SIerはコスト意識を、ユーザーは目的意識を

クラウドはまだ2合目、企業の7割が検討段階

2011/02/07

 2011年1月12日、アイ・ティ・アール(ITR)が発起人となり、「いま、企業ユーザーが求める『クラウド環境』とは」というテーマで『クラウド討論会2011』を行った。

 モデレータをITR シニア・アナリストの舘野真人氏が務め、パネリストとしてアイティメディア ITインダストリー編集統括部長 浅井英二、朝日インタラクティブ CNET Japan編集長 別井貴志氏、アスキー・メディアワークス TECH.ASCII.jp編集長 大谷イビサ氏、インプレスビジネスメディア ITLeaders編集長 田口潤氏、日経BP コンピュータ・ネットワーク局 ネット事業プロデューサー 兼 日経コンピュータ編集プロデューサー 星野友彦氏の5名が参加した。

 まず、舘野氏がクラウドの利用状況アンケート結果を報告した。アンケートは討論会に参加するメディアの読者を対象に2010年12月下旬に実施された。利用している企業は30.3%、これから導入を検討する企業は69.7%。すでに利用している企業のうち、利用クラウドの形態は、SaaSが72.3%、PaaS・IaaSが37.3%で、SaaSがクラウド利用の7割を占めた。

アンケート結果 企業全体の約2割がSaaSを利用しているという事前アンケート結果(クリックで拡大)

 1つ目の議題「『クラウドへの懸念』を払拭するために」では、企業がクラウドを安心して導入するには、セキュリティの整備と事業継続を支えるサービス品質が重要だという議論がなされた。

 2つ目の「クラウド時代に求められるシステム間連携」では、事業のどの部分がミッションクリティカルかを見極め、その重要度に応じてプライベートクラウドとパブリッククラウドをうまく使い分けていくべきだとされた。

 3つ目の「クラウドがもたらす新たなビジネス・スタイル」では、クラウドを用いたDesktop as a Serviceが例に出され、端末を選ばずに、必要なデータやアプリケーションを、IDとパスワードで認証したうえで、手元に表示したり、操作できたりすることのユーザーメリットが語られた。また、クラウドを用いたアプリケーション開発の容易さが、新ビジネス創出のチャンスになっていることにも、フォーカスが当たった。

討論会写真 左から別井氏、大谷氏、浅井、田口氏、星野氏

 4つ目の「クラウド時代のネットワーク戦略」では、サービスに問題が発生しなければ、アプリケーションの裏側に何があるのかを意識させることはない。安心してサービスをユーザーに利用させ続けることの重要性が強調された。

 5 つ目の「グローバル戦略とクラウド」では、グローバル企業に比べて、コスト意識の低い国内のSIerやネットワーク事業者は、コスト意識を改善していく必要がある。また、事業者が海外でサービス展開する場合、現地に合わせてサービスの調整をし、品質にこだわったサービスを提供していくことが、世界で生き残る道だという論点が提示された。

 まとめとして、別井氏は「クラウド導入で重要なのは、メリットを最大限生かすために目的と計画をはっきりとさせること」だとし、大谷氏は「クラウドは価格など、メニューが見せにくいので、ユーザーに分かりやすく提示していくことが大事。日本の企業の 99.6%は中小企業。中小企業はいい意味でブラックボックス化したサービスを安心して使いたいはず」と語った。

 浅井は、「クラウドはいま、バーゲンセール中だ。ユーザーは、運用、メンテナンスコストの削減のために、バーゲンセールになっているサービスをしっかり活用するのが賢い。 ITプロセスを預ける経営者は、旧来型のアウトソーシングとどこが違うのかを、しっかり見極めて利用していくべき」と話した。田口氏は「クラウドのサービス成熟度は、いまやっと2合目。日本の製造業がこれまで切磋琢磨(せっさたくま)して海外の技術を自分のモノにしてきたように、米国からやってきたラウドを日本のサービスとなるよう、日本人の得意な“工夫”をしてもらいたい」と期待を込めた。

 星野氏は、「クラウドは魔法の杖ではない。クラウドを入れたからといって、すべてが変わるわけではなく、ビジネスの構造を変化させ、機会損失を減らすためのものだ。Amazon EC2のエラスティックという言葉通り、いかにユーザーがアクセルを踏みやすく、ブレーキを効かせやすく、コントロールさせやすくするかが重要だ」とした。さらに、「1995年にはオラクルが「『ネットワークコンピューティング』、2000年にはサン・マイクロシステムズが『ユーティリティコンピューティング』というキーワードを提唱していた。そう考えれば、今回は3度目の正直。これからわれわれはようやく『クラウド』を実用化する時代に入る」と付け加えた。

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