いま、ストレージに求められているものとは何でしょうか。
IDC Japanは、2010〜2015年におけるストレージ投資の伸びが、おおむねIT投資全体の伸びを上回ると予測しています。同社は、「信頼性と安全性」「ITインフラの変革」「データの多様化とビッグデータ」の3つの要素が、ストレージインフラの構造変化を促すとしています。
富士通
ストレージシステム事業本部
ストレージ企画統括部
統括部長
熊沢 忠志氏
信頼性と安全性の追求は、当然ながら2011年の東日本大震災でクローズアップされた事業継続計画、災害対策が大きなきっかけとなっています。ITインフラ変革と事業継続/災害対策を同じ枠内でとらえる考え方も広がりつつあるとされています。また、省電力が、震災後の電力供給不足をきっかけに、環境配慮だけでなく、事業継続の観点からも見直されつつあるといいます。
また、ITインフラ変革に関連して、サーバ仮想化環境の広がりにより、ストレージに関しては性能維持やデータ量の増大が、重要な課題として浮上してきました。こうした課題を解決するため、重複除外やシン・プロビジョニングをはじめとする比較的新しい技術を、積極的に活用しようとする傾向が見られるようになってきました。
一方、「ビッグデータ」がメディアなどでさかんに取り上げられるようになってきました。しかしそれ以前に、非構造化データや複製データに分類されるようなデータが急増し、データの多様化が今後ますます進むと予測されています。ビッグデータについても、金融のコンプライアンス、医療の診断記録や画像、製造業の開発/設計データなど、業界ごとに多様な大量データを管理し、こうしたデータから何らかの価値を引き出すことが求められるようになってくると予測されています。
「信頼性と安全性」「ITインフラの変革」「データの多様化とビッグデータ」の3要素に関する上記の状況やトレンドを踏まえ、富士通はストレージで何を目指しているのかを、お話しします。
東日本大震災で変わったこと
2011年3月11日の東日本大震災で、富士通でも50以上の拠点が被災しました。特に、デスクトップPCやプリンタ、PCサーバを製造する、福島県伊達市の富士通アイソテックの本社工場は、生産設備に重大な被害が発生しました。
しかし富士通アイソテックは、地震発生直後に現地復旧対策本部を設置、サプライヤの被災状況などの調査を開始しました。翌日の3月12日午前には、ノートPCを製造している島根富士通で代替製造を行う旨の発令がなされ、3月23日には島根富士通から代替製造品の出荷が開始できました。すなわち、判断までに要した時間は約12時間、業務再開までに要した時間は約12日間にとどめることができました。
これだけの短時間で対応できたのは、2007年に事業継続計画を策定し、このなかで本社工場の被災時には、島根富士通で代替製造を行うことを想定していたためです。こうした計画を立てていなかった場合、判断には約36時間、復旧には30日間を要したであろうと富士通では試算しています。計画を立てただけでなく、訓練を震災当日までに合計40回以上実施していました。今回の富士通アイソテックにおける災害対応事例は、訓練を確実に実施しておくことの重要性を、改めて実証する結果ともなりました。
富士通はこうした社内での対策やその成果から得られたノウハウも生かしながら、多数のお客様に対し、事業継続計画策定や、災害対策のお手伝いをしています。関連製品やサービスは、事業継続コンサルティングサービスから安否確認サービス、Web会議サービス、FENICSネットワークサービスにおけるネットワーク対策サービスまで、多岐にわたります。しかし、いまや業務に不可欠となっているデータの保全という観点からは、ストレージが非常に重要な役割を果たします。
事業継続のために重要なのは、データを守ることです。しかし、すべてのデータを完全に守ることは通常、予算的にも不可能です。このため、データそれぞれの重要度に基づいて対策を決めておくことを推奨しています。それぞれのデータの重要度は、「どの時点のデータを」「いつまでに復旧するか」「継続業務の範囲やサービスレベルはどれくらいか」の3つの要素で決めることができます。
ストレージを使った事業継続/災害対策では、データを遠隔拠点にバックアップあるいは複製しておき、災害で本番拠点が使えなくなった場合には、このデータコピーを使えるように計画しておくことが基本となります。そして、上述のデータの重要度に応じ、データコピーのとり方や利用の仕方を変えることで、無駄のない効果的な対策を目指します。
下の図をご覧ください。このうちレベル0、レベル1はテープへのバックアップを使った対策です。レベル0はバックアップテープを同一拠点内に保管するもので、災害対策としては弱点があります。レベル1は別拠点に搬送するもので、災害対策として行う意義はあります。しかし、「どの時点のデータを」「いつまでに復旧するか」の2点で優れた結果をもたらしません。
レベル2、レベル3はどちらも、データをWAN回線経由で遠隔バックアップする手法です。レベル3はデータを遠隔拠点に保存するだけでなく、本番拠点内の機器の冗長化を図ることによって、機器障害への耐性を高めています。
レベル4では待機拠点側にもサーバを置き、万が一の場合には、遠隔バックアップしておいたデータを用い、待機拠点内のサーバでシステムを一時的に復旧・稼働することができます。そしてレベル5では、データベース/ミドルウェアレベルの即時複製機能により、データをリアルタイムに待機拠点側に送り、これを使って待機拠点側でシステムを復旧できます。本番拠点が災害に見舞われ、稼働が不可能になった場合にも、リアルタイムでの複製が行われているため、データを失うことなく待機拠点のサーバに引き継ぐことができます。最小限の停止時間で、業務を継続できるようになります。
こうした選択肢を、システムの重要度に応じて使い分けることが肝要です。
図1 事業継続・災害対策のレベル(※クリックで拡大) |
富士通ストレージ「ETERNUS」は過去10年で大きく機能進化しており、データの重要度によってさまざまなレベルの災害対策を、場合によっては非常に安価に、実現できるようになってきました。
一昔前は、通信回線経由の複製やバックアップを行うために、高額な専用機器と、高速な専用線を必要としていたため、大企業でなければ手を出すことができませんでした。しかし富士通は、中小企業でも事業継続対策や災害への備えができるような製品を、さまざまな形で提供しています。ITの災害対策は、もう「高嶺の花」ではなくなりました。
例えば重複排除装置「ETERNUS CS800 」を活用すると、重複排除・圧縮でサイズを小さくしてからデータを待機拠点に複製することで、通信コストやバックアップ装置のデータ容量を抑えることができます。データ複製のために利用する回線は低速な回線でもかまいません。ETERNUS C800 自体も安価な製品なので、中小企業にとって大きな負担にはなりません。
また、ディスクアレイ「ETERNUS DX series」でも、リモートコピーを低速回線経由で行うことを可能にしています。これは、大容量のバッファメモリやディスクを用い、回線速度に合わせてデータを送り出す機能を備えているからです。さらに、IPネットワーク上で、iSCSIによる複製もできます。低速なIP通信サービスを使えば、災害対策のランニングコストを大きく引き下げることができます。
さらに仮想化環境では、VMware vSphereとの緊密な連携により、仮想サーバを遠隔拠点にコピーしておいて、いざというときに即座にシステムを立ち上げることができるようになっています。
東日本大震災によって、大規模な東京直下型地震が発生する確率も高まったとされています。事業継続のためには、計画を立てるだけでなく訓練を重ねることも重要だということを考慮し、できるだけ早く対策を進められることをお勧めします。
ITインフラの変革はもう進んでいる
「ITインフラの変革」というと、大がかりな響きがあります。しかし、サーバ仮想化の普及もあいまって、全社レベルのITインフラ統合につながる動きは、多くの企業で始まりつつあります。
仮想化を業務システム単位で導入することは、非常によく見られるようになっており、これ自体、大きな進歩と言えます。ただし、数台のサーバを仮想化して少数のサーバ機にまとめるといった規模では、仮想化のメリットも限定的となります。社内に散在するサーバおよびアプリケーションを包括的に見直し、使われていないアプリケーションは廃止し、調達の統合化を進め、そしてサーバを数十台、数百台といったレベルで統合するといった活動を推進することで、ITシステムの「変革」と呼ぶに値する構造的な改善が可能になります。
統合によってITシステムを変革していく際にも、ストレージが大きな役割を果たします。統合はITインフラ利用の無駄を減らし、運用の標準化による効率化をもたらし、多くの場面で運用を改善します。しかし、もともと多様なニーズに対応するために個別に運用されてきたシステムを統合する際には、標準化すべき部分と、そうでない部分があります。例えば非常に高速なレスポンスが要求されるシステムが、統合によって低速化するようでは、本末転倒ともいえます。
富士通ストレージ「ETERNUS」は、大規模な統合・標準化を実現しながら、異なるレベルのニーズに対応することのできる、豊富な機能を搭載しています。
例えば優先業務のサービスレベルを維持する機能です。接続する複数のサーバに対して、優先度を設定し、高い優先度のサーバのデータ処理を優先することで、そのサーバのアプリケーションの性能を維持することができます。管理作業についても、「ETERNUS DX series」では複数の異なる役割の管理者を設定し、それぞれの管理者の権限を限定することができます。例えばある管理者はストレージ・ハードウェアの構成だけを設定・変更でき、ある管理者はユーザーアカウントや認証の設定だけを設定・変更できるといった役割分担が可能です。
統合の最大の目的であるITインフラ利用の効率化については、例えば自動階層制御機能が便利です。これは、ストレージのなかにSSD、高速SASハードディスク、低速・大容量SASハードディスクといった、異なるパフォーマンス、異なるコストの記憶媒体を併設しておき、データをその間で最適配置するというものです。
図2 ストレージ自動階層制御による投資の最適化(※クリックで拡大) |
ストレージ装置がデータの利用状況を見て、アクセス頻度の高いデータは高速な記憶媒体に移動させ、アクセス頻度の低いデータについてはより低速な記憶媒体に移動するという作業をストレージが自動的に行うため、管理者が手作業で、これらの記憶媒体を使い分ける必要はありません。管理が複雑化することなく、記憶媒体のコストを最適化することができます。
データ量が急速に増えつつある昨今、データ保存コストはITインフラ全体のコストに影響を与える重要な課題となっています。しかし、データ保存コストを抑えたいからといって、全ユーザーに対して個々のデータの重要度を聞いて回るわけにはいきませんし、どのユーザーも、自らのデータは重要だと答えるでしょう。こうした相反するユーザーニーズに対して、だれもが納得できる統一した基準に基づき、自動的に優先度を管理する仕組みを適用すれば、ユーザーの不満を防ぎながら標準化を推進しやすくなります。
データの多様化とビッグデータにどう対応するか
データの多様化は急速に進行しています。ビッグデータへの取り組みは始まったばかりですが、これまで十分に利用されてこなかった大量データを解析することで、大きな製品やサービスの価値を生み出せる可能性があるということに、多くの人々が気づいています。
ストレージを提供している立場から、ビッグデータ時代への今後の移行には、2つの側面があると考えています。
1つはデータの特性に応じて、異なるストレージのアーキテクチャが要求される傾向が強まるということです。データの特性とは、構造化データか非構造化データかというだけではありません。データへのアクセスパターンはランダムなのか、シーケンシャルなのか、アクセス頻度は書き込みが1度で読み出しは何度も行われるのか、あるいはその逆か、書き込みも読み出しも頻繁に行われるのか、書き込みも読み出しも1度だけなのか。データのライフサイクルではなく、データ自体の読み書きの特性が多様化してくるということです。
もう1つは、データ中心の業務が増えていくということです。処理中心の業務では、データの移動時間よりもデータ処理時間のほうが長いわけですが、データ中心の業務では、データの処理時間よりもデータの移動時間のほうが長くなります。
図3 処理もデータも最適な場に移動する |
データ特性の多様化と、データ中心の業務の増加が、データ量の増大とともに顕在化してきます。その際に求められるのは、大量なデータをそのデータの特性に応じて最適なストレージに自動的に配置し、管理すること、そしてデータの近くにデータ処理機能を移動して実行するということです。
ストレージにできることはたくさんある
以上、「信頼性と安全性」「ITインフラの変革」「データの多様化とビッグデータ」の3点について、富士通のストレージにできること、富士通がストレージについて考えていることをお伝えしてきました。
最後に強調したいのは、ストレージにはできることがたくさんあるということです。お客様のビジネスにITは不可欠になっています。そのITをさらに有効なものとし、改善し、効率化するために、ストレージは重要な役割を果たすとともに、その役割を果たすための機能や利用方法を富士通では次々に生み出してきました。そのいい例として特にお伝えしたいのは、大企業のみならず、中小企業のお客様にとっても事業継続計画や災害対策が必要であることを認識し、データの遠隔コピーを低コストで実現する機能を開発したことです。
お客様の規模の大小を問わず、そのビジネスに貢献するストレージ。これが富士通ストレージ「ETERNUS」の最大の提供目的です。われわれは、今後もこの目的のために活動してまいります。
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提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2012年4月22日