「オープンな標準の意図的な悪用を容認しない」と投稿

Apache開発者、IE 10の「Do Not Track」設定を無視するパッチ公開

2012/09/12

 米MicrosoftがWindows 8に搭載するInternet Explorer 10(IE 10)の「Do Not Track(DNT)」機能をデフォルトで有効にしたことに反発して、Apache HTTP Serverの開発者が、IE 10のDNT設定を無視するためのパッチを公開した。

 パッチを公開したのはApache開発者のロイ・フィールディング氏。「Apacheはオープンな標準の意図的な悪用を容認しない」とタイトルを付けている。このパッチを適用すると、Apacheで構築されたサーバがIE10からDNTの通知を受け取った場合でも、その通知が無視されるようになる。

 DNTはWebサイトによる行動追跡拒否の意思を示す機能で、Microsoftは6月に、IE 10ではデフォルトでこれを有効にすると発表していた。その理由について「ユーザーのことを第一に考えて決定した」「あまりに多くのユーザー情報がオンラインで収集される時代にあって、Windowsユーザーのプライバシーがデフォルトで守られるようにする」と説明している。ユーザーが望めば自分でDNTを有効にすることもできる。

 これに対してフィールディング氏は「DNTの唯一の存在意義は、非デフォルトで選択を表明することにある。それがすべてだ。パーソナライゼーションよりもプライバシーを優先したい実在の人間が設定したものと受け手が認識しない限り、誰のプライバシーも守られない」と論じている。

 Microsoftの主張については、「IE 10のDNTをデフォルトにしたことは、ユーザーのプライバシーとは関係ない。誤ったシグナルは無視されるものであり、従って、たとえユーザーが望んだ場合でも、ユーザーによる効率的なDNTのオプション行使の妨げになることは、Microsoftも十分承知しているはずだ」と述べた。

 DNTについてはW3CのTracking Protection作業部会で標準策定作業が進められているが、フィールディング氏はMicrosoftが同作業部会の一員でありながら、意図的にその標準を破ったと主張。「仕様の変更を提案することもできたのに、そうしなかった」と批判した。

 フィールディング氏のパッチについては賛否両論の意見が寄せられている。また、IE 10のDNTデフォルト化をめぐっては、Firefoxを提供しているMozillaもMicrosoftの発表の直後に、「DNTは考案された当初から、追跡されたくないという個人の選択を表明することを目的としている。ソフトウェアメーカーではなく、実際に画面に向かっている人間によって行われた選択を表すことが重要」と指摘していた。

(@IT 鈴木聖子)

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