[Analysis]

携帯電話の次の戦場はMVNOか

2006/11/06

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 MNP(携帯番号ポータビリティ)開始直前にソフトバンクモバイルが発表した新料金体系について、シンプルとはいえないことと、コンテンツ課金中心のビジネスモデルを目指す動きが見えないことにがっかりしている人は存在するだろう。

 ただし今回は、ADSLのときとは訳が違う。事業として成立しているものを引き継ぎ、株主や債権者を納得させながらビジネスとして継続成長させていくためには、見通しの描けない賭けはできないということなのかもしれない。

 しかし、移動体通信ビジネスの戦国時代は始まったばかりだと考えた方がいいだろう。次の大きな戦場となるかもしれないのはMVNO(仮想移動体通信事業/事業者)だ。

 MVNOは、移動体通信事業者の通信インフラを利用し、自社ブランドでサービスを提供するビジネス形態を指す。コンテンツブランドを生かして参入する米ディズニーのような例があるほか、データ通信サービスの再販を行っている例もある。いずれにしても、MVNOでは、事業リスクは基本的にMVNO事業者が負う。

 現在はウィルコムのPHS通信インフラの卸売りを受け、定額料金によるデータ通信サービスを提供している日本通信は10月末、「3G携帯電話事業者との話し合いが付き次第、MVNOサービスを開始する」という異例の発表を行った。

 日本通信は、国内の3G移動体事業者が3社ともまだ接続条件を公開していないため、MVNOを提供したいと考えている企業も事業計画が立てられないと批判する。一方で、3Gで高速化が進められたデータ通信インフラが現状では有効活用されていないとし、特にデータ通信のMVNOは既存の移動体通信事業者にとっても大きなメリットがあると主張する。

 このことを一番よく分かっているのは移動体通信事業者の方だろう。直接的にリーチしきれない潜在顧客層や潜在用途に働きかけるためには、ロイヤルティの高い多数の顧客を確実に囲い込んでいる企業を活用しない手はない。

 トヨタ自動車はKDDIと共同で自動車との連動性を高めた携帯電話端末を開発し、10月下旬より販売している。これに似た、さまざまなビジネスモデルによるサービスは今後どんどん登場してくるに違いない。

 現在の携帯電話ビジネスに関する議論は、1人1端末までを前提として、限られたパイをどの事業者が獲得するかということが焦点になっている。しかし、携帯電話端末(あるいは移動体通信機器)を1人2台、3台と持つ時代が来ると考え、あるいはそれを実現するにはどうすべきかを考えれば、現在とはかなり異なった光景が見えてくる。

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