[Analysis]

日本でもiPhone一社独占販売体制に終わりの予感?

2011/03/02

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 あるルートから入手した、1月に作成されたiPhoneの販売数に関するソフトバンクモバイル(SBM)の内部資料に触れる機会を得た。そこでは、iPhoneの販売実績や2011年度の販売計画に加え、NTTドコモがiPhoneを導入した場合の販売台数減なども予想している。

 それによると、2011年度もSBMがiPhoneを独占販売した場合、予測販売台数は470万台(新規267万台、機種変更203万台)を達成する見通しだ。一方、NTTドコモもiPhoneを導入した場合、SBMの販売数は252万台にまで激減するとある。つまり、SBMによる独占販売が終了すると、218万人のユーザーがドコモに流れるという予想が一部にあるわけだ。また、SBMからドコモへの流出だけでなく、ドコモが新たに356万台の新規iPhoneユーザー(=他機種からの乗り換えも含む)を獲得するとも予想されている。

 この資料では、iPhoneがSBMとドコモの両オペレーターから販売された場合、2011年度の販売台数は826万台に達するとしている。つまり、少なくともソフトバンクの一部では、2011年度のiPhoneの予想販売台数は……

  • SBM独占=470万台
  • SBM非独占=826万台

と分析しているようだ。

 さてここで、もしあなたがスティーブ・ジョブズならどうするだろう? ジョブズ氏でなくとも、多くの経営者が後者、すなわち非独占を希望するだろう。

迫るAndroid陣営がAppleの方針を変える?

 日本におけるスマートフォン(スマホ)の出荷実績では、依然としてiPhoneが強い。しかし、ドコモやauもスマホのシェアを獲得するために「多額のインセンティブを付けて」(携帯電話販売会社幹部)、なりふり構わぬ販売戦略を展開している。そのため、iPhone対Androidという見方をすると、2010年12月のシェアはiPhone=30%、Android=70%(同資料より)となり、破竹の勢いだったiPhoneも完全に劣勢だ。Androidの足音は確実にiPhoneの背中を脅かそうとしている。

 ドコモがiPhoneを導入するに当たって最大のハードルは、Appleが“上納金”など強気の条件を要求する点にあるといわれている。孫正義氏は、2010年4〜12月期の決算説明会でメディアに対し「Appleとの契約は最初から独占契約ではない」と明言している。それだけに、ドコモ版iPhoneが実現しなかった背景には、Appleの強気要求を受け入れられなかった、という状況があったのが実際のところであろう。だが、国内に限らず、世界的にAndroid端末が増殖する中、Appleとしてもいつまでも強気の態度を維持できるとは思えない。

 ご存じのようにAppleのお膝元の米国ではAT&Tの独占体制に終止符が打たれ、その後、Verizon Wireless版のiPhoneも好調に販売数を伸ばしている。これなども、Android陣営に対する危機感から、Verizon Wirelessとの契約に際しAppleが条件のハードルを下げて間口を広げた結果だと予想できる。

 以前ジョブズ氏の片腕だった、ある通信会社の幹部が筆者にいった。「Appleは交渉力に長けた会社なんだよね。これまで音楽業界やパソコン流通に一石を投じることができたのは、その力があったから」と。

 つまり、相手の出方や案件を取り巻く環境変化などを子細に分析し、自社に有利な条件を戦略的に提示しながら、押したり引いたりで巧みに交渉を進める、というのだ。ならば、ここ日本でもAndroidの勢いが増したいま、ドコモに対し強気一辺倒の態度で臨むようなことはなく、ドコモとの契約実現に落としどころを求める可能性も否定できない。

 その一方で、auがiPhoneを導入してくるという可能性もある。CDMA2000に対応したiPhoneが米国で登場したことで、同じ通信方式を使うauへの期待も当然のように高まっているからだ。ただ、「周波数帯が合致しないので無理」「auのCDMA2000には独自仕様が搭載されているから無理」などといった意見も飛び交っており、au版iPhoneの動向に関しては、主に技術的な懸念事項を根拠として肯定派と否定派に二分されている。

 ただしKDDIの田中社長は、2月28日の新機種発表の席で、メディアの質問に答える中でau版iPhoneの可能性を探るヒントとも受け取れる物言いをしている。「具体的な端末名には言及しない」と付け加えた上で、「CDMA2000のグローバル端末であれば技術的に導入可能」といった趣旨の発言をしている。

 CDMA2000版のiPhoneが田中社長のいうグローバル端末としてのスペックを満たしているのかどうかは分からない。この発言をして、au版iPhoneの登場と結び付けるのはかなり強引ではあるが、日本においても、SBMによる事実上のiPhone一社独占販売体制が終わりを告げようとしている予感をヒシヒシと感じるのだ。

(山崎潤一郎)

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