ソーシャルでつながった医師とエンジニアが実現した被災者支援

Twitterから生まれたメール医療相談サービス、Rescue311

2012/03/08

 体調に不安を抱きながら「この程度で医者にかかるなんて……」と我慢してしまう被災者。被災地に直接入って支援活動を行いたくても、時間的な制約などからそれがかなわない医師――この二者を携帯メールでつなげてきたサービス「Rescue311」が、もうすぐ1つの区切りを迎えようとしている。

 Rescue311は、東日本大震災の被災者向けのメール医療相談サービスだ。「持病の薬がなくなった」「不正出血が止まらない」といった悩みごとをメールで送信すると、問診票がSalesforce.comに登録される。そして複数のボランティアの医師が問診票を閲覧し、症状の解説や対応策を記した返事が返ってくる。

 Rescue311の代表を務めるのは、群馬県立小児医療センターの椎原隆医師だ。メールやTwitterで呼び掛けて10人の発起人を得て、2011年4月4日にサービスを開始した。ピーク時には、内科、小児科、外科、脳外科など15の診療科目を網羅する183人もの医師がボランティアで参加し、現地での医療支援を補完する形で相談に応えてきた。

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 震災から1年が経つ3月11日、Rescue311は新規の相談受け付けを停止する。今後はそれぞれ個人に立ち戻って、また異なる形で支援に携わる方向だ。

Twitterから生まれた医療相談サービス

311_02.jpg Rescue311代表 群馬県立小児医療センターの椎原隆医師

 Rescue311がユニークな点は、Twitterというソーシャルネットワークの中から生まれてきたサービスであることだ。ボランティアとして参加する医師の面々が、震災以前から個人的にTwitterを活用していたことも、迅速な立ち上がりにつながった。中には、初めて顔を合わせたのが2011年9月になってから、というメンバーもいたという。

 織田聡医師もその1人だ。それまで個人的にTwitterを利用していたが、「震災の被害を目の当たりにして何かできないかと思い、Twitter上で『医療相談を受け付けます』とつぶやいた。けれど、残念ながら相談はなかった」(織田医師)。

 というのも、当時、被災地では電話やインターネットはおろか、電気すら寸断されており、Twitterを利用して安否確認や情報交換ができたのは一部に限られていたからだ。当時、100人を超える医師がTwitterを使って支援に乗り出していたが、その手が届かない状態だった。

 「メーリングリストやTwitterを通じて、震災の被害がかなりひどい状態であることが分かってきた。何らかの手助けをしたいけれど、自分の仕事を放り出して行くわけにもいかない。いま、この状況で何かできることはないだろうかと模索していた」(椎原医師)。

 こうした思いを抱いていた椎原医師がTwitterで呼び掛けたところ、多数の医師が賛同。また、元々医療情報の提供サイトを運営していた児玉氏らエンジニアもつながり、「メールだけで完結する相談システム」、Rescure311という形になっていったという。

 システム構築や運営を技術面からサポートする児玉剛氏は、「Twitterはまるで巨大なタバコ部屋のようなもの。『何かやりたい、支援したい』という思いがあっという間につながり合って、メールベースの相談システムという形になっていった」と振り返っている。

 ちなみに織田医師は、被災地に入って現地のニーズを収集するとともに、リーフレットや名刺サイズのカードを配布して、Rescue311の広報役も務めた。このカードを見てメールを送ってきた相談者もあったという。

Salesforce.comやFacebookを基盤に活用

 Rescue311で相談者とやり取りするプラットフォームには、サンブリッジの協力で無償で提供されたSalesforce.comを活用していた。そして、それをバックアップする医師間の情報交換には、Facebookが活発に利用されているという。

 Rescue311ではまず、指定されたメールアドレスに空メールを送信すると問診票が返ってくる。ここに詳細を記入して再度送信すると、Salesforce.comに登録される仕組みだ。画像ファイルも添付できるので、言葉では伝わりきらない部分も把握できる。

 ボランティアで参加している医師は、当直制を組んで問診票を閲覧し、返事を送る。レスポンスは迅速で、最初の返信メールを返すまでの時間は平均して23分。このファーストタッチの後、より詳しい説明を記したメールが送られる仕組みだ。「先日も、夜中の1時だというのに一生懸命返事を返しました」(順天堂大学医学部総合診療科 福田洋医師)。

 このプロセスのバックエンドでは、Facebookを活用した。担当した医師は相談者に返事を書くと同時に、Facebookに経過を記入する。すると、それを読んだほかの医師が「これはああじゃないか、こうじゃないか」などと、それぞれの見地からコメントを寄せるという具合だ。内科、小児科はもちろん、精神科や婦人科、歯科口腔科など幅広い医師が参加しており、Facebookがバーチャルな「医療カンファレンス」の場となっていた。

 「Salesfoce.comの何がいいかというと、1通の相談メールを、携わっている医師全員が見ることができる。それがオーディットになっている。密室にならずにいろんな科の先生が相談に対応できるところがよかった」(福田医師)。

 携帯電話だけで完結するというシンプルさ、手軽さもあって、Rescue311にはこれまでに150件以上の相談が寄せられた。「医者にかかるほどではないけれど、でもつらい」「どうにも不安やストレスを感じて仕方ない」といった被災者の不安をすくい取り、現地での医療支援を補完してきた。相談を利用した被災者からは、「『誰かが気に掛けてくれている、見守ってくれている』という安心感が、勇気、励みにつながります」という声があったという。

(@IT 高橋睦美)

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