[コラム:Spencer F. Katt]
期待を裏切らないバルマー

2006/10/24


 「Windows Liveソフトウェアは“クリック・ツー・ラン”になる」というマイクロソフトのCEO、スティーブ・バルマーの売り込み文句を聞いて、吾輩は思わず「Tramps like us, baby, we should click to run……」と、スプリングスティーン風に口ずさんだ。

 ガートナーの「Symposium/ITxpo」を取材するため、フロリダ州オーランドのドルフィン・ホテルのコンベンションセンターにやって来た吾輩は、ヒューレット・パッカードの「HP――会社の名声がビジネス・パフォーマンスを左右する」というテーマのセッションを発見して爆笑した。最近、スパイ・スキャンダルが発覚した同社だけに、取締役会のメンバーを尾行するための暗視ゴーグルや無人偵察機のデモでもやるのかと思った。

 尾行といえば、サミー・パルミザーノはどこへ行ったのだろう? このところIBMトップの目撃情報が激減しているのだ。そのうちIBMは、出張や講演のために、ディズニーに頼んで本物そっくりのアニマトロニック・サムでも作ってもらわなきゃね。そのIBMだが、海外の従業員向けに仮想世界サイト「Second Life」上で、同社初の仮想ブロック大会を計画しているそうだ。サムもきっとバーチャルで登場するだろう。

 会場の隅のテーブルに用意されていたスナック菓子をポケットに詰め込んでいると、出席者の1人が、「グーグルのYouTube買収で、レドモンドは戦々恐々だろうな」と声をかけてきた。口に放り込んだエクレアをクチャクチャさせながら、「買収が成立した日に、マイクロソフトがYouTube対抗の動画共有サイト、Soupboxの宣伝メールを大量に発信した事実は、何かを物語っていると思うね」と吾輩は応じた。

 そのとき、キャットフォンが鳴った。かけてきたのは、ペンギン・マニアの友人だった。彼の話によると、シマンテックとセーファー・ネットワーキングの緊張関係がエスカレートしているらしい。昨年12月以来、シマンテックはことあるごとに、セーファー・ネットワーキングのSpybotがNortonを破壊する可能性があると非難している。「両社が加盟しているアンチスパイウェア連合は、もうすぐ国連の治安維持部隊投入を要請することになるかもしれん」と友人は話した。

 「ところで2003年ごろ、マイクロソフトがLinuxの台頭を妨害するため、ベイスター・キャピタルを裏であやつり、SCOに5000万ドルの投資を実行させたという噂が流れたのを憶えているか?」と友人は続けた。「Groklaw.comの情報によると、ベイスターのエグゼクティブ、ゴールドファーブが宣誓供述で、その投資をマイクロソフトが“保証”したと述べたそうだ。証言はさきごろ、IBMとSCOの裁判の中で出てきたらしい。もっともマイクロソフトは、ゴールドファーブの証言を否定しているけど」

 先ごろ亡くなったノベルの創業者、レイ・ノーダに敬意を表してグラスを傾けようと会場を後にしかけた吾輩だったが、またしてもスティーブ・バルマーの数々の迷言ビデオ集を再生したくなった。今回もまた、娯楽や検索ビジネスへの本格進出を固く誓ったバルマーは、「ただ口を開けていても、骨は空から降ってこない」と力説し、「われわれは進み続けなければならない。前へ、前へ、前へ前へ前へ前へ前へ」と、まるで熱病にうなされたかのように叫び続けたのだ。まさに“モンキービデオ”に匹敵する新作だ。ガートナーのアナリストは、「ははは。もう1つお気に入りのビデオができたな」と笑った。

*Spencer F. Kattのコラムは毎週月曜日(月曜日休日の場合は火曜日)の更新予定です

[英文記事]
Ballmer Has Magic Moment

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