Spencer F. Katt

デルのローコスト・スーパーコンピュータ

2007/10/01


 “P.S., I love you, you, you, you……”ってわけか。オンライン証券会社のアメリトレードから、吾輩の個人情報が外部に流出したかもしれない、という不愉快な手紙が届いた。同社のシステムに不正なコードが仕込まれ、クライアント情報が「外部のソースから引き出だし可能な状態になっていた」というのだ。

 このほかにも数社から同様の手紙が届いていることを考えると、吾輩の個人情報にアクセスできない人間など、この地球上に1人としていないのではないかという気がしてきた。しかしなんだね、どの企業も悪いニュースを通知するときは、信頼できる古典的な郵便に頼るというところが面白い。

 それはそうと、吾輩はインテル開発者フォーラム(IDF)を取材するため、サンフランシスコへ向かった。そこで吾輩は、いまや伝説となった「ムーアの法則」---半導体におけるトランジスタの集積密度は2年ごとに倍になる---を提唱したインテルの共同創立者、ゴードン・ムーアに魅了され、わが身の些細なプライバシー問題などすっかり忘れてしまった。博士は聴衆に向かって、エレクトロニクスの基礎的な制約は、おそらく次の10年間に、ムーアの法則によって打破されるだろうと語った。

 モスコーニセンターを後にした吾輩は、表通りを越えて、友人たちと待ち合わせの約束をした「ザ・サースティ・ベア」へ向かった。店に入ってすぐ吾輩は、インテルのライバルであるAMDがトリプルコアチップのリリースを計画していることを耳にした。

 トルティーヤを口に運んでいると、友人の1人が、「AMDはどうやら欠陥の多いクアッドコアのコンポーネントを利用して、トリプルコア製品を開発しているらしい」と教えてくれた。トリプルコアチップはグラフィックスカードに最適なものになるという。友人によると、すでにビッグブルーがXbox 360用のトリプルコアを製造しているらしい。

 もう1人のゲームオタクの友人によると、IDFの会場では、インテルがイスラエルのゲーム開発ベンダー、ハボックを買収した話で一部の技術者たちが盛り上がっていたという。

 まぁ、インテルはどの分野であろうと、AMDに遅れを取るわけにはいかないからな。もう1杯注文したあと、別の友人が、デルの開発したスーパーコンピュータを話題にした。ロンドン大学ユニバーシティカレッジに納入した「Legion」だ。デルでは、3000台以上のパソコンと同等の性能を有するローコスト・スーパーコンピュータだ、と盛んに宣伝している。

 「IBMのBlue Geneはゲーリー・カスパロフとチェス対戦したけど、Legionはスティーブン(デルのCMキャラクタ)とハッキーサック(フットバッグ)で火花を散らしそうだな」と吾輩は笑った。つまらないジョークで座がしらけそうになったので、とりあえず吾輩はもう1杯注文することにした。

 テーブルを囲む仲間の中にテレコム関係の専門家がいて、そいつの情報によると、スプリントが年内に携帯電話の新モデル4機種を発売するらしい。そのうちの1つは、iPhoneと類似の機能を搭載したHTCのタッチスクリーンモデルだという。

 吾輩が珍しくテーブルの上の勘定書に手を伸ばすと、友人の1人が「ラリー・エリソンから金でも巻き上げたか?」と無駄口を叩いた。もちろん、オラクルのCEO、ラリー・エリソンが最近、3500万ドルの賞与と5000万ドル相当のストックオプション(700万株)を得たというニュースにひっかけたジョークだ。「いや、誰かが吾輩のアメリトレード口座から金をかっさらって行く前に、全部使っちまおうと思ってさ」と吾輩はぶっきらぼうに応じた。

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