[コラム:Spencer F. Katt]
幻のインテル・オンライン・ミュージックストア

2006/3/21


 サンフランシスコで開催されたインテル開発者フォーラムを取材した後、ボストンへ向かう満席の飛行機に乗った吾輩は、途中、「ここも大混雑か」と不満を口にしながら、トイレの前にできた長蛇の列に加わった。

 開発者フォーラムでは、インテルのある首脳が吾輩に興味深い話をしてくれた。なんでも同社には、自前のオンライン・ミュージックストアを展開する計画があったそうだ。「Intel Pocket Concert MP3」というデバイスの発売も予定していたらしい。それらの計画は、アップルがiTunesをWindowsに対応させる1年も前のことだったという。ところがインテルは当時、業界全体がそうであったように、ドットコム・バブルに舞い上がっていた。2001年、オンライン・ミュージックストア計画を発表する直前になって、同社はミュージックプレーヤーを製造する予定だったコネクテッド・プロダクツ事業部を閉鎖してしまった。同事業部はそのほかにも、ついに日の目を見ることなく終わった数々のデバイスを開発していたそうだ。

 飛行機のトイレの前で順番待ちしていると、近くの席でビジネスカジュアルを着こなした2人の男がノベルの話を始めた。それとなく耳をそばだてると、ノベルが「Novell Linux Desktop」の製品名を「SUSE Linux Enterprise Desktop」に変更するらしいという。彼らの話によると、ノベルはLinux関連の全製品を今後、SUSE Linux Enterpriseブランドで統一するそうだ。そういえば、Novell Linux Desktopはもともと買収したジミアンが開発していたもので、SUSEエンタープライズ製品群とは若干異なるカーネルで動いていた。どうやら2つのプラットフォームは、ようやく統合化に向かうらしい。

 吾輩は通路からコンドルのようにチノパンをはいた男の座席に覆いかぶさり、おもむろに備え付けの機内電話を取り上げ、ノベル社内の知人に電話をかけた。電話の相手は、「いや、単に技術的な信頼性を製品名に反映させるだけさ」と説明した。ノベルが最近実施したブランド調査によると、Linux製品に関しては「Novell」より「SUSE」のほうがユーザーからの信頼度が高かったのだという。

 機内電話を奪われたチノパンの怪訝そうな視線を無視し、吾輩は話を続けた。ノベルの知人によると、同社はこの夏出荷予定の次期SUSE Linux Enterprise Desktop 10のユーザーインターフェースに、新しいBeagle検索ツールを組み込むそうだ。Beagleはユーザーのパーソナルワークスペースを検索できるツールで、ドキュメントや画像から、最近アクセスしたWebサイト、IMチャットまで、あらゆるコンテンツを検索し、結果を操作性に優れたウィンドウに表示する。

 しかし、とノベルの情報屋は言う。Desktop 10のユーザビリティテストにWindowsユーザーを参加させたところ、誰一人としてBeagleを使わなかったという。その理由をユーザーに問うと、デスクトップ検索ツールの存在は認知していたが、Windowsで使えるとは思っていなかったらしい。「Windows上で機能しないのに、どうやって使えというのか?」という答えが一様に返ってきたそうだ。ユーザビリティチームはテスト内容を変更し、Windowsユーザーにも検索エンジンを利用するように強制したところ、「テストに参加したユーザー全員が驚嘆し、自宅に持ち帰りたいと望んだ」そうだ。ふむ、まるでWindowsのプレスリリースを読んでいるような……。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Wing Tips and Plane Talk; Litterboxlynx

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