Spencer F. Katt

エグゼクティブをやる気にさせるシスコの戦略

2008/04/28


 サンフランシスコで開催されるトレードショーは数多いが、その中でも吾輩のいちばんのお気に入りは「RSAコンファレンス」だ。トレンチコートに古ぼけたフェドーラをかぶったセキュリティマニアがうろつく展示会なんて、いまどきほかにあるかね?

 それにベイサイドの霧の街には、吾輩の舌を喜ばせてくれるレストランも多いからね。スモークサーモンやシュリンプカクテル、クラムディップを冷たく冷やしたナパバレーのシャルドネで流し込めば、食通で鳴らす吾輩でさえ夢見心地になるほどだ。

 RSAコンファレンス2日目の夜に、モスコーンセンター隣のWホテル屋上で開かれるトレンドマイクロの夜会も見逃せない。会場を覆う巨大な透明のプラスチック製テントが、太平洋から流れ込む肌を突き刺すような冷たい春の風をさえぎってくれる。小編成のジャズバンドとフレッシュカットのプライムリブは、あまたのパーティを渡り歩いてきた吾輩から見ても十分に及第点を与えられるものだ。

 今年、RSAのパーティでは、シマンテックCEOのジョン・トンプソンの退任時期について、さまざまな憶測が飛び交っていた。ある業界観測筋によると、シマンテック社内では経営の陳腐化を防ぐため、CEOの在任期間を10年未満とする不文律があるそうだ。「で、トンプソンはCEOに就任して、そろそろ9年半になるからね」と、彼は教えてくれた。

 そのシマンテックだが、4月10日、一部の従業員をレイオフしたことを認めた。対象となったのは、ほとんどがベリタス・ストレージ事業部の古参従業員だという。

 このニュースは、もしストレージ事業部がEMCやHPとの競争に勝てなければ、トンプソン退任を促すプレッシャーは一気に強まるとの見方を裏付けるものだ。だが、トンプソンはRSAコンファレンスにキースピーカーとして登場し、すぐにも表舞台から消え去るような気配は微塵も見せなかった。

 それにしても、いつもはケチくさい編集長がRSAコンファレンスに吾輩を喜んで送り出したのは、きっとホノルルで開催されていた「シスコ・パートナー・サミット」に行かせないための工作だったに違いない。

 吾輩はコンファレンス会場で、シスコがヌオバ・システムズの残り20パーセントの株をすべて取得した、というニュースに興味をそそられた。なにが面白いって、このスタートアップ企業は元シスコ上級エグゼクティブのマリオ・マッツォーラ、ペレム・ジェイン、ルカ・カフィエロ、ソニ・ジアンダーニの4人が創立した会社であるからだ。

 シスコがヌオバに最初に投資したのは2006年。すでに同社株式の80パーセントを取得している。このように信頼できるエグゼクティブたちの設立したスピンオフ会社に投資し、のちに吸収するというスタートアップ戦略をシスコが採用したケースは以前にもあった。

 関係筋の話によると、シスコのストレージスイッチを開発したアンディアモ・プロジェクトも同じような経緯をたどったという。シスコにとってこうした戦略は、リスクを最小限に抑えて野心的な製品を開発する効果的な方法なのだ。

 しかし、ある専門家は別の見方を示す。それは、シスコの株価がフラットになってしまったため、この方法がエグゼクティブたちに大きなボーナスを与える有効な手段となったというのだ。実際、ヌオバの場合、彼らが開発したNexus 5000スイッチが大成功を収めれば、シスコが支払うボーナスは最大6億7800万ドルになるという。当然、コケたらその額はずっと少なくなるわけで、まさに”ガッツがなければ甘い汁にはありつけない”という格言そのままだ。

[英文タイトル] Snagging tips in between noshes

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