[コラム:Spencer F. Katt]
偽情報を転送するのは止めてね

2002/11/6


 世の中のありとあらゆるジャンキーメールを調べ上げ、その正体を暴くデビッド・エメリーのWebサイトが、もし資金不足で立ち行かないということにでもなるならば、連邦政府は絶対に援助の手を差し伸べるべきだろう。

 何年か前、ビル・ゲイツが開発した新しい電子メール追跡システムのテストに参加すると、「ビルとウォルト・ディズニー・ジュニアが先着1000名をディズニーランドに無料招待する」というチェーンメールが出現した。そのとき、偽情報のウソを暴く彼のWebサイトを知って、吾輩は非常に面白い試みだと思った。

 そして9月11日の同時多発テロのあと、吾輩はそうした偽情報を含む電子メールがいかに危険で有害であるかを再認識するとともに、“腎臓売買業者”(*1)のようなメールを他人に転送する人々は将来、テロリストの攻撃に対するミスインフォメーションや根拠のない恐怖を撒き散らすことになる、とかつて本コラムで指摘した。

 実際、ボストンのレストランやショップ、ナイトクラブは、2001年9月22日に同市がテロリストから攻撃を受けると警告する「友だちの友だちからのメール」によって、経済的に大打撃をこうむった。また先のハロウィンでは、全米でどれくらい多くの人々が同じような警告のメールを真に受けて、ショッピングモールの店主たちを困らせただろう?

 最近、吾輩はエメリーのWebサイトで、プロモーション用に使う『忠誠の誓い』(*2)から「神のもとに」という語句を落とそうとしたとしてペプシ製品のボイコットを叫ぶメールと、アル・ゴア上院議員がイラン・コントラ事件の公聴会で、当時、最も危険な男はオサマ・ビンラディンだという証言を嘲笑したというメールの真偽を確認した。で、分かったことだけど、どちらのストーリーも完全な作り話であるばかりでなく、過去何度となく流通したインチキメールの焼き直しに過ぎなかったね。

 それにしても、人々はいまだに印刷物であろうとオンライン情報であろうと、自分の読んだものを信じ込み、いかにもそれが信頼できそうな内容だという注釈を付け加え、誤った情報を友人に転送する傾向がある。そうしたミスインフォメーションで、ペプシが実際に売り上げを落とし、ゴアが票を失うかどうかは分からないけど……。

 しかし、吾輩はこうアドバイスしたいね。転送するのは、笑えるジョークか、ちょっと品のないJPEGだけにしとこうよ。

 それはさておき、マイクロソフトがアップルだけには絶対負けたくないと思っていることは、いまや秘密でもなんでもない。今回もレドモンドは、アップルのとぼけた広告ガール、エレン・フェイスの対抗馬を用意した。それは同社のPocket PCマーケティングマネジャー、ベス・ゴザだ。彼女のホームページの“意識の流れ的”Blog(Web日記)は、なかなか笑わせてくれるね。

@IT編集局 谷古宇注釈:

*1【“腎臓売買業者”(kidney harvesting)】
一時期、SPAMメールで大流行した米国の都市伝説。
ある男が出張先のバーで仲良くなった人と酒を飲んだ。泥酔し、気が付くとホテルの浴室で寝ていた。ふと違和感を覚え、背中に手をやると、ホースが生えてる。目の前には、「911(救急車)」に電話するよう書かれたメモが1枚。電話をして状況を伝える。救急隊員は冷酷に言い放つ。「あなたの腎臓はなくなっていますよ」。彼は臓器売買業者に腎臓を抜き取られていた。

*2【忠誠の誓い】
2002年6月、サンフランシスコの米連邦控訴裁判所が、米国の学校で、生徒が星条旗に忠誠を誓う言葉に「神のもとの国」とあるのは違憲、だとする判決を下した。連邦法によって定められている誓いの文句に「神のもとに」という言葉が含まれているため、憲法の政教分離原則に違反するという判断だった。政界、宗教界を巻き込んだ大論争に発展したのは記憶に新しい。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Forwarding Faux Info Is a Step Backward

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