[コラム:Spencer F. Katt]
マイクロソフトが投げたオリーブの枝

2006/9/26


 そのニュースを聞いて吾輩は思わず、“Could it be the whole earth opening wide?”と、デュラン・デュランの「A View to a Kill」の一節を口ずさんだ。リンデン・ラボのオンライン3Dゲーム「Second Life」が、ハッキングの被害を受けたらしい。同社の仮想世界を管理するデータベースがクラックされ、ユーザー65万人分の個人情報が危険にさらされた模様だ。

 が、おそらくハッカーたちは、デュラン・デュランがSecond Life内で仮想コンサートを開くと聞いて、攻撃を中止し、仮想コンサート会場に向かって駆け出した違いない。なにしろ仮想世界じゃ最強のバンドだからね。

 などと考えていると、キャットフォンから着信音に設定していた「Union of the Snake」のメロディが流れてきた。電話をかけてきた友人の話によると、マイクロソフトがオープンソース陣営の足元にオリーブの枝(和平提案)を投げたようだ。レドモンドのワイルドボーイズは、さきごろWebサイトで「Open Specification Promise」という宣言文を発表した。それは今後、マイクロソフトのさまざまなWebサービス仕様について、ライセンス契約や訴訟の心配をすることなく、開発者が自由に利用できることを宣言するものだ。

 友人はまた、マイクロソフトのビジネス・ソリューション部門のトップ、ドーグ・バーガムが2007年6月に退社する意向であることも教えてくれた。バーガムは、2001年にマイクロソフトに吸収されたグレート・プレインズ・ソフトウェアの創業者だ。現時点で退社後の計画はとくにないという。彼の後任には、ビジネス・ソリューション部門の副社長、サトヤ・ナデラが有力視されている。

 電話を切ったあと、飢えた狼のように空腹であることに気付いた吾輩は、昼食をとるためにダウンタウンの「ザ・フォアズ・レストラン・アンド・スポーツ・バー」へ向かった。そこで偶然にも、ハインズ・コンベンション・センターで開かれた「セキュリティ標準会議」に出席するためボストンに来ていたハッカー対策専門家の旧友と遭遇した。で、その友人から聞いた話だけど、シスコの最高経営責任者、ジョン・チェンバースは聴衆に向かって、「仮想セキュリティは外部からのウイルスを自然に撃退する人体のような仕組みを模倣するべきだ」と力説したそうだ。「人体に対する攻撃は、たいてい認識されることさえない」と、チャンバーは指摘したという。なるほどね。でも、ネットワークが人体解剖学的に機能するとしたら、今度はバッファ・オーバーフローではなく、定期的な生理現象で悩むことになるだろうな。2皿目のナッチョ(メキシコ料理)を平らげながら、吾輩は大声で笑った。

 「セキュリティ分野で他に面白いニュースはないか?」と吾輩が水を向けると、旧友は業界の最新動向を語り始めた。「そうだな。電子決済や電子署名のプロバイダとして知られるアルコット・システムズが、アドビとなにやらコラボレーションするらしい。近々発表されると思うけど、両社共同でAdobe Acrobat 8ユーザー向けのシンプルな電子署名システムを提供するみたいだね」

 吾輩が意を決してグリーンモンスター・ハラペーニョに取り掛かろうとしていると、暗号オタクの友人は、イーベイのCOO、メイナード・ウェブがセールスフォース・ドットコムの取締役に指名されたことを話題にした。さらに友人は、不正経理問題をめぐるCAの前CEO、サンジェイ・クマーへの判決言い渡しが10月12日になることも教えてくれた。CA社内では、サンジェイに懲役5年程度の判決が下されるだろうとの見方が広まっているそうだ。もっとも、彼らが1カ月35日のカレンダーを使っているかどうかにもよるけど。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Breach Causes Second Strife

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