[Analysis]

次世代無線の本命は? パワードコムの決断

2005/05/31

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 パワードコムの代表取締役社長兼CEO 中根滋氏に5月24日、インタビューした。記事に書いたように中根氏は電力線通信(PLC)への本格参入を検討することを表明。同時にiBurst(アイバースト)やWiMAXなど新しい技術の採用を検討していることを明らかにした。NTTやKDDIを始め、通信会社のトップが新しい技術の採用を正式発表前に表明するのはあまり例がない。現在走っている自社のビジネスモデルを破壊することにもなるからだ。新技術の積極採用は、通信業界にしがらみがない中根氏の面目躍如ともいえる。

 iBurstは高度化PHSとされるTDD/TDMAの通信方式を利用。通信速度は下り最大1061Kbps、上り最大346Kbps。国内では京セラが実証実験を行っている。すでにオーストラリアでは京セラが提供する基地局、端末を使って実サービスを展開中。南アフリカでもサービスが始まった。中根氏は「iBurstはつなぎっぱなしで利用できる点に注目している」と述べた(参考記事、その1その2その3)。

 WiMAXはIEEE802.16として標準化されている技術。話題になっているのは固定間通信の802.16-2004と、移動体通信の802.16e。802.16-2004は最大75Mbpsの高速通信と、長距離通信が可能。802.16eはデバイスを移動させながら通信ができ、2005年秋にも標準が策定される予定だ。パワードコムは鷹山などとWiMAXのフィールド実験を始める予定だ(鷹山の発表資料:PDF)。

 中根氏はこれらの無線通信技術を自社のインフラのエッジで利用することを考えている。もしくは携帯電話などデバイス間での通信だ。インタビューの中で中根氏は、海外事業者のサービス展開を例に挙げて「無線通信を油断してはいけない」と述べた。日本の通信会社の動きが遅いと、海外の通信会社や通信機器ベンダに新技術のコアを持っていかれる恐れがあることに注意を促した格好だ。

 とはいってもパワードコムもすべての技術に手を付けることは不可能だ。パワードコムの2004年度連結決算は増収増益となったが、特別損益の計上で当期純損益は838億円の赤字だった。どの技術を採用するのか、中根氏の見極めが重要になるだろう。

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