他社製品も合わせたビジネスで販売パートナー支援

EMC、Vblockとは異なる仮想化インフラ「VSPEX」を発表

2012/07/09

 EMCジャパンは7月5日、「EMC VSPEX(ヴイスペックス)」が同日販売・出荷開始されたことを発表した。VSPEXとはEMCのストレージと、他社のサーバやネットワーク機器、ソフトウェアを組み合わせたもの。用途、規模に応じて最適な構成をEMCが検証、これを販売パートナー各社がパッケージ化して提供する。販売パートナーにとっては自社の扱うサーバやネットワーク製品と組み合わせて、一体化した製品に近い売り方がしやすくなるわけで、これはEMCのパートナー重視の取り組みの1つでもある。

 VSPEXをEMCジャパンは、「実証されたインフラストラクチャ」と呼ぶ。EMCが販売パートナーに対して提供するのは、いわゆる「リファレンス・アーキテクチャ」(推奨される構成の詳細情報)および、サイジング/構成に関するガイド資料だ。これに加えてEMCジャパンは、マーケティング支援、販売インセンティブ、検証・デモのための同社施設、金融サービスを提供。販売パートナーの活動を側面支援する。

 VSPEXのリファレンス・アーキテクチャは、図のようにVMware vSphereによるプライベートクラウド、Hyper-Vによるプライベートクラウド、Citrix XenDesktopによるデスクトップ仮想化、VMware Viewによるデスクトップ仮想化の4つの用途で、規模に応じた推奨構成を示している(このうちVMware View用の構成は今後提供)。販売パートナーはこれをもとに、各顧客に合わせたカスタマイズを行って納入する。販売パートナーは、EMCと自社との共同ブランドでVSPEXを提供できるため、自社ブランドの認知度を高めることができるともいう。では、ユーザー組織にとってのメリットは何か。(通常1社の製品によって構成される)仮想化パッケージに比べれば、導入における手間や時間がかかる可能性がある(各社の製品を独自に組み合わせるよりは短期に構成が可能とも考えられる)。一方、製品ベンダ選択や構成で、ユーザー組織は自社のニーズにより細かく適合したものを入手しやすくなるともいえる。

emc01.jpg 現在は4つの用途で、仮想マシン数に応じた規模の推奨構成を提示
emc02.jpg 例えばXenDesktopでは、図のような構成が示されている

 リファレンス・アーキテクチャを提示するに当たり、EMCはヴイエムウェア、シトリックス、マイクロソフト、シスコ、インテル、ブロケードと提携。これら各社の製品との組み合わせた構成を示している。EMCは以前より、シスコ、ヴイエムウェアと「VCE」という連合をつくり、「Vblock」という仮想化ソリューションを提供しているが、VSPEXはこれとは異なる。Vblockは大規模環境を主なターゲットとしている。さらに大きな違いは、こちらはほとんどパッケージ商品だということだ。当初はAcadiaという名前で設立されたVCEという企業がコントロールし、かなり固定的な構成で仮想化インフラを一括提供・サポートする。一方VSPEXは販売パートナーが構成し、納入やサポートも行うため、柔軟性は高い。

 EMCジャパンでは販売パートナー経由での売り上げを増やすための活動を、この数年活発化している。ストレージ市場が、より安価なローエンド製品にシフトしてきていることも背景の1つ。シェアを拡大するには、販売パートナーの力を最大限に活用することが、ますます重要になるというのがEMCの現在の考え方だ。VSPEXの提供も、EMCの製品だけでなく、他社の製品も合わせて、販売パートナーが付加価値を発揮できる機会を与えることで、最終的にはEMC製品の売り上げ増を狙うやり方だといえる。

(@IT 三木泉)

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