リーマンのIT部門を野村ホールディングスが買収、その影響は[Analysis]

» 2008年10月06日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 破綻した米証券大手、リーマン・ブラザーズのインドのバックオフィス拠点を日本の野村ホールディングスが買収すると10月6日に発表した。アジア・太平洋地域、欧州地域に続き、リーマンのビジネスを支えたバックオフィス部門の買収は、日本のITサービス企業にも影響を与えるだろう。

 リーマンはインド・ムンバイと、ムンバイ郊外のポワイに拠点を構え、証券決済などのバックオフィス業務やビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)、ナレッジプロセスアウトソーシングと呼ぶ調査業務、さらにITシステムの開発業務を2005年から行ってきた。人員総数は約3000人。エンジニアはそのうち、1200人を数える。

 グローバル展開する金融機関やITサービス企業が、インドにオフショア、アウトソーシングの拠点を構えるのは一般的になりつつある。その中でも金融業界はインドの活用が進んでいる。インドのメディア「Business Standard」の記事によるとインドのITサービス企業の売り上げの80%は米国や英国の企業から発生し、特に銀行や証券、保険などの金融業からの売り上げは全体の40%以上を占めているという。インドの優秀なエンジニア、本国と比べたコスト削減効果を活用し、最先端のITシステムを開発している。金融機関は業務の高度化に比例してITシステムへの投資を近年、増大させてきた。ITに投資することで収益が向上するため、金融機関を「新たな設備産業」と呼ぶ声もあるほどだ。

 リーマンのインド展開はその中で目立っていたようだ。リーマンは3000人規模の拠点を構えると同時に、年間55億〜70億ルピー(約119億〜152億円)をタタ コンサルタンシー サービシズやインフォシス、ウィプロなどのITサービス企業に支払っていたという。

 多くの金融機関やITサービス企業が進出する事実が示すように、インド企業のシステム開発能力は定評がある。「英語が話せるプログラマ」という初期の評価はとっくに脱して、IT業務全体を任せられるという評価が欧米企業では定着しつつあるように思う。米国ソフトウェア企業のトップとして活躍するインド人エンジニアの姿は完全に定着した。リーマンのインド拠点の買収には、野村のほかに欧米の証券会社やインドのITサービス企業もその技術力に着目して名乗りを上げているようだ。

 結果的には破綻したが、世界最先端のITシステムを開発する能力を持つインド拠点を、日本企業が買収した。野村自身のIT開発能力の向上も期待できるだろう。野村は日本国内のITサービス企業にもインドと同様のレベル(技術力、提案力、コスト)を求める可能性があるし、もし応えられないようならインドでの開発にシフトするだろう。

 

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