48ポートの構成となり、1Uというサイズを考えると、Nexus 5000シリーズよりも高いポート密度を実現できるとする。もちろん、これらすべてのポートはFibre Channel over Ethernet(FCoE)に対応する。将来提供されるドーターカードにより、レイヤ3ルーティングにも対応。さらに、将来のソフトウェアアップグレードにより、スパニングツリープロトコルに代わるシスコの冗長化技術FabricPathおよび標準化が現在進行中のTRILLにハードウェアとして対応するという。

 拡張モジュールとしては、16ポート10Gbpsイーサネットモジュールに加えて10Gbpsイーサネット×8/ファイバチャネル×8のモジュールが提供され、ネイティブなファイバチャネル接続はこのモジュールを通じて行う。

 Nexus 5000/5500シリーズを補完する集線装置のCisco Fabric Extenderでは「Cisco Nexus 2224TP 1GE Fabric Extender」を発表(9月末に販売開始)。1Uにサーバ接続のためのダウンリンク1Gbpsイーサネットを24ポート、アップリンク10Gbpsを2ポート搭載する。

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(@IT 三木泉)

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