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企画:アットマーク・アイティ 営業企画局
制作:アットマーク・アイティ 編集局
掲載内容有効期限:2003月8月11日

 



いま見えてきた「基幹システム・オープン化」への道
【第1回】

オープン化時代の基幹システムの現状と課題

 「オープンシステム」という言葉が登場して久しい。1990年代前半にクライアント/サーバ(C/S)型システムが登場し、「ダウンサイジング」とともに一斉を風靡したこのキーワードはその当時、情報系システムで実現、実践されていた。その後のJavaテクノロジの進化、J2EEアプリケーションサーバの登場、ERPパッケージの普及などさまざまなITトレンドのうねりの中で、「オープン化」の波はいよいよ基幹系システムにも到達してきた。しかし、実際の開発現場では、オープン化に際して種々の課題に突き当たっている。

 果たして基幹システムのオープン化の潮流は、いまどのような方向に向かっているのだろうか。そして、IT業界はその要求にどのように応えようとしているのか。今回は基幹システムのオープン化の現状と課題について、株式会社アイ・ティ・アール(以下アイ・ティ・アール)の内山悟志氏と株式会社電通国際情報サービス(以下ISID)の芝田氏に話をうかがった。

  基幹系にも求められる“アダプティブなシステム”

アイ・ティ・アール 代表取締役/米MetaGroup アナリスト 内山悟志氏
 経営課題の面を重視して多くの企業にITコンサルティングを提供するアイ・ティ・アール代表取締役の内山悟志氏は、次のように語る。

「システムのオープン化は当初、基幹業務以外の“情報系”と呼ばれる間接業務システムから徐々に始まりました。その後ERPパッケージが注目を浴び、基幹系にもオープン化の波が訪れました。それがここ4〜5年の状況です。

 それでも国内の企業システムの動向を見ると、まだ汎用機が占める割合が高い。例えば米国や韓国では金融機関の勘定系システムもオープン環境で構築されていますが、国内金融機関はまだ従来のメインフレームが主流です。ただ、米国の調査会社MetaGroupでは『エンタープライズサーバの中で汎用機が占める比率は、2012年までに3%程度になる』という結果を報告しています。なぜかと言えば、ビジネス環境の変化に対応するため、業務を支援するシステムにも柔軟性が求められるからです。つまり適応力の高い“アダプティブ(Adaptive)”なシステムが求められるようになったというわけです。古い汎用機システムは、こうした拡張性が弱いのに加え、そもそも技術者自体も激減しており、システムの変更・改変などに簡単に対応できない状況です。

 また、企業トップにしても、昔のように出来上がった報告書を読むのではなく、リアルタイムに経営状態を把握しなくてはなりません。そのため、経営戦略システムを構築することも多くなりました。社内のあちこちに散らばるデータを収集し、1つのシステムで統合するには、オープン環境でなくてはならないのです。こうした状況により、ユーザー企業は『自社システムをオープン化せざるを得ない』、IT業界にとってみれば『オープン化への要望に応えなくてはいけない』というわけなのです」

  オープン化は時代の流れ

電通国際情報サービス 産業ソリューション事業部 統括マネージャ 芝田潤氏
 オープン化が叫ばれている背景は、もう1つ技術革新という面からも説明できる。電通国際情報サービス 産業ソリューション事業部の芝田潤統括マネージャーは語る。

「1990年代半ばにC/Sのブームが訪れ、クライアントOSがWindows 3.1からWindows 95へと、完全にGUIベースに切り替わりました。またサン・マイクロシステムズやヒューレット・パッカード、IBMなどが提供するUNIXサーバが台頭し、データベースの世界でもオラクルのRDBMSが主流になっていきました。ITはより身近で使いやすいものとなり、日常業務の中に浸透していったわけです。

 さらに1990年代の後半になると、J2EEアプリケーションサーバによる3階層システムが登場しました。運用負荷が軽減され、TCOが削減できるということから、Webシステムの導入が進みました。折からのeビジネスブームもこの風潮を後押ししたのでしょう。こうしてビジネスとITの融合が進んだことで、『効率的かつ正確に業務を遂行すること』や、『ITを使った画期的なビジネスプロセスを迅速に構築したい』というニーズが生まれたのです」

 こうしたことから、現在新規のシステム開発はすべて「オープン環境で」ということが前提になっている。芝田氏によると「現在、大型汎用機に関する案件は、既存ユーザーからの保守・運用のみ。新規で汎用機を導入する案件はほとんどありません」という。

 そして徐々に、“最後の砦”といわれている基幹システムや銀行の環状系システムにも、徐々にオープン化の波が押し寄せているのである。

  既存システムをオープンシステム化する際の課題

 そもそも、メインフレームで稼働している基幹システムをオープン環境へ移行するのは大変な労力を要する。

 実際にシステム開発に携わるISIDの芝田氏によると、「昔のCOBOLプログラムのうち、オープン環境下で再利用できる部分は本当にわずか」。特に帳票出力のプログラムなど、特定のプリンタやハードウェアに最適化してあるコードの場合、そのまま移行するのはまず不可能だという。プログラム変換ツールと手作業を使い分けながら、少しずつ組み立て直すしかないのが現状だ。芝田氏はこう語る。

「大量データをバッチ処理するには、正直に言って旧来のメインフレームの方が安定性が高いのも事実。そのため大規模トランザクションが発生する金融機関の勘定系システムは、いまだに汎用機を使っているケースが多いのですが、最近になって『オープン系へ移行したい』というお客様も増え始めました。私が手掛けたプロジェクトでは、3年かけて少しずつオープン環境へ入れ替えたという事例もあります」

 ちなみにこの案件の山場は、やはり出力系プログラムの移行だったという。膨大な顧客データや、日々発生するトランザクションデータをオープン系サーバで処理し、その結果を帳票出力しなくてはならない。その出力部分は、先述した通りメインフレーム専用プリンタに最適化されたプログラムになっている。また基幹データを読み込む際に使う外字コードの問題もあった。結局、コード変換ツールを使いながら、要所要所は技術者が目でチェックすることで、プログラムを開発していったという。

  情報システムアークテクチャ設計の基本となる考える方

 レガシーシステムの移行、置き換え時の問題に加えて、オープン化ならではの問題もある。アイ・ティ・アールの内山氏は次のように指摘する。

「システムの構造やアーキテクチャ、製品が多岐にわたるため、『この組み合わせがベスト』というTo Beモデルを提示できなくなりました。メインフレームの時代であればメーカーがそれぞれのアーキテクチャを持っていました。しかし、現在はユーザー企業に対して情報システムの中長期のあり方=アーキテクチャを提案する存在がいなくなってしまいました」

 この課題に対する対策はどのようなものがあるのか。内山氏は2つの考え方を提示してくれた。

 1つは「パターンマッチング」。これはユーザーニーズとシステムの技術的な特徴を整理し、これらを付き合わせて構築すべきシステムの大まかなデザインを描く方法だ。まずユーザーからのシステム案件のうち、いくつかの特徴あるニーズを整理しておく。例えば、「24時間365日のフル稼働」「大規模トランザクションが発生する」といった項目だ。次に、「C/S型システムの特徴」や「Web3階層システムの強み・弱点」などの技術的な特徴をそれぞれパターン化する。案件ごとに出てくる各パターンを付き合わせ、検証することで、最適なアーキテクチャを手早く設計できるという。

 そしてもう1つは、「サービス指向アーキテクチャ(SOA)」の考え方だ。企業システムに共通する必須機能を括りだし、「サービス基盤」の中に組み入れることで、開発生産性や保守性を向上させるというものだ。

 例えばユーザー認証やネットワークへのアクセス権管理、セキュリティ、それにデータ出力などの機能は、どの業務システムでも必要とする機能だ。こうした機能を1つだけ用意し、個々の業務アプリケーションからは必要に応じてコールする仕組みを構築すれば、新規アプリケーションを追加する際にも、ビジネスロジック部分の開発だけに注力すればよい。結果として、順応性の高い“アダプティブなシステムアーキテクチャ”が実現するわけだ。

  検証済みのアーキテクチャを有効活用する

 同時に内山氏は、「ユーザー企業自身が技術的なアーキテクチャを作り上げていくことはもうない」と断言する。

「私が期待するのは、トップを走るようなSIベンダがそうしたアーキテクチャを持つことです。彼らが何らかのフィロソフィーを持っていないと、何の脈絡もなく、システムが入っていってしまうことになります」

 また、アダプティブなシステムでは外枠にあたるアーキテクチャのほかに、その中味である個別のアプリケーションやコンポーネントも重要になる。

 内山氏も「翼システムの製品などは、アダプティブなシステムを構築するための主要コンポーネントと言えるでしょう」と述べるが、ITツールベンダが提供する各種ソフトウェアは、システムの接続・連携を前提にした形で進化を続けている。そこで開発現場では、いかに適切なアプリケーションやコンポーネントを選定するか、そしてその連携や動作の実証が大きなポイントとなってくる。

「コンサルタントやSIerは中立的な立場から各テクノロジの実際を検証し、ユーザー企業の個別のニーズに沿って、最適な回答を示すことが求められます。本来はそうあるべきなのですが、目の前の案件を処理するのに精一杯で、とても将来にわたるアダプティブなシステムを提案できる状態にありません」

 このように内山氏の意見は厳しいが、一部ベンダやSIerがオープン化支援サービスを徐々に始めている。次回からは、そうしたIT業界の動きをリポートしていこう。

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company profile
株式会社アイ・ティ・アール
IT分野に特化したリサーチ/コンサルティング企業として、中立的な立場から企業のIT戦略策定支援を中心とした幅広いサービスを展開している。製品選定支援、IT関連ベンチマーク、事業戦略の策定とマーケティング改革、および個別の多様なニーズに応えるコンサルティング・サービスで多数の実績を持ち、さらにITエグゼクティブ向けセミナーの開催や特別レポートの発行など、IT業界をリードするグローバルな情報を発信している。1994年に前身となる情報技術研究所を設立し、1997年12月現在の社名に変更。 1998年より米国META Groupの日本における総販売代理店およびリサーチ拠点としての機能も担っている。
http://www.itr.co.jp/

株式会社電通国際情報サービス
(略称:ISID)
1975年の設立当初から顧客企業のビジネスパートナーとして、 コンサルティングからシステムの企画・設計・開発・運用・ メンテナンスまで一貫したSIによるトータルソリューションを 提供してきた。近年は、IT Solution Innovatorを目指す姿と して掲げ、インターネット関連技術を核に、EC/SCM/ERP/CRM/PDM((製品情報管理)/Webバンキングなど、多方面にわたって積極的な事業展開を図っている。
http://www.isid.co.jp/

 

 

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