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サーバ集約だけでは、クラウドのメリットは引き出せない
ビジネスのスピードアップを実現する
PaaS環境構築へのロードマップ


コスト削減の取り組みを受けて、仮想化によるサーバ集約は当たり前の施策となった。今後は市場の環境変化に素早く対応すべく、ビジネスのスピードアップを果たすために、集約したITリソースの有効活用が求められていく。そのためには、全社のリソースを一元管理し、必要に応じてユーザーに提供するクラウドの考え方が不可欠となる。だがリソースを配分するだけでは不十分だ。“すぐに業務システムを動かせる状態”に仕上げてからリソースを提供することで初めて、さらに効率的なリソース活用が実現する。そして、そのための仕組みを構築するためには、クラウド上の実行基盤としてPaaS基盤が不可欠となるのだ。ではそのようなPaaSとは具体的にどのような仕組みで、何がポイントとなるのか? ビジネスのスピードアップとコスト削減を支援するPaaSの魅力を紹介しつつ、PaaS基盤実現に向けた取り組みを紹介しよう。

仮想化による「サーバ集約」後のリソース活用

 サーバ仮想化は、企業IT向けの実践的な技術としてすっかり定着した感がある。すでに多くの企業がサーバ仮想化により物理サーバを集約し、着実にコスト削減効果を上げている。以下の図1のように、企業の約6割がサーバ仮想化に取り組んでいるという調査結果もあるほどだ。

図1 アイティメディア TechTargetジャパン会員調査リポート「サーバ仮想化管理に関するアンケート」より。約6割の企業がサーバ仮想化を「導入済み」と回答(2011年5月23日〜6月7日に実施。会員にWeb上でアンケートを実施。有効回答223件)

 このように、コスト削減の観点から導入が進んでいるサーバ仮想化だが、より効果を高めていくためには、部門や拠点レベルでなく全社レベルでリソースを共有し、運用管理を一元化することが不可欠となる。これにより、運用管理を効率化できるとともに、共有リソースを利用部門に適切に配分して利用効率を高めることが可能となる。

サーバ仮想化からIaaS、そしてPaaSへ
〜プライベートクラウドへの段階的移行〜

 こうしたリソースの有効活用を実現する手段として、現在多くのベンダが提唱しているのが「プライベートクラウド」だ。プライベートクラウドという言葉の定義には、まだあいまいな部分も残されているが、一般的には「社内のITリソースを仮想化し、ユーザーの必要に応じて、随時サービスとして動的に提供するためのIT基盤」を指す。

 従って、サーバ仮想化が進んでいる企業なら、プライベートクラウド環境構築の第一歩は、すでにある程度クリアしていると言える。だが前述のように、プライベートクラウド実現のポイントは、仮想化したITリソースを全社単位で一元管理する仕組み――「リソースプール」を整備することにある。これは「ITシステムを新たに立ち上げる際にはリソースプールから必要なだけのリソースを切り出し、システムの利用が終わったら再びリソースプールに返却することでリソースを有効活用する」ための仕組みだ。

 ITリソースのこうした管理や利用の在り方は、“ITインフラをサービスとして提供する”ことから、一般にIaaS(Infrastructure as a Service)と呼ばれる。そして、このIaaSの実現基盤を整備し、ITリソースを全社レベルで一元管理できるようになれば、管理負荷の増大といったサーバ仮想化に伴う問題に対応できるというわけだ。

 だが、このIaaSにも限界がある。それはユーザーに提供できるのがITリソースの単位でしかないということだ。ユーザーが求めているのはサーバやストレージといった個々のITリソースではない。それらを組み合わせて構築される業務システムである。

 つまり、IaaSによってITリソースを簡単・迅速に配備できても、そこからアプリケーションサーバやデータベースサーバの設定など、“業務アプリケーションを動かす環境”を用意するまでの手間と時間がかかる。その作業時間が従来の物理環境と変わらないのであれば、リソースの有効活用はできても、ビジネスのスピードアップというメリットまでは享受できないのだ。加えて、各種設定を手作業で行うようではヒューマンエラーも招きかねない(図2参照)。

図2 IaaSによってITリソースを迅速に配備できても、業務アプリケーションを稼働させるまでには、さまざまな作業が必要。これに時間がかかるようではビジネスのスピードアップは難しいしヒューマンエラーも誘発する。そこで「業務アプリケーションの稼働環境を素早く、自動的に提供する仕組み」=PaaSが必要となる(クリックで拡大

 そこで現在、こうした課題解決に有効な手段として注目されているのがPaaS(Platform as a Service)だ。PaaSとは、単にITリソースだけを切り出して提供するのではなく、サーバ環境やミドルウェア環境をセットにした“業務を遂行できる環境”をサービスとして提供する仕組みである。具体的には、仮想サーバにあらかじめアプリケーションサーバソフトウェアやデータベースソフトウェアなどをインストールし、必要な設定も施した状態でユーザーに提供する。これにより、システム環境を構築する手間や時間を大幅に削減する――すなわち、ビジネスのスピードアップを実現するのである(図2参照)。

PaaS基盤を容易に実現。
ビジネスを加速させるPaaS環境管理基盤

 さて、以上のように、ビジネスのスピードアップ、リソースの有効活用という仮想化のメリットを追求していくためには、部分的なサーバ集約から、全社単位でのリソースプーリング、そしてリソースを一元管理し、適宜サービスとして提供するIaaS、さらに“業務を遂行できる環境”をサービスとして提供するPaaS、といったロードマップに沿ってプライベートクラウド基盤を構築することが最も現実的かつ効率の良い方法となる。

 実際、近年はそうしたプライベートクラウド基盤構築を支援する製品・サービスも複数のベンダから提供されつつあり、日立製作所(以下、日立)も早くからそうしたソリューションの提供に取り組んできた1社だ。具体的には、同社が提供するITリソース管理ツール「JP1/IT Resource Management」(以下、JP1/ITRM)には、IaaSの実現に欠かせないリソースプールの機能が盛り込まれている。

 そして注目すべきは、同製品で実現されるIaaS基盤の上に、PaaS環境を構築するための取り組みも始めており、日立のシステム構築基盤である「Cosminexus(コズミネクサス)」が、PaaS環境の構築・管理を支援するための取り組みをJP1と連携しながら行っていくということだ。

 ただ「PaaS環境を構築・管理する」と言われても、すぐにはピンと来ないかもしれない。では、どのようにPaaSを実現するのか、ここで簡単に紹介しよう。

 PaaS環境管理では、業務アプリケーションの種類と用途を指定することで、必要となるPaaS環境の自動的な設定を可能にする。これを実現するために、業務要件に沿った環境構築の「テンプレート」を提供する。このテンプレートを簡単に言うと、業務システムをパターン化したものである。テンプレートには、例えば「Webのオンラインシステム」とか「バッチシステム」といったパターンが用意される。

 業務システムを構築する際には、このテンプレートを選択した後、処理負荷やレスポンスタイムといった、個々のシステムに固有の非機能要件を追加入力するだけで、PaaS環境管理が適切な構成を算出してシステム構築を実施する。業務システムの構成情報は、システムごとにひとまとめにしてリポジトリで管理するため、後にそれを呼び出して再利用することもできる。

図3 PaaS環境管理は、業務要件に沿って業務システムをパターン化した「テンプレート」を提供する。このテンプレートを選択した後、処理負荷やレスポンスタイムなど、個々のシステムに固有の非機能要件を追加入力するだけで、PaaS環境管理が自動的に、素早くシステム基盤を構築する(クリックで拡大

 このテンプレートやスケールを使って、過去に稼働実績のある業務システムの情報をあらかじめテンプレート化しておけば、後に同じようなシステムを構築する際には、該当するテンプレートを一覧から選び、詳細要件をスケール情報で設定するだけで済む。運用管理者がテンプレートを選べば、必要なITリソースをJP1/ITRMが管理するリソースプールから自動的に引き出し、複数のリソースを組み合わせて“業務を稼動させるシステム基盤”を構築した上でユーザーに提供する仕組みだ(図3参照)。

業務システムのライフサイクル全般にわたって効率化

 こうした仕組みが実現できれば、システム環境の新規構築に要する時間や手間が大幅に削減できることは容易に想像できよう。単にサーバを仮想化しただけの環境や、IaaSの環境では、システム基盤を構築するために、手作業で仮想サーバの生成とデプロイ、各種設定、さらには他のサーバとの接続設定、監視設定などを1つ1つこなさなければならない。

 それがCosminexusのPaaS環境管理なら、テンプレートを一覧から選択し、スケールを設定するだけで、業務を稼働させるための環境が整う。すなわち、ユーザー部門からの要望に応じて、自社にとってのビジネスチャンスを逃すことなく、迅速にシステム環境を提供できるのだ。また、テンプレート自体は日立が今まで培ってきたシステム構築のノウハウを基にして作られているため、すでに稼働実績があるシステム構成を再利用することを意味する。このため、新たに構築するシステム環境の品質を確実に担保できるというメリットも享受できるのである。

 こうした仕組みをプライベートクラウド基盤として全社展開すれば、より大きな効果が期待できる。企業規模が一定以上の場合、似たような構成の業務システムを、各部門・拠点で個別に構築しているケースが多い。これは言うまでもなく、コストやSIリスクの面で非常に効率が悪いやり方だ。しかし全社レベルでPaaSの活用を進めれば、類似した業務システムは全て同一化でき、テンプレート活用による効率の良いスピーディな構築が可能となる。

 また、PaaSが威力を発揮するのはシステムの新規構築時だけとは限らない。例えば、アプリケーションの改修作業などを行う際に、本番環境と同じ構成のシステムを開発環境や検証環境として構築することがある。この環境構築の作業を、いちいち手作業で行っていては手間も時間もかかるし、ミスも発生しやすい。しかしPaaS環境管理の導入により、テンプレートから生成した本番環境の「マスターイメージ」をコピーすることで、同じ内容のシステム環境を迅速・確実に構築できる。日立の試算によれば、通常5時間はかかる検証環境の構築作業が、90分間にまで短縮できる見込みだという。

 また、マスターイメージの内容は、システムを運用している最中に変更することもできる。例えばシステムに掛かる負荷が急激に増えても、マスターイメージに仮想サーバを追加すれば、PaaS環境管理側が自動的に仮想サーバのリソースをシステムに追加し、システムのキャパシティを増強するといった具合だ。

 このように、システムの構築、運用、評価・検証という、業務システムのライフサイクル全般に渡ってIT部門やユーザーに掛かる負荷を軽減し、利便性を高めるための仕組みを備えていく。

ハイブリッド時代の業務改善に不可欠となる「見えるクラウド」

 さて、PaaS環境管理を備えたプライベートクラウドが、ビジネスのスピードアップとリソースの有効活用、さらには運用負荷の低減を実現する理由はご理解いただけたのではないだろうか。さらに、日立では広い範囲にわたって業務システムを最適化できるソリューションも用意していくという。

 今後、仮想化やプライベートクラウドが企業に浸透していっても、一部の業務では依然として物理サーバ環境のシステムが必要とされるはずだ。また、パブリッククラウドの利用も多くの企業で進むと予想される。そのため、これからの企業システムは物理サーバ環境、プライベートクラウド、パブリッククラウドが混在したハイブリッド環境になると言われている。

 そうした中、企業システムを下支えするプラットフォームに求められるのは、ハイブリッドな環境を一元的に管理し、異なる形態のシステム同士をうまく組み合わせて効率的に業務を回していく仕組みだ。そこでCosminexusでは、そうした機能をすでに先取りしているという。

 具体的には、サービス連携バス(ESB)を介して、オンプレミス、クラウドを問わず社内のあらゆるシステムを連携可能にするという。また、サービス連携バス上に実装された業務プロセスの実行状況を監視することにより、サービス利用状況やITリソースの負荷状況を業務単位で可視化する(図4参照)。

図4 Cosminexusが目指すクラウド適用形態。サービス連携バス(ESB)を介して、ハイブリッド環境を連携。さらに業務プロセスの実行状況を監視し、サービス利用状況やITリソースの負荷状況を、各業務部門に応じた視点から可視化する。これにより、業務とシステムの関係を把握しながら継続的に業務を改善する体制が整う(クリックで拡大

 これによって実現するのは、「IT視点」ではなく「業務視点」でハイブリッド環境にあるシステムの開発・運用サイクルをモニタリングし、業務とそれを支えるシステムの依存関係を確実に把握しながら継続的に業務を改善していく、真の意味での“業務改善サイクル”だ。

 日立では、こうした「業務視点でシステムを可視化する仕組み」のことを「見えるクラウド」と呼んでいるが、仮想化技術と同様に、今後クラウド活用が“当たり前”になっていくに従って、こうした仕組みが不可欠になっていくことはまず間違いないだろう。

 

 今、多くの企業が仮想化によるサーバ集約を済ませ、クラウド活用にも乗り出しつつある。市場環境変化が激化し、より一層のビジネスのスピードアップ、リソースの有効活用が求められている今、他社に一歩抜きん出るためにも、Cosminexusというプライベートクラウド実現へのロードマップを、一度じっくりとひも解いてみてはいかがだろうか。

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提供:株式会社日立製作所
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制作:@IT情報マネジメント編集部
掲載内容有効期限:2011年11月25日