XenServerとマイクロソフトの関係[Analysis]

» 2008年02月04日 00時00分 公開
[三木泉,@IT]

 米マイクロソフトがいよいよ本格的なサーバ仮想化技術の展開を始める。その一方でXenSourceの買収を機に、サーバ仮想化ソフトウェア「XenServer」を2008年の新事業と位置付ける米シトリックスシステムズの動きも気になる。シトリックスだけがXenをベースに事業をしているわけではないが、既存ビジネスとの整合性や企業体力によって、この事業を大きく伸ばす可能性があるからだ。

 シトリックスは、サーバ仮想化が即座に同社の中核事業の1つになることを期待しているわけではない。同社は1月23日の業績発表で、2008年度(シトリックスの会計年度は1〜12月)におけるXenServer関連の売り上げが約5000万ドル、2009年度は約2億ドルになるとの見通しを改めて認めた。シトリックスの2007年度の全社的売り上げは13億9000万ドルなので、XenServer関連事業の貢献度は2009年度においても微々たるものとなる。一方、サーバ仮想化製品がビジネスの大部分を占める米ヴイエムウェアの2007年度における売り上げは、シトリックスの売り上げとほとんど同じ13億3000万ドル。ヴイエムウェアの売り上げ数値からは、どれだけサーバ仮想化市場が大きなものに育ったか、そしてシトリックスの2008年度におけるXenServer関連事業の売上目標からは、5億ドル規模の買収が目に見える成果を挙げるまでの道のりの長さを垣間見ることができる。

 それでもシトリックスの既存のビジネスと、XenServerは親和性が非常に高い。デスクトップの仮想化(サーバ上で仮想マシンとしてデスクトップOSを走らせ、これをシンクライアントからリモートで使う形態)はサーバ仮想化ソフトウェアの重要な応用分野の1つであり、ヴイエムウェアも力を入れているところだ。実際にシトリックスの「Presentation Server」とヴイエムウェアの「Virtual Desktop Infrastructure」(VDI)は、技術的な方式が異なるものの、シンクライアント・ソリューションとしては競合し、あるいは使い分けられ始めている。

 シトリックスにとって、シンクライアント市場における自社の地位を将来にわたって確保していくという観点から、ヴイエムウェアのVDIと同じデスクトップ仮想化ソリューションを品ぞろえすることは重要な意味を持つ。シトリックスはすでに自社パートナー1000社程度をXenServerでも認定したといい、これらのパートナーがPresentation Serverとの組み合わせでXenServerによるデスクトップ仮想化ソリューションを展開することで、XenServer事業の当初の立ち上げに貢献することが期待できる。

 しかし、デスクトップ仮想化はサーバ仮想化の適用分野の1つでしかない。サーバ統合からデータセンター管理の自動化につながる分野では、どう存在感を示していくのか。

 ここでシトリックスとマイクロソフトの提携関係が意味を持ってくるということのようだ。サーバ仮想化のメインストリーム市場はWindows Serverと、その上のアプリケーションにある。言い換えればサーバ仮想化を大きなビジネスに育てるには、何らかの形でマイクロソフトと折り合いをつける必要がある。ではマイクロソフトとヴイエムウェアの関係はどうか。マイクロソフトは現在のところ、自社の製品が他社のサーバ仮想化ソフトウェア上で使われることを積極的にサポートしておらず、逆にライセンス上の制限を加えている。

 1月下旬、シトリックスとマイクロソフトは仮想マシンの移行と管理に関する包括的な提携を発表した。これによりシトリックスが、マイクロソフト製品に関するライセンス面でヴイエムウェアよりも有利な条件を獲得するならば、安心感を求める企業はヴイエムウェアからシトリックスに流れる可能性もある。もちろん、マイクロソフトがこうした差別的な待遇を行うつもりなのか、さらにそれが許されるのかは別問題だが。

 シトリックスの、「Windows絡みで商売をするならマイクロソフトのお墨付きを得なければならない」というスタンスは、冷徹といえば冷徹だ。一方ヴイエムウェアの、「自分たちはWindows Serverを使いやすくすることで商売をし、マイクロソフトもそれによってOSの売り上げが減るわけではないのに、なぜマイクロソフトは自分たちを認めてくれないのか」という言い分も分かりやすい。XenServerがサーバ仮想化プラットフォームとして今後どれだけ伸びるかは、現在のサーバソフトウェア市場を握るマイクロソフトの出方によって、大きく左右されそうだ。

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