[コラム:Spencer F. Katt]
IBMがグルーブ・ネットワークス買収を目論む?

2005/2/8


 「おそらくここで凍死しても、この状況じゃ誰も気にも留めないだろうな」。猛烈なブリザードの中、吾輩は凍えながら雪かきをしていた。ここニューイングランドでいま唯一ホットな話題といえば、ペイトリオッツがジャクソンビル(スーパーボウル)進出を決めたことくらいなものだ……。

 憂鬱(ゆううつ)な気分になったのは、この大雪のせいだった。IBM Lotusphereの取材でオーランドへ飛ぶ予定だったのに、ブリザードがすべてを吹き飛ばしてしまったのだ。雪はショベルでかき出しても、次から次へと降り積もる。「これじゃ、シシュフォスの苦役のほうがまだましだ」と思ったとき、吾輩のケータイから“Cold, Cold Heart”のメロディが流れた。不毛な作業を一時中断する口実が、ようやくできた。

 受話器から聞こえてきたのは、悪友の声だった。どうやら彼はフロリダで開催されたビッグブルーのイベントに乗り込むことに成功したらしく、吾輩の心の凍傷に岩塩を擦りつけるような電話をかけてきた。雪かきに日焼け止めは必要か、と散々からかわれたあと、彼はLotusphereで聞いたというウワサを教えてくれた。その内容は、グルーブ・ネットワークスの買収を目論んでいるのは、一部で取りざたされたマイクロソフトではなく、実はIBMらしい、というものだ。

 このウワサは、グールブのCEO、レイ・オジーがイベントで重要な役割を担ったことから、おそらく1人歩きしたものだろう、と友人は分析する。オジーがやって来たのは、Notes開発20周年とNotes 1.0のリリース15周年を祝うためだ。彼は、まるでロックスターのようにオープニング・セッションに登場し、Notesの将来像を模索するパネルにも参加したという。ただし友人の話では、Notesの将来バージョンにオジーが関与することはなさそうだ。複数のIBM関係者が友人に語ったところによると、今回、オジーが顔を見せたのは、単なるセレモニーに過ぎないという。むしろ注目すべきは、Dominoユーザーや一元管理を好むIT管理者の間で、今後、Workplaceリッチ・クライアントとWorkplace Designerがポピュラーなツールになりそうなことだ、と友人は話した。

 電話を切ったあと、吾輩は凍てついた身体を解凍するために、部屋に戻って暖かい飲み物を用意した。するとほどなく、ポートランド在住のペンギンから電話があった。オレゴン州のPR会社が、「オペレーション・オープン・ゲイツ」というタイトルのケタ外れに豪華なメディア・インビテーションを出したそうだ。IBM、オープンソース・デベロップメント・ラボ(OSDL)、そのほかの“業界大手各社”が共同で、オープン・テクノロジに関する“重要な”記者発表を行うという案内だった。

 インターネット上では、「マイクロソフトによるIP関連の訴訟を回避するため、Linuxカーネルを全面的に書き換える発表ではないか?」との憶測が飛び交ったり、一部プレス関係者の間では、OSDLにリーナス・トーバルズがいるため、「Linuxの特許に関する発表では?」と予想する向きもあった。だが、OSDLの関係者の多くは、そうした記者発表があることさえ知らず、「オペレーション・オープン・ゲイツ」なるものについても、誰も聞いたことがなかった。

 なんのことはない。ふたを開けてみれば、ビーバートン市から120万ドルの助成金を得て、オープン・テクノロジ分野における新興企業の設立や育成、融資を専門的に行う「オープン・テクノロジ・ビジネスセンター」が設立されるという発表だったのだ。OSDLの関係者が友人に語ったところによると、「資金面での貢献と、CEOのスチュアート・コーエンが記者発表に出席して、なにかコメントするように求められただけ。それ以上のことはない」とのこと。どうやらオレゴンの人々は、吾輩よりスノー・ジョブ(言葉巧みに人をだますこと)が上手いようだ。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Snowed Riffs

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