テクノロジで世の中を変えるために

日本のIT人材をホワイトカラーからITカラーに転換しよう

2011/09/14

これは、ガートナー リサーチ バイス プレジデント 兼 最上級アナリストの亦賀忠明氏が語った内容を、@IT編集部で書き起こしたものです。

 8月末に、米国で開催されたユーザー向けのベンダイベント、VMworld 2011に参加した。毎年恒例のイベントになっているが、最近、気になっているIT人材のあり方について注意して見てみると、改めて、ITに対する人々の考え方、取り組みが、日本と米国で全く異なると思った。

 米国では、ベンダの責任者は、イノベーションの重要性を懸命に語り、なぜ、われわれが変わる必要があるのか、どうやって変えるのか、どんな新しいテクノロジを作ったのか、将来がどうなるのか、そうしたことを熱く語る。これを単なる新たな儲けのための話とみることもできなくはないが、やはり、テクノロジで世の中を変えたいという思いが彼らを強く動かしていることに気がつく。

 参加者は、一生懸命その意味を探り、それが本物かどうかを見極め、そうであると判断した場合、それを実践し、チャレンジすることで、新たな実績を作ろうとする。

 ここに、ベンダとユーザー企業の間で、共通のゴールが生まれる。新たなテクノロジで世の中を良くするということである。

 一方、日本では、ほとんどのベンダやインテグレータの経営者や役員にとって、新しいITは基本的に新たな儲け話だけになっているように見える。グローバルのトレンドを受け、新しそうなテクノロジを紹介し、似たようなものを作ろうとする。ここで、テクノロジでモノゴトを良くしたいという真剣さは、彼らから伝わることは残念ながらほとんどない。またIT部門の人々の多くも、基本的に、業務システムを変えたくない、もしくは、簡単に変えられないと思っているようで、自分たちがリードするというよりも、ベンダやインテグレータに提案させるべきことはないかを探っている。ベンダが提案してきたら、これを評価するという姿勢で臨み、特別のコスト削減を求める。ベンダやインテグレータはそれに対して、お金が欲しいこともあり、ユーザーの下請けのように振る舞う。

 こんなことでは、日本の企業ITはよくならないし、その効果もほとんど出ない。最悪は、有能なIT人材が日本からいなくなることである。

 米国のIT人材は、ホワイトカラーではなく、それぞれが独立したプロフェッショナルとしてのITカラーであることに改めて気がつく。そもそも米国には、すでに、日本で語られるホワイトカラーなどはいないのではないか。

 ITカラーの人々は、イノベーションを楽しみ、できるだけ賢いやり方で世の中を変えることに喜びを持つ。新たなテクノロジと頭を使ってモノゴトを良くすることはITカラーにとってのモチベーションであり、アイデンティティである。テクノロジを使った賢いコスト削減も、この意味では彼らの楽しみだ。賢くない、面白くない、単なる押し付け仕事をやりたくないのは世界どこでも同じである。

 日本のITに関わる人々も、サラリーマン的なホワイトカラーから、テクノロジで世の中をよくするITカラーに転換しよう。そのほうが、世のためになるし、精神の健康にもよいことである。経営者を含むリーダーも、社会の人々も、こうした人材を大事にしよう。また、そうした機運を高めよう。クラウドコンピューティングやビッグデータに代表される新たなテクノロジの時代の到来に伴い、こうした人々は、これからの企業のビジネス競争と社会の豊かさにとって欠かせないはずだから。

(ガートナー 亦賀忠明)

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