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業務改善のポイントは「縦と横のプロセス支援」にあり
日立製作所の公共システム事業部に聞く

現場作業の標準化を
全社レベルの標準化につなぐ秘訣


業務効率化を狙って導入したシステムが、逆に現場の混乱を招き、“使ってもらえないシステム”になってしまうケースが後を絶たない。この原因は、IT部門と現場の「業務に対する認識の乖離」にあると言われている。ではそうした「認識の乖離」が生じやすいポイントとは何なのか? 今回は、日立製作所の公共システム事業部によるNavigation Platformを使った業務標準化事例を通じて、“全社規模の業務標準化”に欠かせない視点を紹介する。

業務は「縦のプロセス」と「横のプロセス」から成る

 「業務の見える化」「PDCAサイクルを迅速に回す」――これらは業務システムについて語られる際によく耳にするフレーズだ。具体的には、「属人化していた業務ノウハウをITによって可視化・共有し、業務フローをツールで自動実行して、その履歴を分析する。これにより、業務プロセスの中に潜むボトルネックをあぶり出し、より確実・効率的な業務遂行に向けて、業務改善のPDCAサイクルをスムーズに回す」というわけだ。事実、ツールを使ってこうしたことを実行し、業務改善の成果を挙げている企業も多い。

 だが言うまでもなく、「業務プロセスの中に潜むボトルネックを発見し、業務をより確実・効率的に遂行する」とは決して簡単なことではない。場合によっては、ツール導入が逆効果になってしまう例もある。特に多いのが、IT部門が良かれと考えて導入したツールが、逆に現場の混乱やコミュニケーション不全を招いてしまうケースだ。そして、そうした“現場に使ってもらえないシステム”を生み出してしまう原因は、主に業務の実態に対する「IT部門と現場の認識の乖離」にあると言われている。

 では、この「認識の乖離」とは具体的にはどういうことなのか?――それは「業務」というものを「縦横モデル」で捉えてみるとイメージしやすい。まず「業務」とは、個々の作業の担当者がしかるべきインプットを受け取り、アウトプットを生成した上で次の担当者に受け渡していくという「一連の業務フロー」である。これを「横のプロセス」とすると、各担当者が割り振られた作業を実行するためにたどるべき作業手順は「縦のプロセス」と言える。

図1 業務の進め方は「横」と「縦」のプロセスに整理できる。従って、業務改善を考える際には、各担当者の作業手順である「縦のプロセス」と、各担当者がアウトプットした成果を次のフローに渡していく「横のプロセス」の両方を考える必要がある

 つまり、「業務」とはこうした「縦のプロセス」と「横のプロセス」の組み合わせで構成されているわけだが、これまでIT部門主導で業務システムを適用し、その遂行を支援してきたのは、もっぱら「横のプロセス」の方であった。例えば、アプリケーション連携やSOA、ワークフローなどだ。だが、現場で働く個々の担当者の作業手順、つまり「縦のプロセス」を明確に定義し、その実行を支援できるようなツールはこれまでほとんどなかった。この「縦と横の支援の格差」こそが「IT部門と現場の認識の乖離」を生む原因となり、ここに改善を阻む大きな落とし穴が潜んでいるのである。

 では、この「格差」を何とか解消できないか――まさにこの点に着目して開発されたのが、日立が提供するミドルウェア製品「uCosminexus Navigation Platform」(以下、Navigation Platform)だ。Navigation Platformは、現場の作業手順をフローチャートとして定義し、その実行を制御するとともに、作業フローの中に含まれる個々の作業内容をビジュアルなコンテンツとしてユーザーに提示する製品だ。これにより、「縦のプロセス」の確実・効率的な遂行を支援する。

 さらに、日立の開発部門では、このNavigation Platformを縦のプロセスに適用すると同時に、横のプロセスに対しても最適化を施すことで、「縦横両面からの業務の可視化と最適化」に取り組んでいるという。今回はこの事例を通じて、真の業務改善を狙える「縦横モデルによる業務とITの最適化アプローチ」を紹介したい。

8000ページに及ぶ開発手順書をNavigation Platformで整理

 日立の公共システム事業部は、官公庁や自治体、教育機関といった公共性・社会性の高い顧客にSIサービスを提供している。中でも同事業部の公共ソリューション本部 官公システム第八部は、社内外合わせて数百名規模のSEが参画する、大規模システムの開発を行っている。

日立製作所 公共システム事業部 課長
橋本直樹氏

 大規模なプロジェクトになると、開発作業そのものに掛かる工数もさることながら、作業手順を標準化し、それが順守されているかチェックするための管理作業もかなりの量に上る。

 公共システム事業部 課長の橋本直樹氏は、「特に作業手順を詳細に記した開発基準書の運用には、長く頭を悩ませていました」と話す。

 「開発基準書は全8000ページ、バインダ数にして実に7冊もの量に及びます。これを基に、ある特定の開発作業の手順を確認しようと思っても、該当する個所を8000ページの基準書の中から逐一探し当てなければなりません。これだけでもかなりの手間と時間が掛かっていました」(橋本氏)

 むろん、それで終わりではない。そこからさらに関連する別のドキュメントを参照しなければならないケースも多い上、実際に作業を行うためのツールやシステムの在りかも探さなければならなかった。

同プロジェクト インフラ担当 奥山邦明氏

 「特に問題視されたのは、長く現場にいる人間ならともかく、新たにプロジェクトに配属されるスタッフや、これまでやったことがない作業を手掛けるスタッフも少なくなかったことです。そうした場合、まずはどうしても最初に作業手順やそれに必要なツールを一から探さなければなりません。この点も作業効率を低下させる大きな要因となっていました。探す面倒を嫌って、ドキュメントを参照せずに、周りの人に口頭で聞いて済ませてしまうケースも見られました」(同プロジェクト インフラ担当 奥山邦明氏)

 むろん、これらの書類はただ紙に印刷して共有していたわけではない。基準書を電子ファイル化し、知りたい項目をたどって閲覧できるポータルサイトを構築し、プロジェクトチーム内で運用していたのだが、このポータルサイトにも限界があったのだという。

 「ポータルサイト上に、『基準書の一覧サイト』『開発ツールのサイト』などに飛ぶリンクを並べていたのですが、全部で37サイトへのリンクが羅列することになり、ぱっと見ただけではどこに何があるか分からないような状態でした」(同部 主任 檀浩一郎氏)

日立製作所 公共システム事業部 主任
檀浩一郎氏

 こうした問題の解決を狙い、同部が導入したのがNavigation Platformだった。導入作業に当たった同プロジェクト 開発担当 堀井靖久氏 は次のように振り返る。

 「基準書の運用改善を図るに当たり、まずは膨大な量の基準書の中から、必ず押さえなければいけないポイントだけを抜き出し、作業手順を要約して解説するコンテンツを作成しようと考えていました。そうした際にNavigation Platformを知り、『作業手順を可視化してその確実な遂行を支援する』という同製品の機能が、この目的にぴったりと適うと感じたのです。また、作業手順を示すコンテンツ画面から、その実行に必要なツールやシステムのサイトに直接飛べる点も、現場のユーザーにとって極めて有用だと考えました」(堀井氏)

作業の可視化により、必要な情報の参照作業を軽減

 同部は早速、2009年3月から7カ月間をかけてNavigation Platformの評価を実施。その結果、同部が求める要件に合致すると判断し、2009年11月から導入作業を開始した。

同プロジェクト 開発担当 堀井靖久氏

 画面の設計と開発は、もともと基準書の管理を行っていたスタッフが担当したが、わずか2週間ほどで28メニュー、142画面の開発を完了した。作業に当たった堀井氏は「Navigation Platformのメニューや画面は、専用のエディタを使って完全にノンプログラミングで開発できるため、実装は非常に効率良く進みました。エディタの操作の習得でつまずくことも特にありませんでした」と振り返る。

 Navigation Platformの画面は、各作業内容を表示する「メニュー領域」、各作業の手順全体を表示する「フロー領域」、操作や対応に迷わないよう、現在の作業内容や関連するリンクなどを表示する「ガイド領域」の3つのエリアに分けた。同部では、ユーザーがより使いやすいインタフェースの実現を目指して、各画面の設計にさまざまな工夫を凝らしたという。

図2  Navigation Platformの実際の画面(クリックで拡大

 「例えば、フロー領域に表示する業務フローチャートの先頭には、必ず『はじめに』というステップを設けて、作業全体の目的や概要、参照するドキュメントや利用するツールなどを明示しました。また、各作業手順を説明するガイド領域でも、詳しく書き過ぎると元の基準書と変わらなくなってしまうため、なるべく簡潔に記述し、理解のスピードアップと作業の効率化を図りました」(橋本氏)

Navigation Platformは導入直後から現場で広く活用されることになった。橋本氏は「新しい仕組みを現場に導入して、これだけ評判が良かったことはこれまでなかった」と振り返る

 こうした工夫も功を奏し、Navigation Platformは導入直後から現場で広く活用されることになった。2010年3月のテスト導入直後に行ったユーザーアンケートでは、約8割のユーザーから「必要な書類が見つけやすい」「ガイド領域が分かりやすい」といった好意的な反響を得た。橋本氏自身、「新しい仕組みを現場に導入して、これだけ評判が良かったことはこれまでなかった」と驚いたという。堀井氏も「手順を示すガイド領域の画面から、ツールのサイトに直接飛べる点は特に評価が高い」と、その実用性の高さを評価する。

 必要な基準書やツールの在りかを探す手順も軽減されている。例えば、ある特定の作業を取り出してNavigation Platformの導入前と導入後の基準書やツールの在りかを探す手順を比較してみたところ、約10分の1にまで時間短縮を確認できたという。さらに檀氏は、「基準書の管理スタッフや人に作業手順を聞く必要がなくなった他、新人を指導するための労力が明らかに軽減された点も大きな収穫です」とコメントする。

図3  Navigation Platformにより作業手順を明示するとともに、その実行に必要なツールも画面上から直接呼び出せるようにした。この結果、基準書やツールの在りかを探す手順を削減することができた

最終ゴールはSOA基盤でサービス連携したシステム構築

 同部では、こうした“現場作業の可視化・最適化”の成功を受けて、さらに広範囲にわたる業務最適化の取り組みも進めているという。橋本氏は次のように説明する。

 「要員管理システムや進捗管理システム、品質管理システムなど、従来はばらばらに運用していたプロジェクト管理系のシステムを、SOA基盤の上に載せて、『統合プロジェクト管理システム』として連携させる取り組みを進めているのです。これにより、各業務の担当者間の連絡作業など、大規模開発に付き物の膨大な付帯作業を極力減らし、開発作業に注力できる環境を整備することが狙いです」

 実は今回のNavigation Platform導入も、SOA基盤でサービス連携したシステムの一部として位置付けられている。具体的には、統合プロジェクト管理システムを載せたSOA基盤と、Navigation Platformを連携させる。これにより、冒頭で述べた業務の「縦横モデル」で言えば、統合プロジェクト管理システムが「横のプロセス」、Navigation Platformが「縦のプロセス」を支援するものになるわけだ。橋本氏は、最終的にはこの「縦と横」の標準化を交差させることで、「全開発業務の可視化と最適化を目指します」と語る。

図4 個別に運用していたプロジェクト管理系システムをSOAで連携させて「横のプロセス」を標準化。さらに「縦のプロセス」を標準化するNavigation Platformを連携させ、全開発業務の可視化と最適化を目指す

現場作業の標準化を積み重ねて、
組織全体の標準化までを視野に

 さて、以上のようにNavigation Platformは、「現場の作業フロー」である「縦のプロセス」の可視化・最適化を支援しながら、「横のプロセス」――IT部門や主管部門が管理する「業務全体のフロー」の最適化も可能にする。

 このことは極めて大きい意味を持つ。というのは、冒頭でも述べた通り、これまでのIT部門主導の効率化策は、得てして「横のプロセス」を重視しがちであり、「縦のプロセス」にはなかなか目が行き届かない状況があった。かといって、現場がみずから効率化しようと、独自の判断でツールやクラウドサービスなどを導入してしまうと、今度は組織内のITガバナンスやシステム最適化の戦略から乖離することになってしまう。

 その点、今回紹介した導入事例では、「現場レベルの業務標準化」から始めて「開発業務全体にわたるプロセス連携」――すなわち組織全体で共有可能な業務標準化へと段階的に発展させていくことを狙っていると考えられる。言わば、Navigation Platformをそうした取り組みの軸として使った戦略的なアプローチを採っているのである。また、クラウドによるサービス提供など、Navigation Platformの提供形態が増えることで、利用者側としてはより多くの選択肢を選べるようになり、標準化を実現するための活用が増えていくのではないだろうか。

 組織全体での業務/システム標準化というと、「IT部門が強力にガバナンスを効かせながら進めていくもの」というイメージが強いが、実際にシステムを使って業務を遂行するのは現場である以上、現場が効率化を実感できるものではなくては意味がない。その点Navigation Platformは、現場レベルの最適化・効率化を確実に実現しながら、組織全体の標準化を狙うことができる稀有なソリューションとなっている。そしてこの「現場の最適化を積み重ねて全社的な最適化を狙う」アプローチが、あらゆる業態の企業に適用できることは言うまでもない。まずは貴社の業務を「縦」と「横」のフローに整理してみてはいかがだろう。全体最適に向けた現実的な道筋が、おのずと見えてくるのではないだろうか。


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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画
制作:@IT情報マネジメント編集部
掲載内容有効期限:2012年11月2日