Spencer F. Katt

慈善活動はビストロで

2007/06/11


 「P.F.チャンズ・チャイナビストロ」で友人と2人、うまい中華料理を目いっぱい平らげたあと、フォーチュンクッキーを割ると、「誰かの顔を立てることが、みんなの幸せにつながる」と出た。フォーチュンクッキーとはいえ、なかなか意味深い言葉ではある。

 「そういえば」と友人が話した。「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団がP.F.チャンズの株を100万株ほど購入したらしい。将来にわたって慈善事業を継続するための、有意義な投資なんだそうだ」

 「すばらしいね」と吾輩は大げさに応じた。「じゃ、ここでイカの塩コショウ味をもう1品オーダーすれば、われわれもボノみたいに世界を救うことができるわけだ!」

 羽毛のように軽い吾輩の博愛思想に失望した友人は、レストランを出るとそのまま急ぎ足でボストンのパークスクエア方面へ消え去った。残された吾輩は腹ごなしに散歩でもしようと、ボストン・パブリック・ガーデンへ向かってぶらぶら歩き始めた。するとそのとき、キャットフォンから着信音に設定していたU2の「Beautiful Day」が流れてきた。聞こえてきた声の主は、自称アップル・ファンの情報屋だった。彼の話によると、いまクパチーノ・ウォッチャーたちの間で、アップルがMac miniの製造をまもなく中止するのではないか、との観測が流れているとか。

 情報屋はまた、台湾メーカーのクアンタが、ジョブスの新しい家のドアをノックしたらしいという噂も教えてくれた。欧州、アジア市場向けの次世代iPhoneの製造で交渉を持ちかけてきた模様だ。「それらの市場では、iPhoneも3G高速モバイルネットワークとの互換性を確保する必要があるからね」と彼は説明した。ふむ。iPhoneの最初のモデルですらあまり見かけないのに、もうグローバルモデルのことを考えているなんて、アップルのトップは気が早いね。

 電話を切ったあと、吾輩は公園のチケット売り場で名物「スワンボート」の乗船券を購入した。白鳥の形をしたボートが湖の真ん中あたりまで来たとき、またしてもキャットフォンが鳴った。今度はマーケット・ウォッチャーの友人からだ。彼の情報によると、株式市場はいま、ノキアがRIMの買収に乗り出したという噂で持ちきりだという。その噂、先週から吾輩の机の上を行き交っているけどね。

 また友人の話では、投資顧問会社のブラックストーン・キャピタル・パートナーズがバイアウトの候補として、マイクロン・テクノロジーを狙っているらしい。

 と、そのとき。快活そうな少年が岸辺のアヒルに向かって投げていたピーナッツが、不運にも吾輩の目を直撃した。「医者に診てもらったほうがいいかもしれん」と電話の友人に言うと、彼は慌てふためいて「すぐ病院へ行け」と吾輩を急かせた。

 病院へ行く途中、電話の友人はSAPが最近、前上級副社長でチーフ・ソフトウェア・アーキテクトのヴィシャル・シッカを初代CTOに任命したことに言及し、「製品・技術グループを統括していたシャイ・アガシとSAPラボのマネージング・ディレクターだったアリザ・ペレグが離脱した時点で、シッカのCTO就任は決まっていたね」と話した。

 ER(救急救命室)では、まぶたを押さえた吾輩より、もっと重症の患者がいたため、しばらく廊下の椅子で待たされることになった。すると友人は、「そういえばインテル創業者のアンディ・グローブが、医療費問題を解決する彼のプランについてどう思うか、次期社長候補全員に公開書簡を送ったそうじゃないか」と話し始めた。

 グローブは、医療費の請求書に1パーセントの付加税を乗せ、ER運用基金にすべきだと主張しているという。きっとまた偏執症の患者が生き残り、健全な担税者が疲弊するだけになるだろうね。

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