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アットマーク・アイティ
営業企画局 制作:アットマーク・アイティ 編集局 掲載内容有効期限:2004年8月24日 |
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7月2日、@IT情報マネジメント/ITアーキテクト共催セミナー「変化に強い情報システム基盤構築の最適解〜見えてきたSOA導入“成功の鍵”〜」が開催された。150名以上の参加者のあったセミナーの内容を、アイオナテクノロジーズの発表を中心にお伝えしよう。
ジェネラルセッションで講演を行った米アイオナテクノロジーズ テクニカルディレクターのピーター・カズン氏は、企業にとってのSOAの意義をこう述べた。 今日、市場や経営環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できるエンタープライズ・システムが求められている。もちろん、そのための基盤整備やシステム変更に費やされるコストを低く押さえることも極めて重要なテーマだ。SOAこそ、これらの課題を解決する考え方だというわけだ。
企業内にさまざまなプラットフォーム上に構築されたシステムが存在するという状況において、既存システムを統合する手法としてEAIなどのハブ&スポーク型が一般的に用いられている。しかし、それらはいわば積み重ねの結果としてできたものにしか過ぎないとカズン氏は指摘する。確かにEAIサーバを導入することで連携は実現できるものの、運用の過程でトラフィックの増加に伴うサーバの増設は新たなコスト負担が企業に求められる。また、アダプタのカスタマイズは多額のコストと時間を伴うことになり、企業にとってはシステムの改革による他者との差別化が困難となる。さらに、保守運用部門では、既存のシステム処理内容や運用の要件をEAIスペシャリストが理解して運用設計するため、EAIがない場合に比べて重複するコストが発生するという。
「SOIではWSDLにより、システムが提供するサービスのインターフェイスを物理的、あるいは論理的に規定し、さらに規定を拡張することで、多様なミドルウェアを柔軟かつシンプルに結び付けられるようになります」 EAIではハブがメッセージのやりとりを仲介するのに対し、エンドポイント・インテグレーション方式のSOIではWSDLが規定したメッセージ形式が各システムで参照され的確に解釈される。そのため、中間的なメッセージへの変換のプロセスが省略され、エンド同士でメッセージ変換を直接行うことになり、メッセージ転送のパフォーマンスの向上が期待できる。また、企業にとって情報セキュリティ対策は必須のものとなっているが、ハブ&スポーク型では中間サーバでのメッセージ変換にあたってセキュリティのエンベローブを開けざるを得ない。その結果、セキュリティレベルの低下を招いてしまうが、SOIではそのような事態も回避できる。 さらに注目すべきなのは各種のコスト削減効果だ。カズン氏によると、SOAを採用したある企業は2年後には73%、3年後には85%のシステム開発・統合コストを削減できている。3年後、10万のユーザーがシステムを利用しており、サービス数は300に達していたという。コスト削減が見込める領域は多種多様だ。メッセージの定義情報の共有により、EAIで必要とされたシステムの個別開発が削減されるほか、トラフィック増加に伴うハブの増設も不要となる。接続先のバージョンの違いによるメッセージ転送の複雑化を避け、変更管理の手間の削減や問題解決が容易になることも期待できる。 「つまり、SOIはEAIよりはるかに効果的な統合モデルといえるわけです」(カズン氏)。
現在、SOAに関心を寄せる一方、他社の動向を睨みつつ果たしてSOAを採用すべきかどうかに悩んでいる──というのがカズン氏のユーザー企業に対する見方だ。SOAというキーワードは十分知られていないこともあり、その有効性が不明確だと見られているという。これに対し、カズン氏は同社が手掛けた事例の説明を交えつつSOAの有効性を説明。その一つが金融サービス大手A社の事例だ。 A社は顧客からの要望を受け、Webサービスを用いバックエンドのシステムに顧客がアクセスできる環境の整備を進めていた。一方、同社の社内では買収先の企業が所有していた異なるミドルウェアのシステムとの統合ニーズも高まっていた。このような要件に対しアイオナは、SOAによりWebサービスと既存のミドルウェアで構築した買収先のシステムとの連携インターフェイスをSOAに従って設けることを提案。これをサービスとして公開することで既存のアプリケーションに変更を加えることなく、バックエンドのシステムとの統合を果たしたという。また、カズン氏はSOAを適用しシステムを刷新することで、既存アプリケーションのカスタマイズが容易になった事例なども紹介し、SOAはすでに一般的に用いられ始めている点を改めて強調した。
江川氏がSOAの利点としてまず指摘したのは、ビジネス・プロセスがアプリケーション内に組み込まれていない点だ。企業内の各種アプリケーションは、その多くが業務フローを基に設計されているが、この手法では業務改善に向け業務フローの一部を見直す場合でも、アプリケーション側の大幅な変更を招く事態も少なからずあるという。 これに対し、SOAでは個々の機能は独立したサービスであり、規定に沿って自律的に機能する。業務フローの変更でも部分的な対応だけで済むようになるわけだ。 また、サービスは共用可能であるため重複した機能が整備されて運用コストが削減され、サービスとインターフェイスを定義しておくことでシステム構成に依存しないプラットフォームの構築が見込める。さらに、レガシーシステムのアプリケーションのサービス化を通じ、マルチプロトコルの対応やセキュリティの確保、信頼性の向上も期待でき、新たな拡張も可能になる。
アイオナがSOAの実現に向けて提供する製品が、「Artix」と「Artix Mainframe」だ。前者は既存システムや既存ミドルウェア上のアプリケーションを、サービスコントラクトとしてのWSDLで定義することによって“サービス”として迅速に開発・実装し、ミドルウェア上のアプリケーション間のシームレスな連携を図る製品。後者はメインフレーム上のアプリケーションを一切変更することなく、WebサービスやCORBAのインターフェイスを利用してサービスとして公開することで新たに開発するオープン系システムなどとの連携を図る製品である。 プロトコルは、CORBAやWebサービス(SOAP)だけではなく、TuxedoやMQシリーズなどにも対応し、異なる“島”に別れていたシステム同士をつなぎ合わせる。中間的なサーバを必要としないArtixはフットプリントが小さくライトウェイトで独立したルータとして動作可能だが、原則として既存システムと同じハードウェア上にインストールされ、高性能なエンドポイント・インテグレーションを実現する。 WSDLはこれを拡張したESDL(Enterprise Service Definition Language)として装備され、フォルトトレランス、ロードバランス、ルーティングなどのエンタープライズQoSによるメッセージの制御を定義する。Artix DesignerというGUIツールによりこれらのすべての制御情報のカスタマイズを行いWSDLファイルやスタブ/スケルトンのコード生成、デプロイ設定を行う。
江川氏はArtixの強みを次のように述べる。 「10年間の経験で培った枯れた技術基盤を基に、Artixにはセッション管理やロードバランスなどの機能も実装させています。これにより、Webサービスの新たな技術的アイデアとWebサービスの標準では対応が果たせていない、エンタープライズQoSを合わせてサポートできるわけです」 アイオナは個々の企業の要件に沿った連携ソリューションを提供するためSOA/SOIの研究を進めており、各種情報の発信に加えて技術者向けのトレーニングなどの啓蒙活動にも積極的だ。その過程で蓄積される知識、ノウハウは今後のArtixの機能向上に活かされることになる。 各社が提供するSOAソリューションの中で、Artixはユニークな存在だ。“分散コンピューティング”を真骨頂とするアイオナのSOAがどのようなものなのか。一度、じっくり吟味してほしい。 |
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