SAPジャパンが2012年上半期事業説明会を開催

SAPの業績が世界的に好調、HANAが市場をけん引

2012/08/30

 SAPジャパンは8月29日、報道関係者向けの記者会見を実施。同社 代表取締役社長 安斎富太郎氏が2012年上半期の進ちょく状況と、今後の戦略を説明した。SAPグローバルでは第2四半期のソフトウェア売上が前年同期比26%増で過去最高に。SAPジャパンも6四半期連続で二桁成長を遂げ、上半期売上総額が同23%増の3億6000万ユーロで好調だった。

世界的に売上好調なSAP

安斎氏写真 SAPジャパン 代表取締役社長 安斎富太郎氏

 安斎社長は冒頭、SAPが世界的に好調な売り上げである点をアピール。ワールドワイドではソフトウェア関連売上が10四半期連続で二桁成長を続け、第2四半期には過去最高の10億ユーロを突破したという。サポートを含めた上期の関連売上高は57億7000万ユーロ、上半期売上総額は前年同期比15%増の72億7000万ユーロにのぼった。

 この背景について安斎氏は、「全体的に好調だが、やはりHANAの牽引が大きい。地域別では、欧州アフリカ地域が前年同期比17%増、北南米が同26%増、APACが同24%増。世界的に見てもアジア地域は好調だったと言える」と分析した。

 SAPは全社的な重点戦略として、従来のERPやBIに加え、HANAを中心としたデータベース、クラウド市場へ積極的に参入・投資している。昨今の好業績は、既存のSAPユーザーがERPを中心として、BIやデータベースにもSAP製品を導入している点が大きいと言う。

SAPジャパンの成績も好調。HANAの躍進がけん引

 SAPジャパンも好調だ。2011年1月から6四半期連続で二桁成長が続き、第2四半期のソフトウェア関連売上高は、前年同期比25%増の1億7100万ユーロ、総売上高は同27%増の1億9500万ユーロだった。上半期計では、それぞれ3億1500万ユーロ、3億6000万ユーロ。

 ソフトウェアの中でも特に好調だったのがデータベースやHANAを中心としたモバイル関連だ。上半期のデータベース売上高は前年同期比74%増、モバイルは5.3倍にまで伸びていると言う。また、安斎氏が社長就任以来進めているパートナービジネスも好調で、同47%増だった。

 「データベースもモバイルも、既存ソフトウェアに比べればベースの売上高が少ないので伸び率が大きく出やすいとはいえ、非常に好調なことに間違いはない。特に日本では、HANAに関して世界を大きくけん引している。日本はこれからもこの分野でけん引して、存在感を示していきたい」(安斎氏)と日本の傾向を分析した。

最近影が薄いERPも二桁成長で好調維持

 安斎氏は、「最近SAP製品では、HANAが注目を集めていることから、ERPの印象が薄くなりがちだが、ERPも好調で二桁成長している」と説明。特に、グローバル展開を検討している企業にとっては、SAP ERPがやはり標準として検討されるケースが多いと言う。

 データベースの分野では、やはりSybaseとHANAが中心となってビジネスを拡大。HANAは富士通、日立、IBM、HPなど主要8社がアプライアンスサーバを提供しており、現在国内30社強、ワールドワイドでは500社以上が導入済みとした。それに伴って、HANA関連のアプリケーションを開発するエンジニアも増加中で、SAP HANAトレーニングを受講したエンジニアが1000名を突破した。

 現在、SAPではHANAを中核としたSybaseとの製品統合ロードマップを発表しているが、すべての機能をHANAに統合するか、HANAをプラットフォームとし、その上でSybaseを残すかについては、社内でまだ検討段階だという。

 また、一時期ユーザー企業との間で問題が発生していた製品サポートも、サポート料金を改定したり、商品改定を実施して試行錯誤を繰り返した結果、前年同期比28%増で好調。最上級サポートサービスでフルサービスを受けられる「SAP MaxAttention」は、同29%増で非常に好調だとした。その背景として、安斎氏は「一時期、サポート料金が高い、という話しも出ていたが、実際に当社のフルサポートサービスを受けてみると、それによって社内エンジニアの工数が大幅に減り、トータルでのメンテナンスコストが大幅に減った企業が多かった。このトータルでのメンテナンスコスト削減に気付いた企業がフルサポートサービスに変えるケースが増えてきている。コストが下がり、サポート品質が上がったことで、満足度としては平均点で10点中9点をもらっており、高評価を得ている」と説明した。

世界に通用する人材を輩出したい

 安斎氏は、社長就任後1年の間に250社以上の顧客を回った結果として「世界から、日本は意思決定が遅い、トップダウンができない、と言われることが多い。しかし、自分の感覚では、日本は意思決定に合議制を採用し、要求もボトムアップで上がるケースが多いからだ。合議制は確かに意思決定は遅いが、その分、全員が納得済みで決定するため、その後の浸透が速かったりする。また、ボトムアップならではの良さもたくさんある。これはどちらが良いか、という優劣の問題ではなく文化の問題だ。日本に合ったやり方というものがあるのだと確信した」と市場を分析。

 一方で、「日本人エンジニアや社員は非常に優秀だが、世界的に主張が弱く認められていない部分も多い。今後は積極的に人材を世界に輩出し、世界に通用する人材を育てていきたい。例えば、APJで日本は大きな存在だが、APJトップに日本人がなっていない。この点を懸念し、ドイツ本社に日本のサテライトオフィスを設立するなど、積極的に海外に人材を出していく予定だ。HANAについても、米国に日本人を派遣し、共同開発することで日本市場の声を大きく反映させている。2013年初頭にはERPをHANAに乗せた製品をリリースしたい」と今後の抱負と方針を語った。

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(@IT 大津心)

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