Spencer F. Katt

空から落ちたドメインレジストラ

2007/04/09


 “Come fly with me, let’s fly, let’s fly away……”と歌ったのはシナトラだが、ドメイン名登録業者でホスティングサービスなども提供しているRegisterFly.comを相手取り、集団訴訟が起こされたというニュースを聞いて、吾輩はそんな懐かしいメロディを口ずさんだ。

 今回の訴訟では、RegisterFlyのサービスにさまざまなクレームが頻発しているにもかかわらず、同社を公認の登録業者のまま放置したとして、ICANNも“職務怠慢”で訴えられている。インターネットに詳しい友人に電話して今回の訴訟の詳しい背景を聞いてみた。どうやらRegisterFlyでは、この2年の間、システムトラブルからドメイン名の出し惜しみ、登録情報の紛失、移管や更新手続きの無視、会社資金の不正流用など、とんでもない問題が相次いで表面化しているらしい。

 なにしろRegisterFlyの創業者であるケビン・メディナとジョン・ナルツェビクツが、会社の経営権をめぐって対立し、互いに相手を刑事告発するなど激しくいがみ合っているらしいのだ。裁判所は、メディナが顧客の支払った登録料のファンドを引き出し、エスコートサービスや脂肪吸引手術を受けたり、マイアミのペントハウスやペットのチワワを購入したと断定。それに対してメディナは、ナルツェビクツが会社の金で自宅や高価な家具を購入したと反撃している。

 悲しいことに、そうしたドタバタ騒ぎの中で、多くのユーザーがドメイン名を失ったり、アクセスできなくなってしまったという。ニュージャージー州のRegisterFly本社が入居するビルは3階建てなのだが、案内板では4階と表示されているらしいけど。

 電話を切ったあと、吾輩はボストン在住の老技術者と一杯飲みながら情報交換することにした。吾輩がジャンボ・マティーニをズルズルと流し込んでいると、老技術者がグーグルに関するウラ情報を1つ教えてくれた。どうやらボストン、おそらくケンブリッジあたりにメジャーな拠点をもってくるらしいのだ。そうなると入社希望者たちは、面接に行くのにグーグルマップをチェックする必要がなくなるね。MITの学生なら、グーグルのキャンパスまでブラブラ歩いて行けるに違いない。

 老技術者はまた最近、投票マシンメーカーのディーボルドがマサチューセッツ州を訴えたことを話題にした。同州がディーボルドの製品ではなく、ライバルのオートマーク・テクニカル・システムズの投票マシンを購入すると決定したことに不服を申し立てたのだ。この破れかぶれの訴訟は、もちろんオートマーク製品の導入阻止が目的だ。裁判でディーボルドの販売プレゼンテーションがいかに素晴らしい出来栄えであったかを訴え、判事からマサチューセッツ州に対して、正気に戻ってディーボルド製品を購入するよう命じてもらいたいらしい。フラれた男が涙目で……というところか。

 われわれはもう1杯注文してから、今度はWikipediaを肴に2人で笑いこけた。なにがおかしいって、Wikipediaはいまだに信頼性という点でトラブルを抱えているようだね。実際、自分たちの歴史に関してでさえ、マユツバものなのだ。というのも最近、新しいオンライン百科事典サイト「Citizendium」を立ち上げたラリー・サンガーは、自称Wikipedia共同創設者なのだが、残念なことにWikipediaのリーダーであるジミー・ウェールズは、サンガーを創設メンバーとはみていない。ウェールズによると、サンガーはWikipediaという大きなホイールの歯車の1つにすぎなかったというのだ。スーパーマーケットで奇行を繰り返す男からエンサイクロペディア・ブリタニカ32巻が生まれるわけはない、ってことだな。

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