注目され、買収されるBI業界[Analysis]

» 2008年03月03日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 2月26日にSAPとビジネスオブジェクツ(BO)が共同の記者会見を開催した。SAPがBOを買収したことを受け、今後の日本における戦略などを両社社長がそれぞれの立場で語った。今後両社は製品連携などを強化していくものの当面は製品統合などは行わず、BOは独立ブランドで製品のリリースを継続していくという。その背景には、ビジネス的な配慮に加え、ビジネスインテリジェンス(BI)が非常に期待されている面も伺える。

 ここ数年、BIの有力企業が相次いで買収されている。先述のようにBOがSAPに買収され、ハイペリオンはオラクルに、コグノスはIBMに買収された。これらの企業がBIベンダを買収したのは、「企業内のデータが日々爆発的に増加しているものの、それらを有効活用できていない」というニーズに応えるため、といった点が大きい。米ガートナーなどのアンケート調査でも、ここ数年CIOが注目するアプリケーションの第1位はBIだ。「データが溢れかえっていて、収拾がつかない」というのが多くの企業の課題になっている表れともいえる。

 買収側の企業は、ERPやデータベースなどデータをインプットする側のアプリケーションを提供しているが、アウトプットする側(BI側)が弱かった。各部署に散らばっているデータを有効活用するためには、各種アプリケーションが持つデータソースからデータを集めてデータウェアハウス(DWH)などに蓄積し、その中のデータをマイニングして必要なデータを選別する。そして、そのデータをさまざまな切り口で加工し見える化する、という流れが一般的だ。この工程の中で、データクレンジングや見える化の部分に特に注目が集まっているようだ。

 ベンダによって得手不得手があるが、BIはデータマイニングやデータの見える化が主な役割だ。増加するデータの中から、必要な情報だけを取り出し、ユーザーが欲する切り口のデータを分かりやすく提供することが求められている。しかも、限りなくリアルタイムにだ。従来であれば、一晩かけてバッチ処理していたデータマイニングを数時間〜数十分で結果を出すことが求められ、環境によってはこれを実現しているという。

 このように、データのアウトプットが重視されるようになってきたことから、買収側の企業はBIベンダを買収し、自社製品との連携やチューニングを強化し、高速化などを図ることで他社との差別化を目指している。前述のSAPも、そのような連携を図っていくだろう。ただし、BOの場合には買収前からSAP以外の製品との連携をウリにしており、現在も売り上げの60%はSAP製品を導入していない企業だという。従って、ビジネス的にSAPに完全に取り込むことは難しいようだ。それでもSAPから見ると、BO製品やBI分野はうまみがあるという。

 今後、ますますBIの重要性は増していき、それにともない、その前段階に必要なDWHなどにも注目が高まっていくと予想される。

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