[コラム:Spencer F. Katt]
Vista開発が長引く理由は?

2006/5/9


 「本邦初公開! と、いきたいところだが……」と、吾輩は苦笑した。サンディエゴで開催された「マイクロソフト・マネジメント・サミット」では、またしても使いまわしのビデオが上演された。マイクロソフトの上級副社長、ボブ・マブリアの基調講演で使われた映像は、もちろん「スパマロット」などではなかったが、どことなくモンティ・パイソンのコメディに似ているものだった。

 英国マイクロソフトが作成した「We Feel Your Pain(あなたの苦痛を感じます)」というタイトルの、いわゆる“We FYP”ビデオクリップは、もはや古典と言ってもよい。マイクロソフトのソフトウェアが誤動作したとき、ユーザーがWe FYPボタンを押すと、マイクロソフトのプログラマに電気ショックが送られる内容だ。また、まったく役に立たないヘルプデスクのスタッフがオフィスからイジェクトされ、表通りを挟んだ向こう側の池まで飛ばされるシーンもある。

 マイクロソフトの連中がVistaの開発を長引かせているのは、そんな目に会いたくないからかもしれない。

 うんざりすることは、まだ続いた。マイクロソフトのSMS(Systems Management Server)チームのプレゼンテーションがあったのだ。彼らは競合製品の死を悼むために、フード付きのローブをまとって葬式行列のようにステージ上に現れた。そして明らかにされたSMSの次期メジャーリリースの名称は……(ここでドラムロール)……、「System Center Configuration Manager」だった。

 製品名の変更については、マイクロソフト社内で1年以上にわたって激論が戦わされたという。多くの開発者たちは、Hermesという華麗なコード名を持ったSMSの初期開発時代に思いをはせたという。名称変更に抵抗するダイハードな人々は、まるでロドニー・デンジャーフィールドのように、SMSは何年もの地道な修正作業を経て、ついに名声を確立した栄光の製品名だと力説したに違いない。

 そのとき吾輩の携帯電話から、着信を知らせる「Always Look on the Bright Side of Life」のメロディが流れてきた。はるか彼方、マサチューセッツ州ホプキントンで開催されていたEMC Worldに潜入した同僚からの連絡だった。彼の話によると、EMCの中心人物ジョー・トゥッチのQ&Aセッションで、国際メディアの記者が「デスクトップにテラバイトのストレージを期待できるのはいつごろになるか」と質問したそうだ。トゥッチはこう答えたという。

 「いますぐにでも、みなさんをEMCのキャンパスにお連れして、現在開発中のホームおよびデスクトップ向けのストレージ製品をお見せしたい。さまざまなプロトタイプを見れば、われわれがコンシューマ市場にどれほど注目しているか分かるだろう。問題は、市場にどう参入するかだ。EMCはB2Bカンパニーであるため、コンシューマ・チャネルに強いパートナーを見つける必要がある。われわれ単独では参入しない。最も可能性の高い方法は、“インテル・インサイド”のように、他社と手を組み、EMCの技術とソフトウェアを有償で提供することだろう」

 電話を切ったあと、吾輩は「スティングレイ」というバーに忍び込んだ。そこで落ち合った業界動向に詳しいコンピュータ技術者の話によると、CAの前CEO、サンジェイ・クマーは、近く開廷する不正会計疑惑裁判で罪状を認めるらしい。また噂によると、クマーはアイスホッケーチーム「ニューヨーク・アイランダー」の株を3分の1、仕事上の師と仰ぐチャールズ・ワンに売却するとか。裁判費用の拡充に当てるためだろう。もっとも彼自身、もう十分氷の上で過ごしたと思っているだろうけどね。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
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