[コラム:Spencer F. Katt]
メールを振りかざす騎士

2004/4/13


 ペンは剣より……というか、この場合、電子メールは剣より強し、になるのかな。吾輩は、ビル・ゲイツがマイクロソフトの顧客に送信した勇ましいセキュリティ・アップデート・レターにざっと目を通して、そんな感想を持った。Trustworthy Computing構想を提唱する名誉大英勲章第2位(Knight Commander of the Most Excellent Order of the British Empire)のサー・ビル・ゲイツは、メールの中で、まもなくリリースする「Windows XP Service Pack 2」を大げさに宣伝するとともに、罪のない人々を未知のワーム伝播者にしてしまう悪魔の手先たちと戦うレドモンドの勇敢な技術陣を手放しで賞賛していた。

 「まあ、ビルは頑張っているみたいけど」と吾輩の友人はいう。「IT部門は大変だよ。ウイルス・ライターが次々とWindowsに攻撃をしかけてくるし、それ以外にも日常的に頭の痛い問題がいくつも持ち込まれるからね」。マンハッタンのビストロで何杯目かのマティーニを飲み干したあと、友人はこう続けた。「企業はいつも新しい問題に直面する。無知な従業員がIT部門にだまってWAP端末をプラグインする、なんて不意打ちを食らうことも少なくない。心得違いの従業員がセキュリティに気を使うはずもない。彼らは、ほかの電話機と同じようなものだと気楽に考えているんだな」

 セキュリティの玄人を自認する友人の愚痴を聞き流しながら、吾輩は5杯目のマティーニをあおり、もうすぐ記事が書き上がる、と編集者にインスタント・メッセージを送った。すると、それをみていた友人は、「IMサービスだって安全じゃないんだぜ」と笑った。事実、「Jitux」と呼ばれる比較的害の少ないウイルスが最近、米国以外のいくつかの国で、マイクロソフトのインスタント・メッセージング・ネットワークを経由して多くのコンピュータに感染を広げた。どうやらセキュリティのエキスパートが危惧するように、IMウイルス・ライターは確実に増えているようだ。それにIMなら、吾輩のような無自覚なお調子者に偽のポルノ画像をクリックさせる必要はない。いや、吾輩は得体の知れないファイルをクリックして、みんなに迷惑をかけたことはない、と思うが……。

 一方、IMジャンクメールも大きな問題として浮上してきた。SPIMは、スパムと同様、ISスタッフの最近の関心事だ。なにしろ企業のIMメッセージは着実に増加しつつあるからね。

 吾輩が席を立つ前、友人は、以前から身売り話のあったアプリケーション・セキュリティ・ベンダのサンクタムが、コンピュータ・アソシエイツに買収される可能性を強く否定していると教えてくれた。同社は身売り先を探していること自体は否定しないが、CAとダンスを踊る計画がないことだけは、はっきりさせておきたいようだ。

 タクシーの後部座席の窓を開けたとき、携帯電話が鳴った。知人からの情報提供だった。彼の話によると、ラップトップ・ユーザーが待ち望んでいた製品がまもなく登場するという。どこかの駅で大切なノートブックを紛失した英国のスパイ・エージェントも、自分のラップトップをどこに置いたか忘れちゃった大手電話会社の社長も、この製品さえあれば救われるというのだ。ユタ州に本拠を置く小さなソフトウェア会社が、紛失あるいは盗難されたラップトップを発見するためのLojak(盗難車追跡システム)タイプのデバイスを開発中であるらしい。ふーむ。製品名は、やはりLapjackとでも?

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
A Knight E-Rant

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