[コラム:Spencer F. Katt]
ピープルソフトの記憶を消そうとするオラクル

2005/7/5


 「Cisco Networkers」の取材でラスベガスにやって来た吾輩は、さっそくタキシードに着替え、“Luck be a lady tonight……”などと口ずさみながら、ラット・パック(シナトラとその仲間たち)風のクールで自信に満ちたスタイルが売りのルネッサンス・ホテルのロビーを上機嫌でうろついていた。が、このホテルにカジノがないことを知ったとき、予約を入れた総務の連中に「絶対に復讐してやる」と心に誓った吾輩であった……。

 大通りを挟んで反対側に立つラスベガス・コンベンションセンターでは、シスコのCEO、ジョン・チェンバースが基調講演を行っていた。講演中、いつものように会場の通路を巡回するCEOの背後で、聴衆の1人がくたびれたミッキーマウスの人形を振りかざし、人々を爆笑させた。チェンバースは、その悪ふざけに気がつかなかったみたいだけどね。

 それにしても、シスコのCiscoWorksネットワーク管理ソフト・ファミリーは、なぜ人々にミッキーマウスな(陳腐な)ツールだと評価されるのだろう? あるセッション・スピーカーの話では、シスコ社内のネットワーク・オペレーション・チームですら、自社の製品を利用していないらしい。イベント終了後、別のユーザーに聞いても、在庫トラッキング以外で使うことはほとんどないとか。

 ところで基調講演では、ヘルス・ヒーロー・ネットワークの健康診断マシン「Health Buddy」がデモに使われた。患者にあれこれ質問して健康チェックを行う家電製品だが、デモを行っているスタッフに、CEOに監視されてストレスを感じているかという質問を出して人々を大いに笑わせた。

 そんなことより、シスコは新しいパートナー、TIBCOのために、法律問題を解決してくれるマシンを開発すべきかもね。ビジネス管理ソフトを開発するTIBCOは、シスコのApplication-Oriented Networking技術との連携を目指しているが、同社はさきごろ株主集団訴訟を起こされた。TIBCO株が下落したため、投資家たちは同社が提供した不正確な情報によって損害を受けたと主張しているのだ。彼らは、特に昨年買収したスタッフウェアとの統合化を問題視しているという。

 モバイル資産を監視できるシスコの新製品「Wireless Location Appliance 2700」のセッションでは、参加者の1人が、この製品の位置検出機能をオフにすることができるかと質問した。すると、シスコのエンジニアは短く答えた。「もちろん可能です。でもそれなら、この製品を買う意味ないですね」。

 めまいがしたのは、ラスベガスの暑さのせいばかりでもないようだ。吾輩はホテルに戻り、ラウンジのバーでジャックダニエルを注文した。そしてグラスを傾けながら、ふと、集積回路(IC)の発明者でノーベル物理学賞を受賞したジャック・セントクレア・キルビーのことを思い出し、彼の死を悼んだ。81歳だった。

 そのあとバーに陽気な友人が入ってきた。彼は吾輩の横に座るなり、「オラクルはピープルソフトの記憶をすべて消し去ろうとしているようだな」と話し始めた。オラクルは、ピープルソフトが以前買収したJDエドワーズのブランドを復活させたが、友人によると、今度はピープルソフトがCRMビジネス参入のために買収したバンティブの名前も復活させるらしい。

 酔っ払った友人に、もう夜だからこのまま飲もうとしつこく誘われたが、吾輩はシナトラを気取って、「聞いてくれ、クライド。俺にはお前のような友達がほかにもたくさんいるんだよ」とクールにささやいてバーを後にした。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Ol' Blue Eyes Is Back

Copyright(c) eWEEK USA 2002, All rights reserved.

Spencer F. Katt バックナンバー

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)