[コラム:Spencer F. Katt]
レッドハット不在のLinuxWorld

2006/8/29


 「そんな冷たいこと言わないで」と、吾輩は編集長にすがりついた。しかし彼は冷酷にも、吾輩の願いを言下に拒否した。エルビス・プレスリーの死を悼み、毎年メンフィスで開催されるエルビス・ウイーク(2006年8月で29回目)は、吾輩にとって厳粛な祭日なのだ。それなのに奴は、ただちにサンフランシスコへ飛ぶよう吾輩に命じた。LinuxWorldを取材するためだ。

 悲嘆に暮れながらハートブレークホテルにチェックインしたあと、吾輩はほかの多くの人々と同様、LinuxWorld会場にレッドハットの姿がないことに驚愕した。オープンソース・コミュニティからの追い風を受けて名を成した会社だというのに……。

 レッドハットは会場にブースを設営せず、赤い帽子をかぶったエグゼクティブたちを真新しいセントレジス・ホテルのスイートルームに篭城(ろうじょう)させ、一部のプレス関係者やパートナー企業だけを招待してカクテルパーティを開くなどしていた。オープンソース・コミュニティの人々は、そうしたやり方に唖然(あぜん)とするばかり。長年、レッドハットのブースで自社製品を展示してきた小さなパートナー企業も、同社の真意を測りかねていた。

 そういえば、ここしばらく業界では、「オラクルがLinuxWorldで、レッドハットの製品をベースとする独自のLinuxディストリビューションを発表する」という憶測(おくそく)が流れていた。レッドハットがフロアスペースを買わなかった理由はそれだろうかとも考えたが、結局、オラクルからそうした発表はなかった。吾輩はレッドハットのCTO、ブライアン・スティーブンスを捕まえ、LinuxWorldにブースを出さなかった理由を問い詰めた。

 「今年はとくに大きなテーマもないしね。それ自体が興味深いテーマではあるけど。出展を取りやめたのは、われわれが最初じゃないだろう。IBMも去年あたりからLinuxWorldには出てないんじゃなかったっけ」とスティーブンスは答えた。吾輩があとでビッグブルーの広報担当に確認したところ、同社ではブースの規模こそ縮小したものの、「LinuxWorldには毎年必ず参加し、現在も有力スポンサーとしての地位を維持している」との回答だった。

 それはともかく、スティーブンスにもう1つの質問をぶつけてみた。オラクルがレッドハットの製品をベースに独自のLinuxディストリビューションを開発している、という噂についてだ。彼は、「オラクルがそんな製品を開発しているかどうかは知らないが、だからといって、していないとも言い切れない」と話した。さらに、レッドハットがオラクルに買収されるかもしれない、との憶測があることについて質問すると、真紅の帽子をかぶったCTOは、「われわれのビジネスが現在も軌道に乗り、成長し、拡大している事実は、その噂が嘘であることを証明している」と応じた。

 なんだか赤い帽子で目がチカチカしてきた吾輩は、早々に取材を切り上げ、いつものように「サースティ・ベア」へ向かった。そこで吾輩は、東海岸から戻ったばかりというCAウォッチャーの1人とグラスを傾けながら情報交換した。彼の話によると、CAがSECに提出した最新の報告書を見れば、いまだに巨額な支出が同社のボトムラインを脅かしていることが分かるという。同社は最近、アイランディアとマンハッタンをシャトルするエグゼクティブ専用ヘリコプターの発着場を新設したらしい。「それが行き過ぎた浪費だということを誰も指摘しないのかな?」と吾輩が言うと、彼は、「CAの報告書によると、マンハッタンからアイランディアまで通勤する上級役員の1人に、少なくとも月5000ドルの通勤費を支払っているらしいよ」と教えてくれた。「そりゃ電車通勤でないことだけは確かだな」と吾輩は苦笑した。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
The Case of the Missing Red Hat

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