日本HP、開発を抜本的に効率化する新製品群を発表アプリケーションライフサイクル全体の管理で“真の効率化”を

» 2011年01月14日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)が1月12日に発表したアプリケーションライフサイクル管理の新製品群「HP ALM 11ソリューションズ」が注目を集めている。本製品群は「開発フェーズの管理」だけではなく、複数の開発プロジェクトについて、プロジェクト計画から、開発、運用、廃棄まで、「ソフトウェアライフサイクル全体」を一貫して、統合的に管理できる点が特徴だ。これにより、「開発フェーズの管理」だけを対象にした製品とは異なり、“開発コストの浪費を抑止しながら、開発のスピード、品質を担保できる”として、企業の現場層、管理層の関心を集めている。

10の新製品群でアプリケーションライフサイクル管理を支援

 今回発表したのは以下の10製品(すべて税込み価格/2月1日に提供開始。「HP Performance Center 11」のみ2011年5月に提供開始予定)。

 「HP ALM 11」:旧米マーキュリーの品質管理製品「Quality Center」の最上位版「Quality Center Premier」の機能強化バージョン。要件管理、品質管理、開発管理までを1つのプラットフォームに統合し、複数のプロジェクトに対してアプリケーションライフサイクル全体を確実・効率的に管理できる。要件定義を行うUMLツールや、マイクロソフト「Visual Studio」、フリーウェアの「Eclipse」などの統合開発環境とも連携可能(621万6000円/5同時ユーザー)。

 「HP Quality Center 11」:アプリケーション開発の品質管理製品「Quality Center Enterprise」の最新版。要件管理、品質管理を単一のプラットフォームに統合し、プロジェクト単位での要件と、要件/テスト/不具合の追跡機能を提供する(504万円/5同時ユーザー)。

 「HP Sprinter」:HP ALM 11/HP Quality Center 11上で稼動するテスト自動化ツール。従来は手で行っていた作業を自動化し、テスターの負荷を大幅に低減する(HP ALM 11とHP Quality Center 11にバンドル)。

 「HP Requirements Management 11」:HP ALM 11/HP Quality Center 11上で稼動する要件管理ツールの最新版。テストサイクルの全工程における要件の把握、管理、追跡を支援する(33万6000円/1ユーザー)。

 「HP LoadRunner 11」:プロジェクト単位で行う自動負荷テストツールの最新版。テスターの作業負荷が高いAjaxを使ったリッチクライアントのUI負荷テストを高速化する「HP TruClient」を搭載している(684万6000円/25仮想ユーザー)。

 「HP Performance Center 11」:エンタープライズレベルの負荷テストツールの最新版。従来から多くのユーザーに使われてきた「HP LoadRunner」の機能をWebベースのインターフェイスで実現する。「仮想ユーザー」「コントローラ」などのテスト資産を複数のプロジェクトで共有できる(1231万1250円/25仮想ユーザー)。

 「HP Service Test 11」:非GUIアプリケーションの機能テストツールの最新版(100万8000円/1シートライセンス)。

 「HP Functional Testing 11」:GUIアプリケーションの自動機能テストツールの最新版(134万4000円/1シートライセンス)。

 「HP Unified Functional Testing 11」:GUIアプリケーションの自動機能テストツールの最新版。「HP Functional Testing 11」と「HP Service Test 11」を連携させた製品で、ビジネスプロセスから、プロセスを支えるGUIを持つアプリケーション、さらに各サービスコンポーネントまで一気通貫した機能テストを実現する(184万8000円/1シートライセンス)。

 「HP Business Process Testing 11」:HP ALM 11/HP Quality Center 11上で稼働するビジネスプロセステストツールの最新版。再利用可能なテストコンポーネントを使用することで、ビジネスプロセステストのテストシナリオ作成をノンプログラミングで容易に行える(50万4000円/1ユーザー)。

「ライフサイクル全体」の管理で開発の品質、スピードを両立

 中でも核となるのは品質管理製品、HP ALM 11だ。現在、企業はビジネスの状況に応じて、新しいアプリケーションを次々と開発し、運用後にはそれらを確実にバージョンアップしていかなければならない。よって、開発案件を慎重に吟味するのはもちろん、開発後の運用の在り方も深く考え、確実に管理しなければ、市場ニーズに対応できないばかりか、開発コストの浪費にもつながりかねない。

 HP ALM 11は開発プロジェクトの要件管理、品質管理、開発管理を単一のプラットフォームに統合し、複数の開発プロジェクトについて、アプリケーションライフサイクル全体を統合的かつ確実に管理し、真に効率的な開発を支援するという。

写真 アプリケーションライフサイクル全体を統合的に管理することで、“開発フェーズの管理”だけにフォーカスした製品とは異なり、無駄なコストの浪費などを抑えた“真の効率化”を支援する

 また、要件変更/テスト結果/不具合の記録などをExcelで管理しているケースも多いが、開発のスピード、品質が求められているいま、Excelだけでこれらを確実に管理することは難しい。その点、本製品は要件、開発、品質について、リアルタイムのトレーサビリティを担保できることもポイントだという。

写真 日本HP HPソフトウェアソリューションズ統括本部の岡崎義明氏

 具体的には、要件獲得、開発、テストといったプロジェクトのマイルストーンごとにKPIを設定し、品質、進ちょくを視覚的に把握・管理できる『プロジェクト計画&追跡』機能や、複数のプロジェクトをまとめて管理する『クロスプロジェクトレポート』機能などを持つ。

 特に、「各マイルストーンにおいて『閾値に対してどういう状況にあるのか』を、管理画面上で緑/黄/赤の色で着色して表示する。着色された状況表示をクリックすれば、より詳細な状況を表示する画面にドリルダウンできるなど、プロジェクトの現況を、常時、確実・迅速に把握できる」(日本HP HPソフトウェアソリューションズ統括本部の岡崎義明氏)

 また、要件定義を行うUMLツールや、マイクロソフト「Visual Studio」、フリーウェアの「Eclipse」などの統合開発環境と連携できる。これにより、「オフショア開発などによって開発チームが分散した環境にあっても、プロジェクト選定から開発、運用、廃棄まで、ソフトウェアライフサイクル全体の中で開発フェーズをとらえ、関係者全体で情報共有しながら一元的に開発を進められる」という。

 一方、HP ALM 11/HP Quality Center 11上で稼働するテスト自動化ツール「HP Sprinter」は、従来、手で行っていたテスト作業を効率化する。例えば、テストの際、“何か問題があったら、いったん画面ショットを撮ってExcelに貼り付けた上で注釈を付ける”といった作業の繰り返しがテスターに負担を強いていたが、HP Sprinterは手動テストの画面ショットに直接注釈を付けられる機能を持つ。

写真 HP SprinterはアプリケーションのUIに直接注釈を入れられる機能などを提供し、テスターの作業負荷を軽減する

 このほか、単一のテストを複数の環境で同時に自動実行できる「ミラーテスト」機能、あらかじめ作成したテストデータをワンクリックでアプリケーションのUI上に挿入する「データインジェクション」機能などを搭載。テスト資産の再利用、テスト自動化などによって、開発のコスト、スピード、品質の三要件の担保に寄与する。この機能は通常の開発時だけではなく、新規開発に比べて人やコストを割きにくいバージョンアップの際にも効果が期待できるという。

ALMはビジネス効率化の根幹を成すもの 

 発表の背景について、日本HP 執行役員 HPソフトウェア・ソリューションズ統括本部長の中川いち朗氏は、「ビジネスの命題に応えるために、アプリケーション開発の品質向上、スピードアップ、低コスト化に対するニーズは年々強まっている。これを受けて全社的に品質管理のプロセスを見直し、“アプリケーションライフサイクル全体”を管理しようという機運は着実に高まっているが、日本ではALM、テスト自動化の製品市場がまだ決して大きいとは言えない」と指摘。そこで今回の新製品群を通じて、「これまでなかった市場を作り、リードしていくことが大切と考えている」という。

写真 日本HP 執行役員 HPソフトウェア・ソリューションズ統括本部長の中川いち朗氏

 そのための方策として、パートナー企業と連携して、各業種/用途に応じた「HP Quality Center クイックスタートテンプレート」を用意したほか、業界の中でも開発やテストの知見に長けた人材を集めたALMコンサルテーション部隊を組織。「製品提供だけではなく、コンサルテーションから注力し、スムーズかつ確実な導入を支援していく」という。さらに「HP LoadRunner」の価格を改定し、仮想ユーザーライセンスの価格を最大40%以上値下げしてユーザーの裾野を広げるなど、ALM分野での企業支援に対する“本気度”の高さをアピールした。

 ビジネスにITが深く浸透しているいま、ビジネスを支えるアプリケーションのライフサイクル全体の管理は、企業が日々いそしんでいる「効率化の根幹を成すもの」とも言える。ALMに取り組むことは、企業が「まだまだ効率化できるフィールド」を発見するチャンスにもなり得る。その点、今回の新製品群と提案活動がユーザー企業の“効率化の在り方”にどのような影響を及ぼすのか――ALM分野における同社の展開とユーザー企業の動向から目が離せない。

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