つぶやきや検索トレンド、報道、位置情報など基に検証

災害時に情報が果たす役割を明らかに、ビッグデータワークショップ開催

2012/09/13

 Twitter Japanとグーグルが幹事を務める東日本大震災ビッグデータワークショップ運営委員会は、9月12日から、「東日本大震災ビッグデータワークショップ」を開催する。ワークショップへの参加を希望する研究者や企業、団体、開発者に、パートナー各社からの「震災時の情報」を提供。震災やその後の原発事故に関する情報が、インターネットやマスメディアを通じてどのように発信され、流通したのかを分析、検証し、今後の災害対策に役立てる考えだ。

 東日本大震災では、テレビや新聞といったマスメディアでの報道に加え、Twitterをはじめとするソーシャルネットワーク上でも被災した個々人がさまざまな情報を発信し、共有した。それらが避難や救援活動に役立った一方で、複数のデマが飛び交ったことも事実だ。

workshop01.jpg 東北大学災害科学国際研究所 副所長 今村文彦氏

 ワークショップに研究チームとしても参加する東北大学災害科学国際研究所 副所長の今村文彦氏は、「地震や津波のメカニズムに関する科学的なデータは存在し、研究が進んでいるが、その当時、人がどのように動いたのか、社会現象を理解するためのデータは十分ではなかった」と指摘。震災の際には、短時間に、非常に多様で信頼性にもばらつきのあるさまざまな情報が流れたが、それらを多様な視点から解析することで、「次に災害が発生した際に、情報をどのように利用し、必要なものを付け加え、減災につなげていくかが課題だ」と述べた。

 東日本大震災ビッグデータワークショップには、幹事の2社に加え、データ提供パートナーとして、朝日新聞社、JCC、ゼンリンデータコム、日本放送協会(NHK)、本田技研工業、レスキューナウが参加し、データを提供する。例えばTwitter Japanは震災発生当日から1週間分の日本語ツイートデータ(1.8億ツイート、容量は約30GB)を、グーグルは時間推移や地域比較も含めた検索キーワードのトレンドを、朝日新聞は7日分の記事を、JCCやNHKは7日分のテレビ放送要約文/音声書き起こしと頻出ワードランキングを提供する、といった具合だ。

 「例えば、GPS情報にひもづいたゼンリンの混雑統計データを利用すれば、個人がどう行動して避難したか、あるいは不幸にしてどこで被災したかが分かる。また、自動車による避難は重要な役割を果たすが、渋滞や避難の遅れも生み出していた。HONDAのインターナビ通行実績マップデータを解析すれば、どんな影響を及ぼしたかが分かるかもしれない」(今村氏)。

 基本的にワークショップが提供するのはデータのみで、分析/解析用ツールは、研究に取り組む側が独自に用意することになる。10月28日には、研究の成果や途中経過を発表する報告会を行う予定で、それまでの間、2〜3回、参加者ミーティングなどを実施する。

 同ワークショップへの参加を希望する団体は、Webサイトで申し込みを行う。グーグルのシニアエンジニアリングマネージャー、賀沢秀人氏は、「研究者だけでなくソフトウェア開発者や社会分析、社会心理をやっている人など、幅広い人に参加してほしい」と述べ、産官学、企業や個人の区別なく参加を呼びかけた。さらに、参加者間の共同研究にも期待しているという。「次の災害に向けて一体となってタッグを組む練習だと思っている」(賀沢氏)。

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 今回の取り組みから得られた知見は、新しいサービスのプロトタイプ開発に役立てる方針だ。「個人の発信するツイートとレスキューナウの鉄道情報やライフライン情報、それに道路の状況などを分析すれば、人が正しい避難経路にたどり着くプロセスが見えてくるかもしれない。それを地図上にマッピングするといったサービスができれば、役に立つかもしれない」(Twitter Japan ビジネスディベロップメントディレクター 牧野友衛氏)。

 グーグルの賀沢氏は、「分析を通じて、実際に何が起きてそれがどう伝わったか、そしてどうアクションしたかが分かると思う。そこで情報がどんな役割を果たしたのかも明らかになるだろう」と述べた。もし、重要な情報なのにアクションにつながっていなかったものがあれば、具体的な行動につなげるにはどのように伝えればいいかを考えるヒントになるし、信頼性のある情報とデマ情報を見分けるヒントも見つかるのではないかとした。

 「災害には必ず、情報の『空白期間』が生じる」と今村氏は指摘。それがどのタイミング、どのエリアで生じ、何を伝えれば役に立つのか、またTwitter上のつぶやきなどの情報に、何を加えれば信頼性が高まるのかといった事柄を明らかにし、「情報」の役割を明らかにしていきたいとした。

(@IT 高橋睦美)

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