[コラム:Spencer F. Katt]
人生はカーニバル

2005/7/20


 「吾輩が恐れるもの、それは核戦争とカーニバルだ!」。毎年この時期になると、さまざまな露店が出て賑やかなカーニバル会場となる近所の公園で、吾輩は縄ばしごに絡まりながら悲痛な叫び声を上げた。はしごを登っている途中で、不覚にも縄から足をすべらせ、そこから上に行くことも下に行くこともできず、気がつけば逆立ち状態で身動きできなくなっていたのだ。吾輩は傍らでニヤニヤ笑う競技主催者に悪態をついた。が、よく見るとその男、サンの社長兼最高執行責任者、ジョナサン・シュワルツにそっくりだった。

 そういえば……と、吾輩は頭に血を逆流させながら、先ごろサンフランシスコで開催されたJavaOneカンファレンスの基調講演で、シュワルツが前日の小さなイベントに不恰好な姿で現れた自分自身を笑いものにしていたことを思い出した。

 JavaOneの前にセットされたNetBeans Dayに、NetBeansチームがシュワルツをスピーカーとして招いた。サンフランシスコに住む彼は、そのイベントが比較的小規模で、カジュアルなものだと考えていたため、ヒゲもそらず、髪もボサボサのまま会場に向かった。シュワルツの言によると、その格好はまるで「長い睡眠から目覚めてベッドから抜け出したときの状態」だったという。会場入口に立っていた警備員は、そんな彼の姿を見て、「満員で入場できません」と門前払いを食らわしたのだ。押し問答の末、ようやく会場に入ることができたものの、数百人の聴衆を前にしての無礼な扱いに、シュワルツは憤懣やるかたない様子だったという。そのときの模様は何台かのビデオカメラで撮影されており、あちこちのブログで公開されている。

 吾輩は、なんとか無事エアマットレスの上に着地することができたが、どうしても欲しかった優勝賞品のジム・モリソンの絵が描かれた鏡は、あきらめざるを得なかった。そのあとカーニバル会場をうろついていると、参加者が集まらないのか、縄ばしご早登り競争の主催者たちは、笑顔と恫喝を繰り返しながら、行き交う人々を競技に引き込もうと懸命になっていた。

 それはさておき、JavaOneでは、面白いことにサンCEOのスコット・マクニーリとシュワルツが善玉悪玉コンビの役割を交代していた。いつもなら記者に噛み付いたり、怒鳴りつけたりするマクニーリが、どういう風の吹きまわしか、「顧客とITのグローバル化に対応して、サンもあらゆる勢力と連携しなければならない時代になった」などと上機嫌で語り、マイクロソフトやIBMとの提携を例に挙げ、「もはやサンに敵はいない」とまで言い切った。ところがその横から、いつもは温厚なシュワルツが、「まあ、いまはいないけどね。将来はわからないよ」と口を挟んだ。おそらくレッドハットやHPのことを念頭に置いているのだろう。ここ数年、彼の攻撃の矛先は両社に向けられてきたからね。

 プラスチック製のピエロの口に水を流し込んで風船を破裂させるゲームに興じていたとき、ポケットの携帯電話から「Tears Of A Clown」のメロディが流れてきた。電話をかけてきた友人の話によると、コンピュータ・アソシエイツの不正会計問題をめぐり、取引先の男に370万ドルもの口止め料を支払ったとして、検察当局が元CEOのサンジェイ・クマーと彼の元同僚を追起訴したらしい。大金を受け取った男の名前は、起訴状の中では伏せられているが、特定する唯一の手がかりは、彼の会社が2000年3月にCAと総額2700万ドルのライセンス契約を結んだ事実だけだという。

 景品のヘビのぬいぐるみをゲットしようと風船ダーツに挑戦した吾輩は、あっという間に30ドルを失った。いっそのことブースの女の子を買収してしまおうかとも考えたが、彼女の腕に“Love”と”Hate”(映画『狩人の夜』に登場する悪い伝道師を模しているようだ)という文字の刺青があることに気付き、吾輩は静かにその場を立ち去ったのであった。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Life Is a Carnival

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