統合管理とアプリの導入・運用が焦点

IBMのシステム新製品「PureSystems」はどこまで革新的か

2012/04/12

 IBMは4月12日(日本時間)、サーバ、ストレージ、ネットワークが一体化したシステム「IBM PureSystems」を世界同時に発表した。日本IBMでは「ITの歴史を変える」「ITの歴史の転換点となる」などと表現しているが、ハードウェア、ソフトウェアともに驚くべき技術が投入されているという感じは受けない。それよりも、他のサーバ/システムベンダが取り組みきれていなかった分野に切り込んだことが、この製品の特徴だ。「IBM WebSphere CloudBurst Appliance」のコンセプトをベースに、これをさまざまな角度から強化したものと表現してもよさそうだ。IBMでは「エキスパート・インテグレーテッド・システム」という新しいカテゴリを切り開くとし、その第1弾としてPureSystemsを投入したと話している。

 PureSystemsは2種類の製品で構成される。「IBM PureFlex System」(5月21日出荷開始)と「IBM PureApplication System」(8月1日出荷開始)だ。この2つは、IBMが「IBM Flex System」と呼ぶ共通のハードウェアを用い、これに仮想化ソフトウェアのレイヤまでを統合したもの(つまりクラウドサービスでいえばIaaS)がPureFlex System、アプリケーションミドルウェアまでを統合したもの(クラウドサービスでいえばPaaS)がPureApplication Systemだ。PureApplication Systemには、ミドルウェアとして「IBM WebSphere Applicatoin Server」「IBM DB2」の無制限ライセンスが組み込まれている。

puresystems01.jpg PureSystemsは2つの製品で構成される

 Flex System、つまりハードウェアについては後で触れるが、一般的な大型のブレードサーバにスイッチ、ストレージを追加したものと考えればよい。IBMがPureSystemsで差別化ポイントとしているのは、ハードウェアではなく、アプリケーションまでをカバーした管理、導入、運用の効率化だ。これを実現する具体的な機能は2つに大別される。統合管理、そしてアプリケーション導入・運用の省力化だ。

ハードからアプリケーションまで1つのツールで管理

 PureSystemsではまず、統合管理ツール「IBM Flex System Manager」が大きな特徴となっている。この管理ツールで、当初は4シャーシ、近い将来は16シャーシのPureSystemsを一括管理できるようになるという。Flex System Managerでは、複数レイヤ、複数プラットフォームの管理を統合的に行える。

 PureFlex Systemに搭載されるFlex System Managerでは、サーバ機の運用監視、ストレージのボリュームの切り出し、ネットワークスイッチの設定から、仮想化ソフトウェアの設定、仮想マシンの運用管理までが行える。PureApplication Systemに搭載されるFlex System Managerでは、上記に加えてミドルウェア/アプリケーションまでの統合管理が可能。すなわち、あるアプリケーションがどの仮想マシンに載っていて、どのストレージボリュームに置かれているか、ネットワークの設定はどうなっているかを確認したり、設定したりできる。ハードウェア、仮想化ソフトウェアの管理にそれぞれ専用管理ツールを使うといった必要がない。ちなみに、Flex SystemにはインテルのXeon、IBM Powerの2種類のCPUブレードがあり、Flex System Managerでは物理と仮想(PowerVM、VMware vSphere、Hyper-V、KVM)を混在管理できるという。

 こうしたマルチ仮想化プラットフォームをカバーする垂直統合管理がIBMの目指す方向だが、実際には限定がある。現時点では、統合管理の対象となる仮想化ソフトウェアはPowerVMとKVMのみという。

ノウハウを組み込んだパターンでアプリケーション導入を省力化

 アプリケーション導入・運用の省力化は、PureApplication Systemに搭載される。WebSphere CloudBurst Applianceを進化させたような機能を提供する。すなわち、アプリケーションに最適な、ミドルウェアを含む構成が「パターン」として提供され、目的に応じたパターンを適用することで、設計や構成の手間を省くことができるという。このパターンに、IBMの専門家のこれまでの経験からくる知見が組み込まれているというのが、今回の製品の最大のウリだ。IBMが新カテゴリとして提示する「エキスパート・インテグレーテッド・システム」の「エキスパート」という言葉は、この専門的知見を意味している。

 「パターン」の意味を、記者発表で日本IBMは下図のように説明している。IBMとしては、Webアプリケーション、データマート、OLTPデータベースといったパターンを提供する。記者発表の場では細かな説明をあえて避けたと思われるが、IBM developerWorksサイトに掲載された資料では、「Vitrual Application Pattern」「Virtual System Pattern」といった異なるパターンが利用できると記述されている(アプリケーションの仮想アプライアンスとしての提供自体も、3つ目のもっとも抽象度の低いパターンだとIBMでは説明している)。多少長くなるが、この「パターン」が新製品のもっとも重要なポイントだと考えられるため、同資料の記述の一部を本記事の末尾に引用する。

puresystems02.jpg 日本IBMが説明した「パターン」の意味

 パターンはIBMのみならず、ソフトウェア提供ベンダも提供できる。Webサイトの「IBM PureSystems Centre」では、IBMおよびパートナーが提供するパターンがリストされ、ダウンロードして即座に使えるようになるという(執筆時点では、掲載されているパターンはない)。米国などでは、このサイトで、パターンのみならずアプリケーションの仮想アプライアンスも購入できるようにしていくとのことだ。だが、日本ではビジネスモデルの問題から、仮想アプライアンスのダウンロード販売が本格的に実施される可能性は低いという。

 ユーザー組織が自らパターンをつくることもできる。これによりアプリケーションの標準化を進めやすくなるという。

ハードウェアは一般的なブレードサーバに近い

 Flex Systemのハードウェアは、10Uのブレードシステムだ。最多で14のCPUノードを挿せるようになっている。CPUノードにおけるCPUの選択肢は、POWER7とIntel Xeon。今後は別のCPUを搭載するCPUノードを提供の可能性も示唆している。Flex Systemsは一体型のアプライアンスだが、コンポーネントの選択肢はかなり広い。ファイバチャネルスイッチではQLogicかブロケードかを選択可能。InfiniBandの選択肢も用意している。ストレージは現在のところStorwize V7000のみを選べる。Storwize V7000はストレージ兼仮想化装置。配下のストレージを仮想化し、ボリュームを論理的に切り出せるため、Flex System Managerによる統合管理がやりやすいといえる。なお、現在のところStorwize V7000はFlex Systemのシャーシに収まるようになっていない。シャーシに収まる製品は今後提供予定という。IBM PureFlex Systemの最小構成の標準価格は税別で2350万円。これはQLogicのファイバチャネルスイッチを使ったもので、ストレージやネットワークスイッチを含むがCPUノードは含まれていない。

puresystems03.jpg Flex Systemの構成

 下記が、IBM developerWorksサイトに掲載された、「パターン」に関する資料の記述の一部だ(翻訳は記者による)。

シナリオ:virtual system patternを使った場合

かなりシンプルなWebサービスアプリケーションをクラウドにデプロイしたいとしよう。これをvirtual system patternで実現しようとすると、おそらくあなたはWebSphere Application Server Hypervisor Editionのイメージからのパーツを使い、トポロジをレイアウトすることから始めることになるだろう。これに例えばデプロイメント・マネージャ、2つのカスタムノード、そして1つのWebサーバを組み合わせるかもしれない。

トポロジを確立したら、Webサービスアプリケーションをインストールし、このアプリケーションが依存するすべてのリソースを構成するカスタムスクリプトパッケージを追加する。するとこのバーチャルシステムパターンでデプロイしたいユーザーは、これにアクセスし、WebSphere Serverのセルネーム、ノードネーム、仮想リソースの割り当て、カスタムスクリプトのパラメータなどの設定詳細を入力して、デプロイを行う。

デプロイが終わったら、ユーザーはこの環境とミドルウェアのインフラに、これまでと同様にアクセスできる。つまり、管理スクリプトを走らせたり、デプロイしたミドルウェアスクリプトの管理コンソールにアクセスしたり、その他の通常の構成に関するあらゆるアクションが行える。

同じシナリオ:virtual application patternを使った場合

上記と同一のWebサービスアプリケーションをサポートするためにvirtual application patternを使った場合、デプロイおよび管理の双方の観点から、明らかに異なるエクスペリエンスとなる。

virtual application patternによるアプローチの場合、ユーザーはまずアプリケーションのタイプに基づいて適切なvirtual application patternを選択する。これはIBMの提供する「IBM Workload Deployer Pattern for Web Applications」(というパターン)かもしれないし、アプライアンスに組み込まれた拡張メカニズムを使ってユーザーが作ったパターンかもしれない。

適切なパターンを選択したら、ユーザーはWebサービスアプリケーションを提供し、ポリシー設定を通じて機能要件および非機能要件を定義し、デプロイする。

virtual application patternおよびIBM PureApplication Systemは、ミドルウェアインフラとアプリケーションそのものをインストールし、構成し、統合するのに必要なナレッジを提供する。いったんデプロイが終わると、ユーザーはその後のアプリケーション環境を、大幅にシンプル化した見え方で管理できるようになる。そのアプリケーションに適したコンテキストで、環境のモニタリングおよび継続的な管理ができる。

このことが意味するのは、通常管理コンソールは使われず、ユーザーは環境のうちよく定義された部分のみを変更できるということだ。これは、ミドルウェアアプリケーションのデプロイメントおよび管理の考え方を大幅に塗り替えるものだ。

(@IT 三木泉)

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